第25話:沖縄県脅迫状殺人事件(前編)
沖縄県那覇空港。
飛行機から降りた俺と聡美。
空港を離れ、小島家へ向かった。
ピンポン──と、インターホンを鳴らす。
ドアが開き、男性が出て来る。
「どちら様ですか?」
「探偵の黒沢です。脅迫状の件でお伺いしました」
「お上がり下さい」
俺と聡美はリビングへ案内された。
ソファに腰掛ける俺と聡美。
「これが問題の脅迫状です」
小島 哲朗が封筒を机に置いた。中には脅迫文が書かれた紙が入っている。
俺は封筒の中の脅迫文を読んだ。
五年前の事を言い触らされたくなければ一億円払え。さもなくば、お前の尊い命が消えるだろう。
「五年前に何かあったんでしょうか?」
「いいえ、特には……」
「これ、お預かりしても?」
「どうぞ」
俺は脅迫状を懐にしまった。
「では、失礼します」
俺と聡美は小島の家を出た。
「所長、次はどこ行くんですか?」
「那覇署に行ってみよう」
俺たちは那覇署へ行き、刑事課を訪ねた。
「ご用件は?」
刑事が訊ねてきた。
「あ……あの、これについて調査してるんですが……」
俺は例の脅迫状を取り出した。
刑事が脅迫状を読む。
「ああ、これは小島さんのところに来たやつね」
「犯人は見つからなかったとか」
「そうなんだよね」
「指紋から前科者リストとの照合は?」
「それがノーヒットなんだよ。ところで、あんた誰?」
「あ、申し遅れました。こういう者です」
懐から名刺を出す。
「黒沢 聡……探偵ねえ……」
刑事は俺の名刺をしまう。
「黒沢さん、あんたも手詰まりかい?」
「いや、調査を始めたばかりなので何とも。ところで、小島さんに前科は?」
「そう思って前科者リスト見たけど、載ってないよ」
と言うことは、発覚していない事件ということか? しかし、小島さんは知らないと言ってたしな。
「倉田さん、小島さん家戻ってみようか」
俺と聡美は小島の家に舞い戻った。
ピンポン──インターホンを鳴らす。しかし、小島は出て来ない。
「小島さん、いらっしゃらないんですか!?」
返事がない。
俺はドアを開けた。
「所長、まずいですよ!」
「まあいいじゃない。小島さん、入りますよ!」
玄関で靴を脱ぎ、リビングへ行くと、小島が苦しそうな表情で倒れていた。
「小島さん?」
俺は小島に近付いた。
「小島さん、大丈夫ですか?」
俺は小島を揺さぶる。しかし、反応はない。
死んでるのか?
俺は小島の口元に鼻を近付けた。
アーモンド臭?
脈を確かめる。なかった。
「倉田さん、百十番」
「はい!」
聡美が携帯を取り出して警察に通報した。
やがて警察が到着し、現場検証が始まった。
「第一発見者はあなた方ですか?」
と、捜査一課の刑事が訊ねてくる。
「はい、そうです」
「お名前教えて下さい」
「黒沢 聡です」
「倉田 聡美です」
「ご職業は?」
「僕たちは探偵です」
「探偵ねえ……」
俺は懐から脅迫状を取り出した。
「被害者とは、今日、初めてお会いしました。これの差出人を捜してくれと依頼を受けて来ました」
刑事が脅迫状を手に取る。
「成る程……しかし脅迫状は刑事事件で警察の担当。なぜ民間の探偵なんかに?」
「我々に依頼する前、警察に捜査をお願いしたんですが、犯人が見つからなかったそうなんです。だから我々に依頼したんだと思います」
「そうですか……」
「ところで刑事さん、我々も事件を調査してもよろしいでしょうか。もちろん捜査の邪魔はしません。どうでしょう?」
「まあ、邪魔しないというのであれば、別に構いませんが……。うん、その代わり何か分かりましたら教えて下さい」
「ええ、もちろんです。それと、刑事さんのお名前と連絡先を教えていただけませんか?」
「ああ、申し遅れました」
刑事が名刺を出した。
下山 勝幸。階級は警部だ。
「下山警部!」
二十代くらいの刑事がやってきた。
「近隣で聞き込んだところ、先程、女性が被害者ともめていたと言う目撃証言が得られました!」
「よし、その女を調べよう」
下山警部は部下を連れて去っていった。