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エンブリオ  作者: あおねこ
ユーラシア大陸での決戦
9/22

1-7 dirty worker

 強化手術。それは第1.9世代MMCV開発時、大幅に向上したジェネレーター出力とブースター出力から産み出された別次元の加速に、人間の体が追い付かず十全な性能を発揮できないという問題を、無理矢理にでも解決をするために産み出された手段だった。

 既存の航空兵器の一つである戦闘機ではリニアに変化をするGに対して長時間の訓練及び、対Gスーツを着用することによりその機能を発揮するに至っていたが、第1.9世代MMCVは既存の航空兵器とは全く違う0%から100%までの加速を一瞬で完了させるクイックブースト機能を搭載しており、かつそれを間断なく使用することを前提として設計、開発されていた。

 勿論テストパイロットは死亡を含める重大な事故を立て続けに起こし、50%ほどの出力にデチューンされた試作MMCVをロールアウトすることとなった。

 それでも試作MMCVのパイロット達は第一次エンブリオ反抗作戦においてレーザー兵器から生き残った僅かな戦闘機乗りの猛者であり、比較的短時間の慣熟訓練を経た後戦場で大きな成果を上げることに成功する。


 その成果に熱狂する世界の目から隠れるよう、強化手術は進められた。更なる戦果を求めるために。

 始めは軍部の志願兵を中心にひっそりと開始されたプロジェクトは、次第にUNIONがその権力を集中させるがために子飼いの企業連合傘下のテストパイロットにその比率を移していき、その研究データ及び技術者は呆気なく下請けとして利用していた、既に国家をしのぐ経済力を手中に収めた日本の複合企業の手に渡ることになった。とある手土産を伴って。


 UNIONは勿論のこと、その全てを取り戻そうとしたが、日本はそれよりも一手早く第2世代型MMCVを大々的に発表し、完全にUNIONとの連携を事実上解消した。その後は第二次大戦後と変わらぬ冷戦が始まった。その力のバランスは拮抗してはいなかったが。


 人が争うのは、時代や情勢が大きく変化を伴っていても、変わらず人であった。


 話は戻り、強化手術を受けた人間は有機物ベースである肉体の脆弱性を捨て去り、無機物ベースである物理的に強靭な身体を手に入れることに成功した。そして、高度に機械化された身体には旧世代のPCの様に様々なインターフェースが取り付けられ、人類初の操作拡張型強化人間が産み出された。

 その手術の成功率は決して高くは無かったが、メンテナンスを継続的に行えばほぼ永続的に使用可能な身体は始め、次世代の人類を産み出したかのように思われたが、脳に付随する機能までは機械化することが出来なかった。

 そればかりか、脳に接続される機械化された無機物ベースの新しい身体は重大なアレルギー反応を起こし、それを抑制するために特別に処方された強力で高額なステロイド剤の定期摂取が必要となった。そして、延命以外の目的を持たないそれは致命的な様々な副作用をもたらすことになっている。

 だが、定期摂取を怠ると脳は壊死を伴う炎症を起こし、強靭な身体を手にしたはずの強化人間はごく短期間で簡単に死に至ることとなる。それ故、強化手術を受けた操作拡張型強化人間は一部の企業向けMMCV開発用のテストパイロットを除き、自らの命を短時間繋ぐ為に皮肉にも長期間過酷な戦場へと向かうことになる。


 男は軍属の過去を持たず、エンブリオにおける関連被害で家族を失った「よくある」只の一般市民であった。就職先であった関連の親会社はあっという間に成長著しい軍事部門を基幹とする複合企業に併合され、気付けば軍需産業部門へ転属。強化手術の先行被験者の辞令が発表された時には何もかもが手遅れだった。


 その時期、日本の中枢に食い込んでいたUNION主導の「よくある」話だった。

 其処でたまたま強化手術に適合した男はテストパイロットに任命され、致命的なまでの歴代最低射撃スコアを発揮、惜しまれることなく再強化手術を初めて受け、成功した人類となり、以後消息を絶った。

これが今度の実験体かね

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