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エンブリオ  作者: あおねこ
ユーラシア大陸での決戦
21/22

1-16 You just have to go

 台北北東にあるUNION施設。その研究区画では急ピッチで新型試作MMCVの起動テストが行われていた。


「防衛部隊の全反応が消失しているんだ!こいつを動かさなきゃ我々もやられるぞ!さっさと手を動かせ!」

「うるせぇよ!工具一つもまともに扱えねぇ奴がこっちに来るんじゃねぇ!」


 怒号が飛び交うガレージ内で、吊るされたコアに次々と各パーツが接続されてゆく。


「接続テストの時間も必要なんだよ!いいからさっさとやれ!」

「だからさっきからやってるだろうが!気が散るからどっか行けよお前は!」


 各パーツ類はUNIONの標準機向けの物と類似している。中量級のオーソドックスなバランス型中量二脚。直線を基調にした、無塗装の無骨なシルエットが照明を浴びて鈍く輝いている。


「新人共とは言え、こっちは7機の二世代型だぞ?小規模のエンブリオなんぞに壊滅させられてたまるものか。何かヤバいのがいるぞ。新型か?大型でも出たのか?」


 追加装甲が次々と貼り付けられ、武装は未だ装着されていないが一先ずのアセンブルが終了した。


「武装はどうするんだよ!そこらに転がってるものでも適当に載せるのか!?」

「ああ!?何を言っているんだ!?今研究所から新型を持ち込んでいるところだ!それまで待て!」

「急げとか待てとかいちいちうるせぇんだよこのナード野郎が!準備位しっかりしてきやがれ!」

「こんな事態になるとはだれも思っていなかっただろう!?」

「それを想定するのがてめぇらの仕事だろうが!?」


 細部のチェックを行い始めるメカニックたちが作業用車両に乗りながら、ガレージの中を所狭しと走り回っている中、二台の大型のトレーラーに載せられた新型ライフルとKATANA社の小型のブレードが到着する。


「良いか、あの新型ライフルはジェネレーターに直結するケーブルがあるから、右腕の可動域を制限してくれ。ケーブルが千切れるからな」

「あぁん!?馬鹿じゃねぇの!?じゃあ角度は!?」

「良い感じにしておけ!角度は30から60で頼んだぞ!」

「誰かこいつ殺せ!!」


 新型ライフルが天井のクレーンで釣り上げられ、慎重に右腕に装着される。ジェネレーターに直結されるケーブルはある程度の遊びはあるが、ブースターに焼かれないようにするため、応急的にワイヤーで各パーツに括り付けられた。長くはもつまい。

 左腕にはKATANA社の小型ブレードが装着された後、調整用の機器が接続され簡易テストが始まる。

 ジェネレーター、ブースター、ラジエーター、FCS等の内装パーツは標準機の物をリファインし搭載されているため、特に接続に問題は見られなかった。

 だが、新型ライフルの接続テストを行うと、無数のエラー表示がモニターに現れる。

 FCSには型番不明のエラーが表示されるが、新型であるため仕方がないのだろう。ただ、要求されるジェネレーター出力は膨大であり、その調整のために各パーツの出力がAIにより落とされる。


「おい、これ欠陥品じゃねぇのか。標準機より出力落ちてんぞ」

「新型が弱い訳ないだろうが!諸元の確認位やってるに決まってるだろ!見せてみろ!……ああ。これは」

「やっぱりてめぇの間違いだろうが!?」


 メカニックではない男の目がモニターに落とされた後、ジェネレーターから配給される出力の行先が確認される。


「この部分は全てカットだ。それで問題は無い」


 そして、コックピット内のパイロットの生存に必要なはずのyolk-system及び、パイロットスーツなどへの電力供給が次々と遮断され、アラートの表示画面が更にモニターを埋め尽くしてゆく。唯一解除されたのはジェネレーターの出力不足の文字だけだ。


「お前……。こんなもんパイロットがくたばるだけだろうが」

「構わないんだよ。これを動かすのは人間ではない。そもそもまともなパイロットなどここにはもういないだろうが」

「おい、まさか」

「そのまさかだよ。実験体を乗せる」

「お前、どうなっても知らないからな」

「どのみち我々にはもう選択肢はない。ここが襲われれば成果も水の泡だ。準備は出来ている。コックピットに括り付けるだけで良い。コードの接続間違いだけはしてくれるなよ?」

「ガキでもしねぇ間違いなんぞする訳無いだろうが。良いんだな、やっちまうぞ」

「勿論だとも。さぁ、そろそろ運ばれてくるはずだ。我々は万が一に備えてデータを持ち出し避難する。遠隔で私たちが起動テストは行うとはいえ、サボるなよ。我々の命が掛かっている」

「くたばれ」

「ではな」


 新型試作MMCVのもとに、台車に載せられた無塗装の金属ケースが運ばれてくる。立方体で、一辺は凡そ50㎝程度と言ったところか。メカニックの男が良く見知ったケーブル類が至る所から伸びており、実験体と言われたものに間違いなかった。


「クソッタレ。ああ、クソッタレだ」


 見た目よりも遥かに重いそれは、丁寧に懸架された後、コックピットに無理矢理詰め込まれた。


「そいつの最終チェックは俺がやる!適当にコックピットに縛り付けておけ!」


 メカニックの男は大声で叫ぶと、タラップを上りコックピットの中へと文字通り潜り込んでいった。

何とか更新。

おじさんたちは書いているのが楽しいです。

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