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第2話:復讐の殺人

 千代田区の住宅街にある小さな公園で女性の遺体が発見された。

 俺は洋子に電話で呼び出され、現場へとやってきた。

 遺体の首には絞められた痕と吉川線があった。そのことから被害者は絞殺であることが分かる。死亡推定時刻は昨夜十時前後だ。

「荒川警部!」

 洋子の部下が彼女を呼ぶ。

「周辺で聞き込みをしたところ、昨夜に男女が言い争ってるのを目撃したという人が居ました」

「ご苦労様」

「洋子、被害者の名前、何ていうの?」

笹本ささもと 秋子あきこ。角山書店に勤務してるわ」

「じゃあそこへ行こう」

「うん」

 俺と洋子は車で角山書店へと向かう。

「洋子、好きな人は出来た?」

「何よ、薮から棒に?」

「出来たかどうか教えてくれ」

「出来てないわ。それに同じ目に遭うのは嫌だから彼氏も作るつもりはないわ」

「そうか」

 と、そんな事を話している間に車は角山書店に到着した。

 俺と洋子は車を降り、角山書店へ入る。

 職員の一人が俺たちに気付いてこちらへやってきた。

「どういったご用でしょうか?」

 洋子は警察手帳を見せる。

「警察? 何か遭ったんですか?」

「笹本 秋子さんが何者かに殺害されました」

「何ですって!?」

 職員の感嘆の声に、他の職員たちが一斉にこちらを振り向く。

「一体、誰に殺されたんですか?」

「まだ分かりません」

「そうですか……。ああ、僕、後藤ごとうと言います」

「では後藤さん。笹本さんに何か変わったことはありませんでしたか? どんなことでも結構です。教えて下さい」

「うーん……これといって特に……」

「そうですか。では、後藤さんは昨夜の十時前後、どこにいらっしゃいましたか?」

「アリバイってやつですね? その時間は家で寝てましたよ。生憎、証明することは出来ませんけど」

「そうですか。有り難う御座います。では」

 俺と洋子は角山書店を出て車に乗った。

「さて、どうしようか?」

「昨日の夜、喧嘩してたっていう男女を捜そうよ」

「見つかるかな?」

「それを言っちゃおしまいよ」

「よし、じゃあ捜そう」

 その時、洋子の携帯電話が鳴った。

「荒川です」

 応答する洋子。

「……それ本当? ……分かったわ。行ってくる」

 電話を切る洋子。

「どうした?」

「昨夜、喧嘩してた男女の男の方が見つかったって。名前は小宮山こみやま 博司ひろし。今から行くわ」

 洋子は車を発進させた。



 千代田の住宅街に小宮山の家はあった。

 洋子がインターホンを鳴らす。

 小宮山と思しき男が出て来て訊く。

「どちら様?」

 洋子が小宮山に警察手帳を見せると、小宮山は慌てた様子でドアを閉めようとしたが、俺がドアに足を挟んで全開した。

「小宮山さん、何かやったんですか?」

「すみません、万引きやりました」

「そう。それより、笹本 秋子さんをご存知でしょうか?」

「え、万引きの捜査じゃないの?」

「違います。今は殺人事件の捜査をしています」

「殺人!? 僕は関係ないですよ!」

「小宮山さん、貴方、昨日の夜、女性と喧嘩されてますよね?」

「喧嘩はしてないですよ。別れ話をしてただけです」

「相手は笹本 秋子さんですか?」

「誰ですか、それ?」

 俺と洋子は顔を見合わせる。

「シロ?」

「だろうね」

 俺は小宮山の方を向く。

「お時間取らせてしまってすみませんでした。万引きについては後日、警察の事情聴取があるでしょう。では」

 俺と洋子は踵を返し、小宮山の家を後にした。



 笹本家。

 インターホンを鳴らすと、中から四、五十代の女性が出て来た。きっと、笹本 秋子の母だろう。

