第14話:レズビアン
渋谷区のある公園で殺人事件が遭った。
被害者の名は小竹 由来。歳は二十歳で大学生だ。
死亡推定時刻は昨夜の十一時前後。死因は首を絞められたことによる窒息死である。
俺と洋子は遺体の前で合掌した。
「可哀想にな……」
「犯人は絶対捕まえるからね」
「さて、小竹さんの大学行ってみるか、洋子?」
「そうね」
俺と洋子は現場を離れ、車に乗って小竹 由来の通う東都大学へ向かう。
大学に着き、職員室へ。
「失礼します」
洋子が警察手帳を出す。
「警察の者です。小竹 由来のことでお話を」
すると教員が一人、こちらへとやってきた。
「小竹の担任教師の黒山と申します。小竹が何か?」
「小竹さん、お亡くなりになられました」
「何ですって!?」
「それで、昨夜十一時頃、貴方はどちらにおられましたか?」
「その時間なら、当直でこちらに居ました」
「それを証明出来る方は?」
「居ません」
「そうですか。では小竹さんと一番仲の良かった学生さんは?」
「二年A組の岩田ですね」
「分かりました」
俺と洋子はお辞儀をすると、二年A組へと移動した。
「岩田さんはいらっしゃいますか?」
一人の女性が手を挙げ、こちらへとやってくる。
「岩田は私ですけど、何か?」
「小竹 由来が殺害されました」
「何ですって!?」
「それでですね、昨夜の十一時頃、貴方はどこに居ましたか?」
「家で寝てました」
「そうですか。では、小竹さんに何か変わったことは?」
「そう言えば、ストーカーに悩まされてるって相談を受けたことがあります」
「ストーカー? 正体は分かってるんですか?」
「それが、分からないんです。もしかして、由来を絞殺したのって、そのストーカーじゃないですか?」
「それはこれからお調べ致します。では」
俺と洋子は教室を離れた。
「洋子、岩田は絞殺だってことを知ってたよね?」
「じゃあ、まさか?」
「でも証拠がないよ?」
「じゃあどうするの?」
「現場へ戻ろう。見落としている何かがあるかもしれないぞ」
「分かった」
俺と洋子は殺人現場に戻った。
そこではまだ現場検証が行われていた。
「荒川警部!」
唐沢刑事がこちらに気付いてやってくる。
「どうしたの、唐沢くん?」
「現場を調べていたらこんな物が」
唐沢刑事が取り出したのは、ハンカチだった。
端っこに小さく”イワタ”と書かれている。
「これ預かってもいい?」
「どうぞ」
洋子は唐沢刑事からハンカチを受け取って懐にしまった。
「行くよ、聡」
「あ……ああ」
俺と洋子は車に乗り込み、東都大学へと戻り、二年A組へと入る。
「岩田さん」
と、岩田に声をかける。
「またあなた方ですか?」
「小竹さんを殺害した犯人が判りました」
「え?」
「小竹さんを殺害した犯人……それは、岩田さん、貴方ですね?」
洋子が懐からハンカチを取り出した。
「それ、私の」
「小竹さんの殺害現場に落ちていました」
「それだけで私が犯人になるんですか?」
「いいえ。貴方はさっき、我々にこう言いました。『絞殺したのって、そのストーカーじゃないですか?』と。どうして絞殺であることをご存知なんですか?」
「それは……」
「貴方が犯人だからですね?」
「ふふ……まさか現場にハンカチを落とすなんてね。不覚だわ」
「動機は何ですか?」
「動機? 振られた腹癒せよ」
「振られた?」
「何よ! 女が女を好いちゃいけないっていうの!?」
岩田は机に伏して泣き出した。
「詳しい話は署の方で聞きます」
洋子は懐から手錠を取り出して岩田にかけた。
岩田は泣きながら警視庁へ連行されていった。