1-11-3 cross fire
小型エンブリオからの激しいレーザー射撃を追い払うように27はクイックブーストを吹かし、左右に機体を振り回しながらも前進を止めようとはしなかった。
右腕部肩の追加装甲を進行方向へと突き出しMMCVのバイタル部分たるコアを守るため、ほぼ横移動――いわゆるカニ歩きをするような姿勢を無理矢理にメイン、サブブースターを使い制御する。
そのため、HUDに表示される各計器の方向は、本来機体正面を正対とするはずの角度から全てが80度近くズレて表示をされている。
人体とは似て非なる骨格、関節可動域を持つMMCVは本来その機体と正対する方向に対しその性能を十全に発揮するよう設計をされている。
1.5世代型のMMCVは旧世代型の戦車にコンセプトを持っているため、砲塔をある程度旋回することが出来ていたが、2世代型MMCVは機体の複雑化や旋回部の脆弱性を補うための装甲を追加することによる重量化を嫌い、それらの機能を完全に取り去った。
故に、機体正面を映し出すメインモニターには遠い海岸線が移り、周囲の状況を表示するためのサブモニターにエンブリオの集団が映り込んでいた。
その距離は1,500メートル程に縮まった。エンブリオからの攻撃は苛烈さを増してゆく。
「こんな時に練習機で乗った1.5世代型の旋回型砲塔が欲しくなるとはね……」
『あんな出来損ないにラナは乗りたくありません』
左腕の中距離ライフルECL-leopard-03はクイックブーストで大きく機体を振り回した際、偶然左腕関節可動域内にエンブリオが収まったタイミングでラナが火器管制を行い弾丸をばら撒くが、不十分な姿勢により反動の制御は十全に発揮出来ずに唯々滑走路のアスファルトを砕くだけだった。
そこにお返しとばかりに中型からのプラズマ弾が、追加装甲からわずかに露出している背部のメインブースター目掛けて発射をされる。
『直撃予測』
ラナの声にマコトはプラズマ弾とは反対へと移動するためにクイックブーストを吹かし進行方向に向かって左側、つまり機体全面方向へと回避行動を取る。その次の瞬間、珍しくラナが声を張り上げた。
『新型からの射撃がきます!この距離での直撃は場所によっては装甲を抜かれる可能性も考えられます!』
「っ!」
プラズマ弾により行動を制限され、殺し間におびき出された27をマコトは再度クイックブーストを2度吹かし、更に機体前方へと大きく移動を回避行動を取ることで新型からの弾丸をやり過ごす。
『回避を!』
ラナの叫び声と同時に、後方に陣取っている新型からの射撃が27の右肩追加装甲へ着弾し、跳弾。空へと一瞬でその姿を消す。
『バランサー正常作動中、被害軽微。距離減衰が酷いようで助かりましたね』
「ジェネレーターが限界に近い!一度退く!」
マコトは機体ダメージがそれほど残っていないことを確認するとクイックブーストを一度だけ吹かし、置き去りにされた旅客機の背後へ27を飛び込ませる。
一瞬止んだエンブリオからの攻撃に鋭く息を吐き、視線を向けたHUDには連続的なクイックブーストの使用によるジェネレーターの容量低下を知らせるサインが表示されていた。
「……奴らの目的は足止めだろうね」
『恐らくは。メイ・メリーへの通信を』
「分かった。……こちら27。現在エンブリオに足止めを食らっている。遅滞戦術と思われる。増援に対して警戒を」
マコトが通信を行っている間にも、旅客機に隠れる27を駆り立てる様に小型エンブリオが移動を始め包囲陣形を取り始める。
『こちらANTELOPE。了解した。再編成できた部隊は各ほうめ………』
メイ・メリーからの通信の最中、小型エンブリオの背後で固定砲台と化した中型からのプラズマ弾が旅客機に向け発射された。
プラズマ弾をエンジン辺りに打ち込まれた旅客機は一瞬にして大きな穴を開けながら融解、その後間もなく残っていた燃料に引火をしたのか、大爆発を起こし通信が乱れる。
「メイ・メリーは何と?」
『再編成の完了の知らせを。それにしてもフケが良いですね。この新型は』
「さすが新型。ジェネの復帰率が優秀だ」
黒煙を噴き上げる旅客機の残骸から100メートルほど離れた滑走路の上で、27はゆらゆらと揺れるように極低空に待機している。
『どうしますか?あまり時間もないと思われます』
「仕方がない。目を回すことになるけれども、オーバーブーストで吶喊してしまおう」
『まぁ、そうなりますか』
「圧倒的な手札不足。我ながら嫌になるね」
『マコトにはラナがいるじゃないですか。そんなこと言うと拗ねますよ』
「補助脳起動!」
マコトは補助脳の起動と同時にオーバーブーストを起動させた。
都合が悪くなると突撃しがち




