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氷の女王は地下が好き

「クリス女王の首を!? 無茶です、メリー様!」


「いいや、圭介ならやれる。クリスは圭介に執着している。あいつはどこまでも追いかけてくる。亡命を企てるなら、あいつがいると面倒なんだ」


「しかし、彼女は第三王女にして、国の核心の一角です。我ら三人でかかっても難しい相手を、椿一人に任せるのは——そもそも、どうやって王女を討つつもりなのですか?」


「キース、あたしは見たんだ、圭介がグングニルの槍を“重複発現”させたところを! 信じられるか? 神の槍グングニルの重複発現だぞ? あれだけの魔法があれば、遠距離から狙い撃ちで殺せる」


「グ、グングニル!?、、、にしても危険です! 今回のガーネット襲撃を報告し対策を考えましょう」


「聞け、キース。クリスがあたし達を生かしているのは、圭介の存在と戦争奴隷がいるからだ。奴隷が全滅したなどと正直に言えば、あいつは即座に圭介を奪いに屋敷を襲撃してくるだろう」


「し、しかし…!」


――おおっ、すげえエキサイトしてんな。だが俺って天才すぎるだろ。極上メンヘラ二人を合法ハーレムで抱えてるって、マジで一歩間違えば即死案件だ。俺を作った神様、ずるいよな。イケメンで機転も効くなんて。


ダン!


「うるさいぞ、キース! あたしに逆らうのか?」


「椿の命が掛かってる以上、承認できません!」


やばい、場が殺気立ってきた。そろそろ止めないと。


「あのさ。盛り上がってるところ悪いけど、俺、魔法使えないぞ」



「「は?」」



――


「つーわけで意識が途切れてて魔法のことなんか覚えてないんだ。もちろん今も使える気がしない!」


「「いばるな!」」


「…まあいい。圭介の魔法が頼れないなら、クリスを諦めて、跡を消して亡命するしかないな」


「……ですね。しかしメリー様、亡命と言っても行き先は?」


「近隣の国では目が割れている。だが港町ピアーズならどうだ? 奴隷館の上顧客、マーリンに頼れば隠してくれるはず。開戦ギリギリまで潜伏して、戦が始まれば船で他大陸へ逃げる。貿易港なら人の出入りが多いし、追手も海を越えてすぐには追って来れない」


「確かに、マーリン様はメリー様を気に入っている。恐らく黙って助けてくれるかもしれませんね」


「マーリンは苦手なんだが、、はあ、それしかないか…。だが今度は殺しちまうかもな」


――なんだか物騒な話が続くが、マーリンなる人物の存在が気になる。


「どんなやつなんだ、マーリンって?」


「くそったれの屑変態、一代で伯爵まで成り上がった“才媛”で、現在は外見を幼女に変えている。実年齢は120歳の化け物さ」


「120歳の幼女ってなんやねん」


「時空魔法の使い手よ。しかも女好きで、メリー様にご執心なのさ」


「ちっ、仕方ない。そうと決まったら今夜出発だ」


「御意」

「了解」


かくしてアービガルドでの生活は幕を閉じる――

だが、その選択が3人の運命の分岐点だったことは、まだ誰も知らない。



走る。

闇夜を裂くように、二つの影が疾走する。

丑三つ時の裏通り、潜入通路たる地下水道へ向かう二人。背後に喉を絞められんばかりの緊張。


「なんなのよ、ヴァイス。貸しでも作ったつもり?」


「いや。我は所用だ。主の魔力を感じて驚いた。開戦前の手出しは禁じられているはずだろう?」


「ふん、ちょっと遊びたくなっただけよ」


「しかし、あの男――なんという禍々しい魔力だ。一体何者だ?」


「お兄ちゃんのこと? 奴隷館の当主の所有奴隷かと思ったら、とんだ隠し玉よ。化物だわ」


「興味深いな、、まあいい、私は消える、主も今夜はおとなしくすることだな」


別れる二つの影。ヴァイスは去っていった。


ガーネットは彼を想う。瞳は冷たく、魔力は凶暴性を帯びる。初めて自分に並ぶ“男”を見つけた。

身体の奥が疼く。


あれが欲しい、あれはあたしの物だ。


必ず手に入れてあげるね、お兄ちゃん。


地下水道の入口に差し掛かる直前、

金属音とともに視界を切り裂く氷の壁が立ち現れる。冷気、刃にも似た閃光。反射的に体が固まる。


「氷結結界魔法?」


振り返ると、そこには居るはずのない人物が立っていた。


「あら、もうお帰り? まだ遊び足りないんじゃないの? お嬢さん」


アービガルド第三王女、クリス・アービガルド。

傍らに控えるは筆頭側近、サザビー・マクスウェル。


「へえ、久しぶりだね。クリスお姉ちゃん」


「派手に遊んでくれたものね、お土産は?」


「お土産なら頂戴♡ クリスお姉ちゃん、あんな素敵な化物を飼ってるなんて知らなかったよ。椿お兄ちゃんだっけ」


「ふふ、私の思い人よ。しかしあなたバカね、本当にバカ、ふふふ、は、はははははは」


クリスが狂ったように笑い出す、同時に周囲の気温は急速に下がっていく。目は獲物を狙う獣に切り替わる


「クソガキ、私の思い人に刃向けてただで帰すわけないでしょ?細切れにして食べてあげるわクソガキが……」


「相変わらず狂ってんの?あんたがあたしに勝てるわけないでしょ?ばか?」


「さーて、どうかしら?思い人と遊んで随分消耗してるみたいに見えるわよ」


「ち、ババア捻るくらい余裕だよ」


ガーネットが図星を突かれて奥歯を噛む。

直接的なダメージは少ないが、極大魔法を顕現させたことで、魔力げ限りなく枯渇していた。

とはいえクリス程度なら苦戦する道理はない。クリスも実力の差は理解できてるはず。この余裕の在り方が気になるが、、


「まあいいや、殺してあげるよお姉ちゃん」


ガーネットが一歩、二歩踏み込み、気配が鋭くなる。


だがその最中、背後からの斬り込み。誰も予期しなかった動きが場を変えた。


ヴァイスが静かに、しかし致命的に割り込む。彼の一閃は凍結結界の隙間をつき、ガーネットの腹部を貫いた。魔力が弾け、ゆっくりと後ろを見やる。


「ヴァ、ヴァイス…?」


「すまんな、ガーネット」


床に広がる冷たい水の上で、赤がにじむ。だが止まらない。クリスの顔は歪み、悲鳴にも似た笑いが漏れる。彼女の魔力が急速に膨れ、雪塵と血の匂いが混ざる。


「ふふふふ、さあ、夜は長いわ。楽しみましょう、クソガキ」


狂人の笑い声が夜に溶けていった。



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