召喚と魔法詠唱は漢のロマン
はっ、はっ、はっ、はっ――
俺の名は椿 圭介。
俺を形容する言葉はいくつもあるが、一言で言えば――美しい男。
それが一番しっくりくるだろう。
美しいというのは罪だ。
望むと望まざるとに関わらず、人を惹きつけてしまう。
俺は基本的に“来る者拒まず、飽きたらリリース”のクズだ。
喧嘩は弱いが、性欲だけは伝説の勇者並み。
ひょんなことからこの世界に紛れ込み、
クソッタレなメンヘラ女たちとくんずほぐれつ。
――まあ、深く考えてもしゃーない。
こっちでも、適当に生きるだけだ。
「なあ、キース?」
「ああっ、もうだめぇ……!」
――
―――・・・
――
俺がキースと関係を持ったのは、まあ偶然というか、たまたまというか。
三日前の事件がきっかけだった。
「圭介! 七日ほどで戻るからな! 万が一あのアバズレが来たら、キースをすぐ呼べ! わかったな!」
「あ、ああ。わかってるよ、メリー」
メリーは俺のご主人様兼恋人だ。
今日からしばらくの間、ディズガイアとの戦争に向けた軍議が行われるらしい。
正直、キースの方が向いてそうな仕事だが、
やはり当主が行かなくては格好がつかないらしい。
「わかってるよな? チ○コ使うなよ」
「わかってるよ。当たり前だろ、メリー。愛してる」
「愛してる」の言葉に顔を真っ赤にするご主人様。
……メンヘラじゃなけりゃなぁ。ほんと可愛いのに。
「キース! 後を頼む!」
「御意!」
バタン――。
束の間の安息やでぇ。
「ふー……さてと、なんか仕事あるか? キース」
「椿、その前に提案だ。ディズガイアとの開戦にあたり、私やメリー様も戦場に出る可能性がある。
差し当たって、椿には自分を守れる最低限の力をつけてもらいたい」
「はあ? お、おまえ、この圭介様に戦争に参加させるつもりか?俺が死んだら世界の損失だぞ!奴隷館の仕事は、戦争奴隷の確保と調教じゃないのか?」
「ふむ、椿は知らないか。
私やメリー様はアービガルドの特級戦力に指定されている。不測の事態が起きれば国の防衛に当たる。
奴隷館だとて、戦場になる可能性はある」
ジーザス! そんな超常現象バトルの真っ只中に巻き込まれたら、俺なんざ塵しか残らんわい! くそったれが!
「……俺だけ避難するか? 邪魔になったら悪いしな」
――神か俺は!
なんという合理的で美しい言い訳だ! 天才!
「メリー様が椿を離すとでも?」
さよなら現世……
動きやすい格好に着替えた俺は、キースと一緒に鍛錬場へ来ていた。
何でも特殊な結界が張られていて、
よほどのことがない限り壊れないらしい。そりゃ安心だな。そんな安心いらないけど。
「で? なにすんだ? はっきり言うが、俺は喧嘩の弱さに自信がある!」
――風俗王に俺はなる! ドンッ!
「威張るな、ばかもの」
「ちっ、最近遠慮ないな」
「椿には召喚術を覚えてもらう。私やメリー様のような魔術師は、その身に召喚従を宿している。召喚従を宿すことができる者は非常に稀で、ほとんどの魔術師は失敗して――死ぬ」
「は? はああ!? 死ぬ!? おまえバカか!? そんな危ないもんいらんわ!」
「安心しろ。自分では気づいていないかもしれんが、
椿の内包魔力は相当高い。魔力だけなら、メリー様以上かもしれん。大丈夫だ。もし暴発しても、いざとなれば私が止めてやる。それに召喚従を宿せば、メリットは大きい。身体能力は飛躍的に向上するし、宿した召喚従によって固有魔法が使える」
この前メリーとクリスがやり合ったときの、あの魔法か?思い出すだけでゾッとするわ……いらねぇよ、そんなもん。
「呼び出せる召喚従は魔術師によって異なる。
何が出るかは資質による。
メリー様は炎の召喚従イフリート。
ちなみに私は風の召喚従シルフだ。
さて、椿は何かな?」
「おいキース! 珍しくテンション高いな!?
はっきり言うが、別にいらないぞ! ひ、ひぃ、近寄るな!」
「よし、魔力を開けるぞ。荒療治だからな。気をしっかり保て」
そう言うと、キースは黒いビー玉のようなものを俺の口に押し込んだ。
「んぐっ……ごくん。うぇ? なんだ……いまの……!?」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン――!
心臓の音がうるさい。意識が遠のく。身体が熱い。ば、爆発しそうだ!
「うがあああああ! な、なんだこれ!? 身体が、い、痛ぇ! がああああ! キース! 助けてくれ!!」
あまりの痛みに転げ回る。身体中から汗が噴き出る。
し、しぬ……!
その状況はキースデジーにも完全に想定外だった。
想定の何十倍の魔術暴走、その禍々しい魔力に体感したことない恐怖が身を竦める。
「な、なんだこれは?これではあまりにも!椿!くそっ!まさかここまで内包魔力が多いなんて。暴発した魔力が枯渇すれば死んでしまう!強制的に魔力を止めるしかない!やむを得まい!すまん椿!少し痛いぞ!」
キースの雰囲気が変わる。
「風の精霊 シルフ!巻き起これ暴風!全てを巻き込む風の王!シェル キーア テン マーズ アッガー」
ー死ぬな!椿!!
「エアーボルトォォ!」
キースの手から特大の風の塊が放出される。圭介に向かって音速を超えるスピードで向かう塊。
ー失いかけた意識の中で前を見る。視覚出来るほどの暴風の塊。それは圭介に死を連想させた。
い、いやだ 死ぬのは、死ぬのはいやだぁーー!!
ーズガアアアン!
魔法は圭介に直撃した。かなり手加減したが重症なはずだ。急いで圭介に近寄るキース
ードゴッ!
認知出来ないスピードでキースが吹き飛び壁に叩きつけられる。
「な、なに?」
圭介がいた場所を見るとそこには
黒い炎に包まれた圭介が無表情に立っていた。
ー神話の中でなら聞いたことはある。まさか実在するなんて、、、
キースは涙を流していた。
震えが歯を鳴らしガチガチと耳障りな音が響く。
あまりの恐怖に錯乱する。
眠っていたものはとんでもない化物だった。
あの黒い炎、間違いない。圭介の召喚従は
終末の炎 終わらせる者 「邪神 ロキ」
キース デジーは死を覚悟した。