「警視庁の荒川と申します」

 と、洋子が警察手帳を見せる。

「秋子さんの件でちょっとだけお話を聞かせて頂けますか?」

「どうぞ、お上がり下さい」

 家に上がった俺と洋子はリビングへ案内され、ソファに腰掛けた。向かい側には笹本が座る。

「早速ですが、秋子さんには付き合っている男性は居るんでしょうか?」

「今は居ません」

「今は、ということは、以前はいらっしゃったということですか?」

「はい。一年ほどでしたが……」

「では、その元彼の名前と住所を教えて頂けますか?」

赤山あかやま 達彦たつひこという名前です。住所は分かりません」

「有り難う御座います」

 会釈する俺。

「洋子、行くぞ」

 俺と洋子は笹本の家を出て、車に乗って役所に行き、そこで赤山 達彦の住所を教えてもらい、赤山の家に向かう。

 赤山の家は練馬区の住宅街にあった。

 俺がインターホンを鳴らすと、赤山 達彦が出て来た。

 洋子が赤山に警察手帳を見せる。

「警察が何の用ですか?」

「笹本 秋子さんが殺害されました」

「何ですって!?」

「赤山さん、貴方、笹本さんと付き合っていたそうですね」

「ええ、少しの間……」

「別れる原因になったのは何でしょう?」

「秋子に他に好きな人が出来たんですよ。それで別れたんです」

「そうですか。では、昨夜の十時前後、どちらにられましたか?」

「刑事さん、まさか俺を疑ってるんですか?」

「いえ、形式的なもので……」

「その時間なら、俺はコンビニに買い物へ行ってました」

「それを証明することは出来ますか?」

 赤山はポケットからコンビニのレシートを取り出す。

 レシートには二十二時に買ったという記録が書かれている。

「有り難う御座います。では」

 俺と洋子は車へと戻った。

「洋子、コンビニの防犯カメラの映像を見せてもらおう」

「分かった」

 洋子が車を発進させ、俺たちはコンビニへとやってきた。

「いらっしゃいませ!」

 洋子は店員に警察手帳を見せた。

「警視庁の荒川です。昨夜の防犯カメラの映像を見させて頂けませんか?」

「分かりました。こちらです」

 事務室に案内される俺と洋子。

「何時ごろの映像を見られますか?」

「二十二時」

 店員がテープを再生させると、モニターに店内の様子が映し出された。

 時刻が二十二時になり、後藤が店内に入ってくる。

「洋子!」

「後藤さんね」

「それはそうと、赤山は来ないね」

「でも赤山はレシートを持ってたのよ? 来る筈よ」

 しかし、いくら待っても赤山は来なかった。

「洋子、赤山の所へ行こう」

「そうね」

 俺と洋子は車で赤山の家に戻った。

 玄関先で赤山と話をする。

「赤山さん、秋子さんを殺したのは貴方ですね?」

「ちょっと聡!?」

「何を言ってるんですか、刑事さん? 俺にはアリバイが」

「貴方のアリバイなら崩れましたよ。貴方が持っていたレシート……それは、角山書店の後藤さんが買い物をした時に貰ったレシートですよね? 貴方は秋子さんを殺害後、後藤さんからレシートを譲り受けた。違いますか?」

「そんなの憶測に過ぎない! 俺を犯人にしたいんなら、証拠を持ってこい!」

「ではレシートを貸して頂けませんか? レシートに後藤さんの指紋がついてないか調べさせていただきます」

「なっ……!」

 赤山はその場に膝をついた。

「秋子の奴、俺の妹を自殺に追いやったんだ! 全部アイツが悪いんだ! だから殺してやったんだ!」

「詳しいことは署の方で聞きます」

 洋子は赤山に手錠をかけると、彼を車に乗せて警視庁へ向かって行った。

 その後、警察の調べで後藤も共犯者だということが判り逮捕されたという。


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