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―ローマの中田はトッティの控え―


―港町ピアーズ/マーリン・カーズド邸―


なんやかんやあって亡命中の俺たちは、奴隷館の上顧客にして港町ピアーズの顔役、

マーリン・カーズドとかいうババアの館に匿ってもうためにピアーズに潜入したわけだが、


……にしても、屋敷がでけぇ。


もう五分は歩いてんのに、まだ目的の部屋に着かねぇ。これ、普通に町内会の体育館より広いぞ。


「なぁメリー。マーリンってどんな奴なんだ? 随分立派な屋敷だけどさ。」


前を歩くメリーが、顔を背けたまま言う。


「前も言ったけどな、クソッタレの変態ババアだよ。

 これで金がなきゃ、とっくに殺してる。残念ながら奴隷館の超上顧客なんだ。性格さえ無視すりゃ悪くはねぇが――あたしのマン○にご執心らしい。」


「……どんな紹介だよ。」


「しかも、地味に腕も立つ。厄介極まりねぇ。正直、こんな状況でもなきゃ二度と顔なんざ見たくなかったくらいだ」


「正直私も苦手な方なんだ」


キースが低くつぶやく。


おいおい、このメンヘラーズが揃って“苦手”って、どんな魔物レベルの婆さんだよ。

逆に興味湧いてきたじゃねぇか。どんなパンクババアなんだよ。




「ひっさしぶりじゃのぉぉ! メリーちゃぁん! 元気してたかのぉ!? ハァハァ……」


扉を開けた瞬間、目の前の“少女”が両手を広げて飛びついてきた。

……え?少女?10歳くらい?いや待て、声がババアだ。


「お主ぇ!また可愛くなっておるのぉ!あぁ、その子猫ちゃんが……舐めたい!ペロペロしたい!もう我慢できん!」


「イフリート。」


「ぃぎゃああああああああああ!!」


……うわ。

目の前で、火だるまになった幼女(※中身ババア)が転げ回っている。

俺のモテキャリアの中でも、導入からこんなインパクトある奴は初めてだぜ。


「あっつい! すまん! 消してくれぇ!」


「チッ。」


メリーが指を鳴らすと、炎は一瞬で消えた。

焼け焦げた少女――マーリンは、くすぶる煙を吹きながらケラケラ笑った。


「……冗談じゃのぉ。メリーちゃん、相変わらず容赦ないのぅ。」


「冗談は嫌いでね。マーリン、悪いがしばらく世話になる。事情は言えないが、アービガルドを離れる。あんた、あたしに借りがあるだろ?“嫌”とは言えないはずだ。」


「事情はもう聞いとるよ。あたしゃ長生きしとるからねぇ。この国の風の音も、砂の動きも、全部耳に入る。」

マーリンがゆっくり立ち上がる。焦げ跡の煙を払いつつ、

俺の方に視線を向けた。


「……ただし、一つだけ条件がある。」


「条件?」


「椿 圭介。――あんたはダメだ。」


瞬間、メリーとキースが前に出た。

二人の空気が、ピシッと変わる。

「ほぉ? クソババア。圭介はあたしの“つがい”だ。くだらねぇ冗談なら、首がくっついてるうちに引っ込めな。」

「椿は我らと一心同体です。マーリン様、再考を。……手荒な真似はしたくありません。」


いやいや、お前らのが明らかに手荒いだろ。

マーリンはため息をつき、杖の先で床を軽く突く。


「ふん、勘違いすんじゃないよ。男嫌いの意地悪じゃない。あんた、危険すぎるんだよ、椿 圭介。邪神ロキを召喚従に持ち、極悪な魔力を内包してる。メリーとキースをうまく騙したようだが、あたしゃ甘くない。」


「……は?」


「お前の進む道には“凶運”しか見えない。あんたと一緒にいれば、二人は確実に不幸になる。」


お、おいババア……


な、なんだその……キラーパスはよー! 全盛期の中田英寿かよ!これ、メンヘラーズと別れる口実になるじゃねぇか!ババア、あんた……やるじゃねえか!決めてみせるぜ、俺は岡野だ!ワールドカップだ!岡田さん、見ててください!


「わかっ――」


「ふ、ふははは! ババア、それは無理な相談だね!」


メリーが俺の声をかき消すように叫んだ。


「圭介とあたしは“比翼の呪印”で繋がってる! 離れたら死ぬほどのな!」


「なっ!?」「なんだって!?」

……え?ちょ、え? 聞いてないんだけど!?

なんだその死亡契約!!


「ひ、比翼の呪印じゃと!? 馬鹿たれが、なんてものを……!」

マーリンが珍しく取り乱した。


「魂を共有する古代の法術じゃぞ!? 一方が死ねばもう片方も死ぬんじゃ! 正気か!」


いや、俺が聞きたいわババア!


「メリー、いつの間に……」


「前に言ったろ?おまえが死んだらあたしも死ぬって。」


あ、あれか!?

あの時の“愛の台詞”が、実は呪いの契約だったのか!?

詐欺師かよこのビッチ!


「なんだ圭介。嫌なのか?」


「ばっ……バカ言え。そんなものなくても、最初から……おまえがいない世界で生きる気なんて、ねぇよ。」


「ばっ、バカ! 人前で言うなっ!」


おのれがバカじゃ、クソビッチ。

マーリンが杖を地面に突き立てた。


「……まあよい。互いの覚悟は見えた。だが、あたしゃまだお前を信用できん。あんたを匿う以上、リスクを背負うんだ。――ならば、対価を払ってもらう。」

「対価? 金はないけど。」

「金なんざ要らんわ! 代わりに“試練”を受けてもらう。」

「試練、ねぇ……」

「ふん、やってみろババア。圭介なら、どんな試練でも乗り越えてやる。」

メリーが勝手に盛り上がってる。

俺の全身の危険センサーがフル稼働してるっつーのに!

「もう面倒くせぇ……いいよ、なんでもやってやる。

 メリーとキースのためならな。」

マーリンが薄く笑った。

「――言ったね?よろしい。では、“ドラゴ”を呼べ。」

光の陣が走る。空気が震えた。

地の底から響くような唸り声が、屋敷を満たした。

「グルルルル……ウガァアアアアア!!」

現れたのは――

トカゲの顔したアーノルド・シュワルツェネッガー。

……うん、終わったな俺。

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