10月2日のストレスを解消。
人間一度はたらふくご飯を思うがままに食べてみたいと思ったことはないだろうか。
僕もそう思う一人だった。
しかし、まさかこんなことで、その夢が叶うとは思ってもみなかった。
宇宙人というのは僕は信じたことがない。そしてこれからも信じることはない。そう思っていた。つい昨日までは。しかし、昨日の夜、寝て、ねむねむして朝起きたら、僕は小人になっていた。
そして、思い出したのは、朝起きた直後、とても怖い夢を見ていたということだった。そうそれは宇宙人の夢だったのだ。
そして、その夢の中で僕は宇宙人に改造されて小人になったのだ。そして、目が覚めたら実際に小人になっていた。
「ああ、どうしてこんなことに」
まさか本当に宇宙人に連れて行かれて小人にさせられたのだろうか。あるいはここはどこかの巨人の星名のだろうか。巨人の星ゆえに、僕は小人に見えるだけで、実際は昨日までと同じ身長なのだろうか。しかし、僕はただ身長が縮んだだけでは、どうやらなかったようだ。特殊能力も身についていたのだ。
念力が使えるようになっていた。
そして宙に浮かぶことが出来るようになっていた。
今の所分かっている限りではこのぐらいだった。
しかし、もしその力がなかったとしたら、僕はこの部屋で餓死していたかもしれない。
なぜならば、扉を開けることも敵わないからだ。それはつまり、密室と言っても過言ではないからだ。
今の僕の大きさはこのベッドから見える普段使っていたコップの大きさから推測するに、蟻と同じぐらいの大きさだと思う。
だからこそ、ベッドから降りるのも命がけだ。もし、足を滑らせようものなら、ベッドから床に落ちて、叩きつけられて死んでしまうだろう。これはまるで完全なベッドという孤島だった。しかし、念力が使え、宙に浮かぶことだ出来ることによって、僕は何とかベッドから降りることが出来た。蟻ならば、壁を伝って、降りることは容易だろうが、人間のまま小さくなった俺はそうではなかった。そして同じく、この部屋から抜け出すのも蟻ならば、僅かな隙間から、容易だと思うが、俺は違う。壁など伝えないし、ロッククライミング、とかも経験がないし、ロープもないし、サバイバル経験もない。そこでも宙に浮かぶというのが実に役に立つだろう。この念力と、浮遊能力を使って、僕は自分の部屋の中から抜け出すことに成功した。
そして、嬉しいことにこの念力は使っても、ゲームで言うMP消費というのはないらしく、無限に使えるようだった。外に出るかどうかは迷う。なぜならば、外は大きな生き物が多数潜んでいるからだ。虫でさえ、今の俺には脅威だ。いや、むしろ虫の方が脅威と言ってもいい。同じ目線で生きている分、見つかる可能性も高くなるからだ。さあ、どうしよう。このまましばらくは自分の家でなりを潜めていようか。食料は、まだ冷蔵庫に一か月分はあったはずだ。しかも小さくなる前での話だから、今の俺の大きさからすれば、何十年分に匹敵するかもしれない。とは言え、賞味期限、消費期限がある。いくら量はあっても腐っていては意味がない。しかし、この見慣れた家が小さくなることによって、こうも別世界に感じられるとは思ってもみなかった。自分の普段歩いている道から、一歩外れるだけで、全然知らない世界の様に感じられるように、同じ家に住んでいても、こうも大きさによる視界によって違うのかと思い知らされた。だけど、念力と、浮遊能力があるから、移動は苦ではない。むしろ移動が楽だし、虫からも守りやすいかもしれない。例えば階段の途中なんかに入れば、蟻とかヘビとか飛行生物を除けば、上るのは難しいかもしれない。例えばムカデとか、ヤスデとか。いや、待て俺は虫についてよく知っているわけではないので、どうなのだろうか。もしかしたらムカデとかは階段を上るのも出来るのではないだろうか。そう考えだすと、やっぱり眠れそうもなくなってきた。じゃあ、どこに生活の拠点を構えようか。ご飯を食べるテーブルとかはどうだろうか。そうだ、それがいい。そしてテーブルの上に貯金箱を置いてその、貯金箱の中で暮らせばかなり虫に襲撃されるリスクは減るだろう。ただ、地震が来た時に貯金箱が倒れたら、更にテーブルの上から落ちたりしたら、字エンドかもしれない。私の体の強度については小人になってから、変わっているのか、変わっていないのかまだ検証していないので、変わっていなかったとしたら、地震が来たら、もう終わりの可能性もある。ここまで来たからには、体も丈夫になって欲しいという気持ちもある。スーパーマンのように、むちゃくちゃ強くなっていたら、嬉しい気もする。別に僕はヒーローに憧れているわけではないから、もしすごい力を手に入れたとしても、それを世の為に使うつもりは今のところないけれど、それだけの力があるならば、そしてこの大きさならば、飢えに苦しむこともなく、世界中を旅することだって可能だ。一度世界旅行してみたかったんだよね。それに世界は危険な国がたくさんあるから、今までだったら行けなかったけど、この大きさ能力があれば、世界中を是非旅してみたいと思う。道を一本逸れただけで、新鮮な景色が広がる。人間と言うのはいかに狭い世界の中で暮らしているのかと実感する。だって、東京に住んでいる人だって、学校、会社の往復で、休日にどこか出かける程度の人が多いだろう。つまりそれはどこに住んでいたって、遊ぶ所が、行く場所が、たくさんある都会に住む人だって、行動範囲というのは狭いと思うんだ。出張とかない限り、毎週福岡とか北海道とかいろんな県の色んな名所に行く人なんてそうはいないだろう。せいぜい外食とか近所のイベント程度で、あとはアニメ観たり、ライブ行ったり、映画見たり、ゆっくりしたり、まあ、人間なんてのはどこに住んでいても、だいたい自分の手の届く範囲ぐらいで行動しているんじゃないか、って僕は思っている。そして今までの僕はそうだった。だからこの体になったことで、特殊能力を身につけたことで世界中を旅してみたい。そう思った。もちろん、肉体が強化されていることが前提だが。だって強化されていないならば、誰かが無意識の内に蹴った石ころに当たっただけでお陀仏だし、雨に当たっても、致命傷になりかねないし、雪だって、ヒョウ何かに当たったら、隕石に当たったのと同じ感じだと思う。体重だって軽いから、ちょっとした風でぴゅう、ぴゅるりと飛ばされてしまうと思うし。まあ、それはそれで一度はアニメ的でやってみたい気もするけれど、まあそれは体の耐久性が分かってからだ。ということで、僕はまず、自分の体が強化されているかどうかを確かめることにした。
具体的には少し高い所から、ジャンプして降りてみることから始めることにした。