第24話:鉄の鳥殺人事件(後編)
何かどこかで見たような殺害の手口になってます。
自分の座席に座っていると、山田がやってきた。
「黒沢先生、被害者の知人を三人見付けました。今、現場に集まってます」
俺は席を立ち、山田と共に現場へ移動した。
「まさか、篠田が殺されるなんて……」
篠田 小五郎の友人男性、赤羽 光一がそう呟いた。
「小五郎、どうして死んじゃったのよ!?」
泣き出す篠田の彼女、山上 英子。
「篠田くん……」
と、悲しそうな表情で呟く篠田の友人女性、松本 絵里子。
「彼らのアリバイはどうなんです、山田さん?」
「それが、三人とも今まで寝ていたと仰っていて、アリバイの証明が出来ないんですよ」
「そうですか……。取り敢えず、三人の身体検査と所持品の確認をしましょう」
「男性は構いませんが、女性の身体検査は誰が……?」
「それ、私が」
と、そこに現れたのは、意外な人物だった。
「洋子!? 何で居んの!?」
「貴方は?」
洋子が警察手帳を出す。
「警視庁捜査一課、荒川です」
山田が敬礼する。
「ご苦労様です!」
「何で洋子が居んの?」
「手配中の殺人犯が沖縄に逃げたから、身柄の確保へ行くところだったのよ」
「そうか」
「で、殺人事件なんだって?」
「ああ、そうなんだよ。トイレで男が死んでるんだ。鑑識の山田さんが言うには、死因は頸髄損傷による窒息死だって」
「鑑識?」
「ああ、この方」
俺は洋子に山田を示した。
「大田署鑑識課の山田です」
「害者の死亡推定時刻は?」
「恐らく午前十時前後かと」
「そう。じゃあ身体検査を始めましょうか」
洋子と山田が三人の身体検査、所持品検査を行った。
赤羽の荷物は、煙草、ライター、携帯電話、デジタルカメラ、財布、自動車運転免許証、学生手帳。凶器になるようなものは無かった。
次に山上の持ち物。携帯電話、財布、免許証、学生手帳。こちらも凶器になるような物は無かった。
残るは松本。所持品は、携帯電話、財布、腕時計、免許証、学生手帳の五つ。
「凶器となるようなものは出て来ませんね」
「山田さん、まだ隠し場所は残ってますよ。被害者の鞄の中です」
俺たちは篠田たちの席があるところへ移動した。
松本が篠田の鞄に右手を伸ばし、途中で引っ込めた。
「どうしました?」
「いえ、あの、一週間前に篠田くんの鞄がズタズタにされていたのを思い出して……」
「虐めか何かでしょうか?」
「さあ?」
松本が左手で篠田の鞄を取る。
中には、財布、筆記用具、メモ帳、運転免許証、学生手帳が入っていた。凶器になりそうなものは無い。
「黒沢先生、凶器、見付かりませんでしたけど?」
「凶器の在処なら分かりました。松本さん、貴方の下着の右胸のワイヤーです」
事件関係者が一斉に松本を見る。
「松本、お前……」
と、赤羽。
「絵里子、どうして?」
「刑事さんなら知ってるでしょ? 半年前に大田大学で起きた学生の飛び降り自殺。あれ、本当は殺人事件だったのよ。その事件で死んだ学生は私の彼氏で、殺害したのは篠田くんだったの。それを知ったのはちょうど一週間前。だから殺してやったのよ! 私の彼氏を殺した罰としてね!」
「洋子、そんな事件遭ったか?」
「大田大学の自殺の件でしたら、大田署で捜査しました。ですが、他殺の証拠は無く、自殺で捜査を打ち切っています」
と、言うのは山田だ。
「それはそうと、殺人鬼を逮捕しないと」
洋子は手錠を取り出し、松本の手にかけた。