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エンブリオ  作者: あおねこ
ユーラシア大陸での決戦
6/22

1-4 only move on

2025/9/23に各エピソードにタイトルを入れてみました。

厨二心を溢れさせてみました。宜しければ見てやって 下さい。

 エンブリオの落下から約3年、人類の生存圏は凡そ半減していた。

 5つのクレーターから産み出された小型エンブリオは、未だ人類が実用化に成功していないレーザー兵器を使用し、航空兵器を無力化した。制空権を失った人類は海上より陸戦力を輸送し大陸の奪還を試みるが、戦車からの砲撃が直撃しても貫通しない強靭な装甲により陸戦力も苦戦、遅滞戦術に徹することしか出来なかった。


 世界は先進国家の指導者を失い、残された政治家は只の延命ともとれる保身を選択し、大規模な反攻の機会を失った。工業地帯を消失していたことも戦力の補充を遅らせる一因となり、次第に追い込まれていく人類は、徐々に残された国家に対しての期待や希望、信頼という物も失った。


 残された人類の指導者達は致命的なまでに遅きに逸したものの、UNIONと呼称する国際機関を発足。残存する通信網を利用することで大規模反抗を行うための一歩を踏み出した、

 大規模反抗作戦のために抽出された戦力は、既に3年前の1/3となっていた。



「さっさと寝なさい」

「はい」


 マコトはガレージに帰還直後、補助脳を使用した証である赤い目を見た瞬間にロスに引きずられるように医務室へと運ばれた。そして有無を言わさない冷たい声に逆らうことなくベッドに横たわる。


「異常は?」

「特には無いかな」

「MMCVがあの様なんだからそんな訳無いだろう」

「そこはほら、全身機械化してるから外傷は本当にないよ」

「信用出来ない。お前の頭はおかしいからね」


 ロスは手早くベルトでマコトの体をベッドに固定した後にモジュラーを接続し、ターミナルのモニターに表示される情報に目を通していく。


「また馬鹿げた戦闘機動を行ったのか。補助脳の使用歴もある。……お前ほどのパイロットが苦戦する依頼だったのか?小型コロニーの殲滅と聞いていたが」

「まぁ、生きて帰って来れたのはエンブリオの気まぐれのお陰だと思う」

「ほぅ?」

「新型エンブリオが現れた。多分コアの装甲を見たからわかると思うけど物理弾を使ってきた」

「……あの装甲のえぐれ方を見てもしやとは思ったが……」

「既に依頼元には通達してある。27のコアだから直撃にも耐えられたとは思うけど、軽量コアでは持たないかもしれないな」

「右腕に弾丸が残っている。後で解析を掛けてみるとしよう」

「頼んだよ、ロス」

「ああ、任せておけ。ただ、27の整備に暫く時間が掛かるだろう。……今回はライフルまで無くしてきたからな。もし新しい武装が必要なら手配するがどうする?赤字にはなるがな」

「あー……、一応ライフル系が欲しいかな。小型の装甲を抜ける威力があれば型は何でもいいよ。中型以降は切るしかないし」

「分かった。手配しておこう。MMCVに乗らないお前は役立たずだからな。このまま少し休んでいろ。私は上に報告しておく」

「んー。そうしとく」

「おとなしくしておけよ。良いな」


 そういってロスは去ってゆく。キスは無かった。

 多分ロスは怒ってる。すごく。



 日本を拠点とする、軍需産業を基幹とする複合企業KATANA社の本社が置かれる広大な地下施設。ごく一部の幹部以外には秘匿された通信室に置かれる豪奢な机と、そこに置かれた皮張りの椅子に座るスーツ姿の初老の男が一人、その傍らに佇む神経質そうな、眉間に深い皺が刻まれている若い男。

