第1話 vsリリス④ 闘い終えて
手応えはあった。
「やった・・・」
ユーリアは辛うじて収めた勝利に放心状態だった。
だが、ここで重要なことに気付いて後ろを振り返る。
「コータロー!」
リリスの誘惑が解けたコータローは意識を失いかけて倒れようとしている。
「危ない!」
ユーリアは素早いスライディングで下に潜り込む事で、コータローが床に強く打ち付けられるのを阻止した。
「よかった」
そして、そっと仰向けに寝かせてから脈を確認し、無事であることを確認した。
できれば意識が戻るところまで確認したいところだが、
この姿を見られたくないため、館を後にすることにした。
公園に戻り、神様と再開した。
「おかえりー」
相変わらずの調子で神様は出迎えた。
「ねえ、コータローは大丈夫だよね?」
とユーリアは不安そうに尋ねた。
「はい。大丈夫ですよ」
「よかった」
とユーリアは胸をなでおろした。
「今日はお疲れ様でした」
と神様がねぎらうと辺りは光につつまれた。
これでこの恥ずかしい格好ともおさらばだと安堵したその時、
「そうそう、今日力を貸したお礼はまた悪魔退治をしてくれればいいですから」
と神様が放った一言に
「え?」
とチヒロは自分の耳を疑った。
「ちょっと待って」
とチヒロは呼び止めて拒否しようとしたが、光の収束とともに神様は目の前からいなくなっていた。
「冗談だろ」
チヒロはつぶやかずにはいられなかった。
月曜日。コータローは無事に登校した。
そして放課後、コータローがチヒロに奢る形でファーストフード店に行くことになった。
着いて最初は普通に世間話をしていたが、突如コータローが話し方のトーンを変える。
「あのな、これはお前にだけ話すんだけどな」
コータローが少し身を乗り出して小声で話した。
話の内容は失踪した時のことで、チヒロもその内容は知っているが、真剣に話を聞いた。
「でさー、助けに来てくれたんだよ。しかもメイド姿のかわいい女の子が。その娘が実は・・・」
その女の子が実は男であること、さらには自分であることに気付かれていないかという心配にチヒロは一気に緊張した。
「メチャクチャ俺のタイプでさー。もう1回会えないかなー。そうしたらデートに誘うのに」
チヒロの心配はどうやら杞憂に終わった。コータローがバカで助かったと思った。
「あはは・・・」
だが、親友が自分の女装姿に入れ込んでいる姿を目の当たりにして、
複雑な思いで苦笑いを浮かべていたのだった。