1-14 do the right
深夜の台湾島、明かりが絶え廃墟となった台北駅より北西の山間部に向かう大通りを、27はブースターから青い焔を噴出させながら、3機の2世代型MMCVを背に低空飛行を続けていた。
『距離が縮まっています。後20秒ほどで交戦距離に入ります』
「……そろそろかな。戦いやすい場所をハイライトしてくれ」
『やや東へ進路を取って下さい。工業地区跡地がありますので、多少のかく乱には役に立つ思われます』
「助かる」
進路を取り直した27は10秒ほどで工業地帯跡地へ到着し、砂煙を上げながら明かりが消えたビルの裏へ機体を半分ほど隠すと、中距離ライフルECL-leopard-03を暗闇の中で輝く3つの赤いブースターの炎の先頭へと向け、即座にフルオートでの射撃を行う。
即座に回避行動を取った3つの赤い光は暗闇へ赤い軌跡を残したかと思うと、断続的に聞こえ続ける鈍い音を周囲に響かせながら、小さな円を描く激しいマズルフラッシュが3つ浮かび上がらせる。
『3機ともRBR社のガトリングを携行しているようです。まともに食らわないよう気を付けて下さい』
「了解」
『USASS社の携行グレネードも確認しています。羨ましいです』
「それ貰ったら消し炭だけどな!」
マコトは大声を上げながら、紙のように引き裂かれてゆくビルから27をクイックブーストで離脱させる。直後に1機から発射されたグレネード弾が鉄骨をむき出しにしたビルに着弾し、爆炎と爆風で倒壊させる。
『流石の打撃力です!』
「あれに興奮すんの!?」
『ツッコむ暇があるとは随分と余裕そうですね』
「ラナがね!?」
『まぁ動きが素人です。問題ないでしょう?』
「とは言え3機相手は油断できないよ」
3機は分散し後退する27を追い立てる様にガトリングの弾を広範囲にばら撒いているが、徐々にクレーンが並ぶ広場に誘導されている事には気付いた様子は無かった。
『間もなくリロードします。2、1、リロード』
「まず1機落とす」
恐らくは本当に「素人」なのだろう。指切りもせず、砲身が焼き付きそうになるまで撃ち続けた3機の持つガトリングが僅かな差を置いて停止する。その一瞬の間に27はクイックブーストを3連続で吹かし、ジグザグに光の軌跡を残しながら戦術マップの一番右に映る「標準機」と呼ばれるUNION製の2脚型に飛び掛かる。
『リロードタイムの連携も取れないような素人如きが私のマコトをどうにか出来るとでも?』
「今日は口悪いな!?」
巨大なドラムマガジンをリロードした他の2機が砲身を27へ向けるが、その先にいる味方機に一瞬躊躇したのだろう。ガトリングの砲身が回転を始めるも弾丸は吐き出されず、直ぐに砲身の回転が停止した。
その隙をマコトは見逃すはずもなく、慌てたように後退を続ける目の前の機体に向かい、左腕のブレードを振りかぶり、振り切る。
エンブリオより容易く標準機はコア前面を深く切り裂かれ、物理的な衝撃により後方に1メートルほど突き飛ばされた後にコントロールを失ったのか倒れ込んだ。
その光景を見届けた2機は冷静さを失ったかのように、その腕に持つガトリングで狂ったように弾丸を撒き散らすが、被弾即行動不能の可能性もある背面を晒している事を理解しているマコトは、それよりも一手早くその場からクイックブーストで離脱しており、弾丸が貫いたのは青い焔の残滓だけだ。
「クソッタレ!なんだあの機動は!!」
その光景に標準機のパイロットは口汚く声を荒げる。
「まともじゃねぇ。あんなにクイックブーストを吹かしていたらミンチになっちまう」
クイックブーストが残す、その出鱈目な青い軌跡が徐々に近づきつつあることに戦慄しながら、2機はガトリングを振り回すことしか出来なかった。
「やべぇ……、やべぇぞ」
その内一人のパイロットがHUDに表示されているガトリングの残弾数が、猛烈な勢いで減少してゆく様に思わず声を上げ、急ぎ通信を行う。
「手を止めてグレネードで狙えるか?」
「ばら撒くのを止めたらすぐに潜られるぞ?さっきもリロードのタイミングで接近されている」
「……どのみち弾も長くは持たん。建物のある所まで後退しながらおびき寄せてグレネードで叩き潰すぞ」
「仕方ねぇ。やるぞ」
二人のパイロットは、何故格闘機が遮蔽物もない場所での戦闘を選んだのかを深く考えることは無かった。
『追い立てられた獲物が取る行動は至極読みやすいですね。敵機、後退開始。右ハンガーにライフル収納、ブレードに武装変更しました。被ロック、回避を』
「了解」
二手に分かれながら蛇行して廃ビル群に向かう「標準機」。
「オーバーブースト」
『出力補助します』
27は背部ブースターから周囲が照らされるほどの光量と、太く激しい白色の焔を撒き散らしながら一瞬で最高速度を突破し、10メートル程の高さまで矢のように飛翔する。その後僅かに間を置いてグレネード弾が2つ着弾し、破壊を撒き散らす。
27はオーバーブーストを停止させるが直ぐにその速度は衰えず、その慣性によって「標準機」の後方へと着地、脚部サブブースターの制御を行い土煙を上げながらドリフトターンを決めると、迫る来る敵機の背後を正面に捉える。
「死にたく……!!」
そのパイロットが己の末路を確信し口を開くが、コア内部を蹂躙する鈍い金属の刃に邪魔をされ、最後まで言い切ることが出来なかった。
27はコアに突き刺した物理ブレードを素早く引き抜くとクイックブーストを連続で発動、もう一機の「標準機」に追いつくと、右、左の順で物理ブレードを振り切り沈黙させる。
『対人の「素人」はこれだから』
「今日はどうしたのさラナ。テンション高めだね」
『新しいキャラ付けを検討しておりました。如何ですか?』
「別に何時ものラナでいいよ……。で、これで全部?」
『そうですか。マコトは何時もの私のことが好きなのですね。知っていました。指定された領域にMMCVの反応はありません。七機撃墜しております。では、仕事を終わらせに行きましょう』
「うっざ……」
27は何事もなかったかのようにブースターに火を灯すと移動を開始した。
標準機とか大好き。でも内装と武装は弄りがち。