 その二人は豪奢な机に備えられているターミナルに向かっていた。そのモニターには報告に上がっていた旧中国地域での戦闘報告書が表示されている。

 その中でも目を引く項目が映像データで添付されており、神経質そうな男は手に持つ紙の資料を確認した後それを選択、表示させた。


「報告では新型が出たと聞いているが」

「どうやら実弾型のエンブリオとのことです。その件でロスヴァイセ特務主任から報告があります」


 27が提供した画像データはこちらに銃口を向ける新型エンブリオのカットが数枚。被弾時の機体の損傷データおよび、想定される地下侵攻ルートなどが幾つか追記されていた。

 それに目を通した初老の男が視線を神経質そうな男に向けた。


「ふむ、その個体は回収できたのか?」

「いえ、何故か戦場から離脱したようです。……通信来ました」


 短く二人が言葉を交わした後、ターミナルのスピーカーに小さなノイズが乗った。  


『ロスヴァイセです。報告書の新型の件で報告になります』


 その後、やや硬い声のロスの声がスピーカーから流れてくる。

 

「待っていたよ。映像は確認したが本当に実弾を使ってくるのだな」


 初老の男は皮張りの椅子に背を沈ませると平坦な声でそれに答える。


『ええ。幸運なことに弾丸の回収もできました。報告書に追加した資料の通り、ライフル弾というよりもマスケット弾という見た目をしています。材質はエンブリオ鋼が75%以上含有、残りは鉄、銅等の一般的な鉱石群及び岩石でした。今回は重装甲コアに追加装甲を使用していたためコアの大破は免れましたが、恐らく中量、軽量級のコアでは複合鋼板を貫徹できるほどの硬度と初速を持っていると解析しています』

「弾丸を回収できたのは僥倖ですね。とは言え実弾を使ってきたということはこちらのMMCVの装甲を抜く手段を手に入れてきたという事ですか……。厄介な……。こちらも新型の複合装甲を開発しなければ被害が増加しそうですね。今は他の地域にも現れないことを祈るしか無いでしょう」


 ロスの報告に神経質そうな男がそう返すと、手元の資料を確認しながらターミナルを操作する。

 初老の男はその顔にうっすらと笑みを浮かべるとゆっくりと口を開く。


「新型MMCVの稼働を急がせろ。型落ちはばら撒いてやれ。商機だ。エンブリオの確保も今後暫くは難しくなる可能性もある。今のうちにコロニーを襲撃するよう依頼を増やせ。後は実弾に耐えられる装甲の開発を急がせろ。だが何にせよ、あれからの技術提供が最優先だ」

「分かりました。伝達しておきます。……ああ、ロズヴァイセ特務主任、マコト=シライシにも直ぐに参加を促すように。新型経験者は実に貴重だ」


 初老の男の言葉を神経質そうな男は頷きながら書き留めた後、思い出したかのようにロスへ声を掛けた。


『……お言葉ですが、現在独立傭兵マコト=シライシは補助脳使用のオーバーロードで調整中、MMCVは新型との戦闘でコア及び右腕の破損、およびその他のパーツの損耗も激しく整備中です。』


 それに答えるロスの声は音声のみの通信ではあるが、苛立ちが隠されずに現れていた。前時代の映像付きの通信であれば歪んだ表情も見られだろう。だが、その声色に気を悪くする様子もなく初老の男は口角をしっかりと上げた。


「ほう。珍しく狂犬も手傷を負ったか。良いだろう、新型を回す。調整を急げ。情報へのボーナスだ。今は戦力を遊ばせている暇はない。そのために企業も首輪を外しているのだからな。お前も入れ込み過ぎるなよ」

『……有難う御座います。調整を急ぎますが』


 やや気色を滲ませた初老の男の声に、ロスは驚いたようにやや時間を置き、絞りだしたような声で返す。


「多少の時間は構わん。しっかりと餌をくれてやれ。私は戻るぞ」


 初老の男はそう言うと椅子から立ち上がり部屋を出てゆく。残された神経質そうな男は手元の資料に目を落としながら暫くターミナルを操作していたが、手を止める。


「調整中ではありますが新型MMCVのパーツの手配を完了しました。2、3日中にはそちらに届くことでしょう。新型エンブリオの弾丸はこちらに送るようにして下さい。ご苦労様でした、また定時の通信で会いましょう」


 そう言った後、ターミナルはスリープモードに移行され通信は終了した。

茶話会は大事

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