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【拡散希望】  作者: 飴矢


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4/6

4日目

【拡散希望】沢北市内の女子高校生が行方不明

 10月17日の夕方頃を最後に行方が分かりません。

 島崎県立沢北高校三年■郷茜峰

 身長15$(cm 痩せ型で制服にベージュ色のカーディガン   連絡先はこちら


 ◇――◇――◇――◇――◇


 スマートフォンのアラームが鳴っている。大丈夫、スヌーズにしているから、後三回までに起きれば遅刻しない。

 薄っすらと目を開ければ枕元には白い流行りのキャラクターのぬいぐるみ。壁側には雑に掛けたせいで、ハンガーからずれ落ちそうなオーバーサイズのカーディガン。

 ……またか。日付も、1日進んでいる。



 ――ボチャン。水の中に重い物を落とす音が聞こえた。



 耳からゴォーッと飛び立つ飛行機のような、重低音が響いていて不快だ。幽霊って疲れるかな、なんて働かない頭でそう思った。

 もぞもぞとベッドから出て、リビングへ向かう。


 お母さんと……お父さんに、会いたい。

 情緒がめちゃくちゃなんだよ、もう。相変わらずの散らかったリビング。

 もう何日も掃除機をかけていないせいか、少し空気が悪い気がする。


「…………の、宗……うの、ぃ件です……」

 テレビの音が途切れる?画質もぼんやりとして荒い。

 音量を上げると、両親がビクッとした。そして、リモコンを手に取り音量を「いつもの数字」にまで下げている。


 お母さんを見ると、口は動いている。何て言っているかは分からない。

 シンクに溜まった生ゴミの臭いもしない、テレビの音もよく聞こえない。

 こうして、1つずつ失っていくのだろうか。


 ここ数日の異常事態に慣れてしまったのか、感情があまり動かない。でも、さみしい。

 このまま、全てを失っていくならもう少し家族と一緒にいたいと思った。


 そんな願いを打ち消すように玄関の扉を叩く音が微かにする。

深郷(みごう)さーん、お話を聞かせてくださーい!」

「今回の事件と……痛っ」


「来ないで」と願ったら、ドアに触れていた記者が「バチッ」という音ともに弾かれるように離れた。

「静電気かよ、痛ぇな……」とでも言っているんだろう、手を振って痛みを逃しているらしい仕草。

 邪魔をしないでほしい。うっすらお父さんの声がしたから、またリビングへ戻る。


「ぃ、はい。……なしは、ありがたいですが。茜峰が戻ってくるかもしれないので、私たちは自宅で待ちます」

 ……私は、ここに帰ってきてるよ。

「ぇえ。巡回が増え……助……ます。ありがとうございます」

 電話なのに頭を下げてそう言っていた。


 お父さんがお母さんに何かを話している。2人、寄り添うようにじっと1つのスマートフォンを見ている。


【拡散希望】から始まるそれには今もたくさんのコメントが新しくついている。


 ❖──❖──❖──❖──❖

 

「犯人が人違いって言ってたことはもしかして……」

「娘さんの御冥福をお祈りします」

「絢音ちゃん茜と全然似てないのにかわいそうwww」

「茜峰なら今俺の横で寝てる」

「まだ生きている可能性はある!親なら信じろ!」


 ❖──❖──❖──❖──❖


 こいつらに人の心はないのかな。これが行方不明者の両親にかける言葉なの?

 本っ当にもう黙っててほしい!うるさい、この人でなし!!


 昨日の、刺されたという2年の女の子の顔もまた晒されていた。

 私と違ってまだ生きているこの子には同情する。

 今は派手なメイクをしているけれど、中学の卒業アルバムの写真は……私によく似ていた。

 同じ高校で背格好も名前の響きまで似ているのか。

 おかしくもないのに笑えてくる。


「あは……っ」


 あの時、あいつが呼んだのは「あかね」ではなく「あやね」だったんだね。

 人違いで、殺された。やり場のない怒り。

 


 ■■高のd@'j er■6g

 


 あなたの顔は


 忘れていないから。

 


 

 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さァぁ゙ァぁ許さない許さぁ゙ぁ゙ァァ



 ――……正気に戻ったのは両親がバタバタと動く気配。

 待って……!と追いかけようとする。

「茜峰が!」

「茜峰を迎えに行かな


 ここで、頭に強い衝撃を感じた。

 16時40分。

 絶対に、私は許さないから。犯人と――……。

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