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第16話:落書き

 黒沢探偵事務所のドアがひらき、女性が中に入ってくる。

「ようこそ、黒沢探偵事務所へ。どういったご用件でしょうか?」

 女性は無言で写真を机に置く。

「これは?」

 写真には壁の落書きが写っている。

「この絵を描いた人を捜してほしいの」

「ほうほう、これは立派な絵ですねえ。これはどこに書かれていた物なんですか?」

「私が住んでるマンションの向かい側にあるマンションの屋上よ」

 女性は懐から封筒を取り出した。その中には五十万円が入っている。

「取り敢えず前金として五十万出すわ」

 女性は五十万入りの封筒を机に置くと、「大至急お願いするわ」と言い、連絡先を書いたメモを残して事務所を出て行った。

 俺は早速、絵を描いた人物を捜しに出掛けた。

 そして数時間で絵を描いた人物の住所を割り出した。

 俺は依頼人に電話で絵を描いた人物の住所を教えた。



 翌朝、テレビをつけてみると、ニュースがやっていた。

 画面にはあの絵を描いた人物の名前と顔写真が出ており、ニュースキャスターがこの人物が殺害されたということを説明していた。

ピンポン──と、チャイムが鳴り響く。

 俺はテレビを消すと、玄関のドアを開けた。

 外には洋子が立っていた。

「どうした?」

浅川あさかわ 信也しんやを知ってるわね?」

 浅川 信也、というのは、昨日俺が捜していた人物だ。

「知ってるよ。殺されたんだってね」

「別に疑うわけじゃないけど、貴方、浅川を調べていたそうじゃない。浅川がバイトしているコンビニの店員に聞いたわ」

「ああ、捜してくれって依頼があったからな」

「誰に頼まれたの?」

「それは守秘義務があるから教えられないな」

「そこを何とか」

「そう言われてもな……。俺もよく知らねえんだ。名前も言わずに帰っちゃったからな」

「連絡先は?」

 俺は依頼人の連絡先が書かれた紙を取り出した。

「それが連絡先ね」

「まさかとは思わんが、こいつが殺したとでも言いたいのか?」

「うん」

「そうか。俺も怪しいとは思うけど、証拠が無いぞ。取り敢えず、こいつの住所割り出して行ってみるか」

 俺と洋子は女の電話番号から住所を割り出し、その場所へ向かった。

 向かい側のマンションの屋上の壁に落書きがされてある。

 俺は写真を取り出した。

「何それ?」

「あれ」

 俺は絵の描かれたマンションの屋上の壁を指差す。

「浅川があの女に殺されたとなると、彼はあそこから何かを見たんだな」

 俺と洋子は落書きのされたマンションの屋上へ移動した。

「立派な絵ね……」

「関心してる場合じゃないんじゃないか?」

「そうね」

 俺は女のマンションを見る。

「一体何を見たんだ?」

「殺しの現場を見たんじゃないかしら?」

「成る程」

 ピリリリリリ、と鳴り響く携帯電話。

 洋子は携帯を取り出して応答する。

「はい、荒川。……分かったわ」

 携帯をしまう洋子。

「聡、事件発生よ」

「行こう」

 俺と洋子は落書きがあるマンションを離れ、渋谷区の住宅街にある公園へと向かった。



 現場に着いた俺と洋子。

 遺体の前で合掌する。

「唐沢くん、仏さんの身元は?」

「害者は赤山あかやま 哲多てった、二十五歳。広域指定暴力団、銀龍会の構成員です」

 害者の頭部には銃で撃たれた痕がある。

「銃殺か……」

「依頼人が殺したのかしら」

「そんなまさか」

 いや、それはあり得るかもしれない。浅川 信也が落書き中に赤山 哲多殺害の現場を目撃し、女か或いはその仲間が口封じに殺した……。

「洋子、銀龍会調べてみようか」

 俺と洋子は銀龍会に向かった。

「失礼しまーす」

 中に入る俺と洋子。

 洋子は警察手帳を取り出した。

「警察よ。赤山 哲多が殺害されたわ」

「赤山が殺された!? 誰に殺されたんだ!?」

「恐らく川島かわしま 亜美あみかと……」

「川島 亜美? 誰だそれ?」

 依頼人の名だ。

「洋子、おいとましよう」

 俺と洋子は銀龍会を出る。後ろで組員が何か言ったが気にしない。

「聡、次はどこ行くの?」

「川島に会いに行こう」

 車に乗り込み、川島のマンションへと向かう。

 川島の自宅へ着き、インターホンを押すと、依頼人の女が出て来た。

「あ……!」

 女は慌ててドアを閉めようとしたが、俺がそれを許さない。

「川島 亜美さんですね?」

「な……!?」

「赤山 哲多をご存知ですね?」

「え……ええ、知ってるわ」

「先程、遺体で発見されました」

「そう……」

「貴方は赤山を殺害し、その現場を浅川 信也に目撃され、口封じに殺した。違いますか?」

「……いくら欲しいの? て言うか、あんた何者?」

 洋子が警察手帳を出す。

「警視庁刑事部捜査一課第八強行犯捜査殺人捜査第九係の荒川です。二件の殺人についてお認めになるんですね?」

 川島はその場に崩れた。

「ごめんなさい」

 川島に手錠をはめる洋子。

「詳しいことは署で聞きます」

 洋子は川島を警視庁まで連行していった。


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