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オーバードライブ計画  作者: lil jyo
第2幕 ホシデン
14/84

第14章 「火の裁き(Trial by Combat)」

 ――Access Corridorへ向かう途中、通りの空気が急に熱を増した。

 鉄骨のやぐらがガシャコンと組み上がり、円形の広場に赤い布が張られていく。観客台、賭け札、救護台、そして中央には焼けた黒曜石のリング。


「工事のスピード、NYの地下鉄も見習って」

「Hoshidenは“舞台”の作り方が速い。――告知が来る」


 塔の側面に火口紋のホログラム。銅鑼がドンと鳴り、街中に中継が飛んだ。


《公示:火の裁き(Trial by Combat)》

・証言は軽い、証拠は重い、最終は手際(闘)

・審理は灰廷(Ash Court)が執行/観客は証人

・勝者の主張を公権が採択、敗者は科を受く

・特記:三日後、**大審闘(Grand Trial)**を予定。主宰:火帝代理(主帝の臨席は後日告知)


「Trial by combat……来た。でも“主帝”の臨席は後日。――彼女はまだ出ない」

「章で言えば、もう少しメタ


 リング縁にルール板が立つ。UIも追随してきた。


《リング仕様》

・床:導電パネル+おき噴射の不規則発火

・周縁:炎鎖(Flame Chain)が周期3拍で起立/接触で焼灼

・上空:熱気流と灰による視界歪み

・無効化枠:適応(Adaptation)停止区画あり


「痛覚シミュ、強そう。Skipは?」

「ない。裁きは見せ物で、教材」


 観客がどっと押し寄せ、灰拳会と紅蓮貿易連の旗が睨み合う。

 灰廷の書記官が、焼き印の入った板を掲げた。「――道路占有権についての争い。証拠の提出は?」

 紅蓮側は**帳面レジャー**を持つが、炎鎖の外。灰拳側は「偽物だ」と叫ぶ。


 トレイが小声で言う。「Access Corridorの検問、緩むにはここで紅蓮に貸しを作るのが早い。証拠搬入がサイドで来る」


 案の定、UIが震えた。


《サイド:証拠走り(Evidence Runner)》

目的:炎鎖の起立周期を読み、紅蓮の帳面を灰廷書記台へ 無傷搬入

条件:観客に危害なし/リング規則遵守

報酬:灰廷通行証(Corridor Writ)/紅蓮の好感度↑


「走る。――舞台、借りるよ」

「Adaptationは炎鎖の立ちと燠噴射の同時に。片方だけなら自力で切れる」


 ヤエ=ヤエは帳面を抱え、炎鎖の波を読む。1・2・3(起立)/1・2・3(沈下)――逆拍で足を入れる。

 燠がぷしゅっと噴く。熱は刺す。

 無効化枠に踏み込めば適応が消える。そこは飛ばない。


「今――ホップ、スリッド、二段!」

 ショートホップIIで縁に軽く乗り、斜角で火を流す。

 観客から**「おぉ」の波。灰拳の野次が飛ぶが、灰廷の槍が静かに制**する。


 半ばで、偽流(Fake Current)のノイズが差し込んだ。

 黒いフードが観客の影に一秒だけ滲み、肩のデバイスが赤を点にする。

 風向UIが反転、燠噴射の警告が遅延。


「画面切る。頬と匂い」

 ヤエ=ヤエはUIを遮断し、焦げの匂いと風の鳴りで拍を取る。

 1(待)・2(置)・3(抜)――炎鎖の影だけを踏み、帳面を胸で守った。


 書記台へ飛び上がり、帳面を置く。焼き印の端末がピッと鳴り、証拠がログに吸い込まれた。


《サイド:証拠走り クリア!》

《報酬:Corridor Writ(灰廷通行証)/紅蓮好感度↑》

《特記:偽流介入の痕跡を検出→参考証拠として添付》


 灰廷の槍吏が頷く。「――証拠、届いた。続けたまえ」


 リングに鐘。

 灰拳会の代表が拳を構え、紅蓮の護衛が短槍を回す。

 炎鎖が起立、燠が噴き、熱気流が視界を歪める。


「今のは前菜。本番は殴り」

「観客は暴力に拍手するけど、裁きはプロセスも見る。――証拠を先に置いた君の勝ち筋」


 闘いは三拍の節で進む。灰拳が炎鎖に押し込まれ、紅蓮が燠を踏み切って返す。

 最後は紅蓮が槍の石突で灰拳の膝を払い、倒れた先に炎鎖が沈み――焼灼だけは避けられた。


《判:紅蓮》

《採択:道路占有権(期間限定)/通行枠の配分》


 灰廷の書記官が高座から宣言する。観客は札を交換し、罵声と笑いが混ざった熱が広場を満たした。


「Corridor Writ、使える?」

「Access Corridorの検問に通す。二回の優先枠は残しておく」


 UIが新たに光る。


《Main Quest:鍵門(Keystone)を開くもの(進行 2/3)》

次目標:Access Corridorで封鎖ログ:層3/3に接触

持参:Corridor Writ/紅蓮協力状/HS-Key 第一・第二

警告:大審闘準備に伴う区域閉鎖が発生(48:00以内)


「48時間で閉鎖。大審闘、三日後――舞台、でかいのが来る」

「君が真正面に入るのはまだ先。――17章で**“主帝”が降**りる」


 ヤエ=ヤエはリングの縁に目を落とした。

 燠の隙間に、薄い金属片――月紋と三本線のタグが焦げて挟まっている。

 偽流を起こした誰かが落としたものだ。


《証拠:焼損タグ(Herald Sub-Sign?)》

《評価:中/灰廷提出で参考に採用》


「拾って提出。言葉より証拠」

「君は火の文法に慣れてきた」


 広場の壁に、もう一枚大きな掲示が映る。

 大審闘(Grand Trial)の要項だ。


《三日後・正午 大審闘》

議題:冷気脈の逆流・偽装署名・幇間の破壊工作

立会:灰廷/各幇代表/火帝代理(主帝の裁断は最終日に持ち越す可能性あり)

証拠提出:前日夜まで/戦闘申請:当日朝

注:外来者の陳述は証拠提示と代役闘が要件


「外来者……私。証拠は集める。代役闘は――Guide?」

「僕はガイド。でも、リングに降りる時は隣に立つよ」

「頼もしい」


 灰廷に焼損タグを提出し終えると、Access Corridorの検問が緑に変わった。

 Corridor Writを翳すと、槍吏が無言で道を開ける。


「層3/3、取りに行く。時間は48、窓は二回。――走る」

「走って、見せて、証拠を置く。火の国はそれで道が開く」


 ふたりが広場を離れる時、観客の影の高所で、黒いフードが一度だけ手を上げた。

 肩の赤が点にして消える。

 鈴がチリと鳴り、熾天狗の観測が尾を引いた。


 ――Trial by Combat:導入。

 次章、Access Corridorの深層で封鎖ログ:層3/3に触れ、HS-Keystoneを揃える。

 大審闘まで48。言葉より証拠、証拠より手際――舞台を整えろ。


—-

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