第12話:毒薬
千代田区の住宅街に荒川家はあった。
俺は洋子に電話で誘われ、荒川家にやってきた。
「ここへ来るのも久し振りだな」
そう口にした俺が、インターホンを鳴らすと、中から洋子が出てきた。
「いらっしゃい。待ってたよ」
「お邪魔します」
俺は荒川家に上がった。
「洋子、一人だけ?」
「お義母さんは買い物。お父さんは警察庁ね」
「そうか」
俺と洋子は玄関からリビングへ移動した。
「何か飲む?」
「あ……お構いなく」
俺はソファに腰掛けた。
洋子が麦茶を用意して持ってくる。
「どうも」
その時、救急車のサイレンが聞こえてきた。
サイレンは段々近づいてきて、近くで止まった。
「洋子、様子見てこようよ。ひょっとしたら事件ってこともあるからさ」
「うん」
俺と洋子は表へ出た。
救急車が隣の家の前に止まっている。
男性を乗せた担架が隣の家から出て来て救急車に入れられる。
俺は担架と一緒に救急車に乗った女性に声をかけた。
「あの……どうしたんですか?」
「夫が倒れたんです」
俺は洋子に手招きをした。
こちらへやってくる洋子。
「旦那さんが倒れたそうだ」
「事件性は?」
「まだ何とも」
「あの……あなた方は?」
救急隊員の問いに洋子は警察手帳を見せた。
「警察です」
「夫が倒れたことに事件性があるとお思いなんですか?」
「いえ、まだ何とも……」
「そうですか」
「あの……もう発車してもいいですか? 急がないと手遅れになるので」
「あ、すみません、引き止めてしまって。どうぞ、出発して下さい」
ドアが閉められ、救急車がサイレンを鳴らして発車した。
「さて、調べるかな」
「何を?」
俺は救急車で病院へ向かった小杉の家に上がった。
「ちょっと聡、不法侵入よ!」
俺は無視して台所へ移動し、ゴミ箱を漁った。すると、青酸化合物の容器が見つかった。
「洋子、これ」
「青酸化合物?」
「洋子、小杉さんが向かった病院へ行こう」
「分かったわ」
「ここからだと、千代田総合病院かな」
俺と洋子は千代田総合病院へ向かった。
手術室の前に小杉の妻が立っていた。
「小杉さん」
「はい?」
振り返る小杉の妻。
「心配になって来ちゃいました。ご主人の容体は?」
「分かりません」
手術中のランプが消え、ドアが開いて医師が出て来た。
「主人は!?」
首を横に振るう医師。
「残念ですが……」
洋子が医師に警察手帳を見せる。
「警視庁の荒川です。小杉さんの死因は何ですか?」
「急性心不全です」
「司法解剖をお願いしてもよろしいですか?」
「分かりました」
「小杉さん、ちょっとお話いいですか?」
「何ですか?」
「貴方のお宅から面白いものが見つかったんですよ」
「面白いもの?」
俺は懐から青酸化合物の容器を取り出した。
「ご主人を殺害したのは貴方ですね?」
「なっ……!?」
小杉の妻はその場に崩れた。
「他人様の家に勝手に上がり込むなんて……。主人は私が殺したわ」
「どうして殺したんですか?」
「私、他の男と付き合い始めて、夫が邪魔になったのよ」
「どんな理由であれ、人を殺すのはよくないことです」
「すみませんでした……」
洋子は手錠を取り出すと、小杉の妻の手に掛け、警視庁へと連行した。