第27話:沖縄県脅迫状殺人事件(後編)
沖縄県警那覇署鑑識課。
鑑識課員が「どんなご用で?」と訊ねる。
「小島 哲朗が死亡時に持っていた遺品を見せて下さい」
「ちょっと待ってて下さい」
鑑識課員が小島の遺品を用意する。その中に日記帳の鍵があった。
「これ直に触って大丈夫?」
「構いませんよ」
俺は鍵を取ると、日記帳のロックを開けた。
最初のページに五年前の日付で日記が書かれている。
日記によれば、五年前のその日、小島は轢き逃げをしたということだった。そして被害者の名は、岩上 秀明だ。
秀明は剛の弟だとも書かれていた。
「まさか岩上が犯人なの?」
「でも岩上にはアリバイが」
「生前の岩上 秀明を洗おう」
俺は携帯を出し、下山警部に岩上 秀明のことを報告した。
「そうですか。ありがとうございます」
電話が切れる。
俺は携帯をしまった。
下山警部に呼び出された俺たちは山の里にやってきた。
「下山さん、話って何ですか?」
「秀明を洗ったら、生前に磯山と交際していたことが分かりました」
なるほど、そういうことか。
「下山さん、たった今、犯人が判りました。容疑者三人を被害者宅に集めて下さい」
俺はそう言うと、洋子と聡美を連れて小島宅へ移動した。
それから暫くして、下山警部が容疑者たちを連れて来た、
「黒沢さん、言われた通り集めましたよ。しかし、本当に判ったんですか?」
「はい。では事件の全容を説明しましょう。事件は小島 哲朗氏の下へ届いた一通の脅迫状から始まります」
俺は脅迫状を取り出した。
「脅迫状にはこう書かれています。五年前の事を言い触らされたくなければ一億円払え。さもなくば、お前の尊い命が消えるだろう」
脅迫状をしまう。
「そして、一億円を払わなかった小島氏は、脅迫状の差出人に殺害されました」
「それで、犯人は誰なんですか?」
と、磯山。
「それは……貴方です、磯山さん」
驚き戸惑う容疑者三人。
「それから、この事件にはもう一人、共犯者が居ます。それは、岩上さん、貴方です」
「な、何を言ってるんですか!?」
「岩上さん、貴方は五年前に弟さんを交通事故で亡くされています。それが今回の事件の引き金です」
「なるほど。しかし、どうやって小島が岩上 秀明を死なせたことを知ったんですか?」
俺は日記帳を取り出した。
「それは?」
「殺された小島氏の日記です。五年前に岩上 秀明を死なせたことが書かれています。磯山さん、貴方はこれを読んだのでしょう?」
磯山と岩上はその場に崩れた。
「岩上さん、青酸カリを用意したのは貴方ですね?」
「はい、その通りです……」
「磯山 優子を殺人容疑、岩上 剛を殺人幇助で逮捕します」
下山警部が二人に手錠をかけて署に連行していった。
こうして事件を解決した俺たちは、東京へ帰るため空港に向かうのだった。