9月22日のストレスを解消。
皆さんは、子供の頃こんなことをしたことがないだろうか。
葉っぱを船に見立てて、川に流すという遊びを。
葉っぱは川の途中で石に当たって止まったり、また浅い場所で座礁して止まったり、子供の時は一喜一憂したと思う。
ふと、僕はそんな子供の頃を思い出してしまったのだ。
ああ、懐かしいなあ。
今は過ぎ去りし子供時代、もう二度と戻ってこない子供時代。
でも、青春は一生青春ともいう。だから僕はもう一度子供の頃を思い出すべく、プライドを捨てて、それに挑戦したいと思った。
いや、それは別に恥ずかしいことではないと思う。しかし、大人というスーツに身を包んだ僕は子供の頃のように純粋に楽しむことが出来ないのではないだろうかとも思っていた。それは周りの目もあるし、自分の築き上げてきた、地位もある。そして、知識がなまじある分、やはり石頭になっているのではないかという危惧もあった。
だけど、挑戦したいと思った。子供の頃の新鮮な記憶をもう一度味わってみたいと思った。
年を取ると、時間が早く感じると言うが、もう一度、子供時代のあの時間を忘れて夢中になれる感じを取り戻したかった。
だから、僕は裸になった。
もちろん全裸だ。
誰かに見つかったら即アウトだ。でも、ここは人気のない森の脇を流れる川。大丈夫だと思いたい。
お天と様の下で人間のありのままの姿をさらすことによって、僕は自然と一体化して神を感じることが出来た。
「神様、見ているかい?」
次第に僕の心が、少年の時のような何ものにも囚われない自由な感覚を取り戻しつつあるのを感じた。
僕は森にある何の種類か分からない木の緑色の新鮮な大きな葉っぱをいくつかちぎった。
葉っぱの匂いを嗅ぐ。当たり前だが、葉っぱの匂いがした。
「これら一枚一枚の葉っぱが集まって森の匂いを作っているんだなあ」
そう思うと、僕はとても不思議、それでいてどこか神秘的な感じがした。
その葉っぱの形を整えた僕は、それを船に見立てて、川へと浮かべた。
まだその場所は、川の流れがない場所で、葉っぱが移動することはなかった。
どうせなら、子供の頃よりももっと面白いことがしたい。
そう思った僕は、葉っぱに何か乗せようと思った。
そうだ。蟻を乗せよう。あるいはてんとう虫とかもいいかもしれない。
とりあえず、葉っぱに乗る虫を探すことにした。
しかし、大人になった僕は子供の頃とは違い、子供になり切っているつもりでも、自制心が働き、どうしても可哀そうという気持ちが心の中に湧き上がってきた。しかし、それは子供の頃の気持ちに戻っても、忘れたくない気持でもあったので、僕は他のものを船に乗せることにした。
考えた末に僕は自分の分身を船に乗せることにした。
とは言っても、まあゴミだ。
そう、それはつまりの所、鼻糞というわけだ。
鼻くそだって、自分の分身といってもいいと思う。
鼻くそと唾と、色んな体から出るそういったものを乗せ、船を動かすことにした。
まあ、それが今の僕に出来る最大限の試みだった。
そして、鼻糞とかを乗せた船を、落ちていた長い枝で軽くつつくと、船は川の流れのある場所へと移動し、やがてゆっくりと動き始めた。
「出発! 進行!」
僕は指で合図をした。
船は時折、止まりながらも、少しずつではあるが前進していった。
しかし、船が川の段差のある所に差し掛かった時。
「ああっ!」
船は段差により、川の水に飲み込まれてしまった。
「ああ! 僕の船が!!」
僕は急いで、川の中に入ると、沈んだ船を探した。
「どこだ、どこだ、どこだ、どこだ」
探すこと数分。
「あった!」
しかし、船を引き揚げてみると、僕は呆然とした。
「そ、そんな。鼻糞がない……」
僕の分身が……。
そう、船が沈んだ時の弾みに、船に乗っけていた鼻糞がどこかへと行ってしまったのだ。
僕は必死に川の中を探って、自分の鼻糞を探した。
「僕の鼻糞、僕の分身、どこだ。どこにいる?」
しかし、探せど探せど、鼻糞は見つからなかった。
当たり前と言えば、当たり前かもしれない。しかし、僕はそれでも万が一にかけて必死に鼻糞を探した。
やがて、夜の帳が包み込んだ。
いつの間にか、僕は泣いていた。
何で、こんな川の中で、僕は夜、全裸で鼻糞を探しているのだろうか。
ふと、我に返った僕は急に怖くなった。
何が怖いって、それはもちろん全裸でもなく、夜でもなく、こんなことをしている自分自身に対してだった。
僕はどうやら童心への帰り方を間違っていたようだった。
僕は警察に職質される前に、服を着て、さっさと家に帰り、風呂に入って、明日の仕事に備えるべくとっとと寝た。