表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンブリオ  作者: あおねこ
ユーラシア大陸での決戦
14/22

1-11-2 close in

 ポイントD-1。拠点があるD-5より北方向に約20キロメートルほどの地点。

 海岸沿いにあるかつての高級住宅街はその主たる人間を失い、ただ朽ち果てるだけのゴーストタウンと化していた。整然と立ち並ぶレンガ色の屋根で統一された一軒家と、整備されず伸び放題となった街路樹や芝草の緑がコントラストを作り出している。


 そのポイントD-1へ向かいエンブリオの集団は密集隊形を取りながら時速80キロほどの速度で進行を続けていた。そのエンブリオと哨戒時に交戦した北部防衛部隊は大破した機体を残し、既にポイントD-2へ向けて後退を開始している。

 そしてエンブリオの集団がポイントD-1へ侵入を開始して間もなく、海岸線の方から空気を震わせるような轟音が鳴り響く。


 轟音の発生源、戦艦からの艦砲射撃は予定通りに新型エンブリオの集団に向けて行われ、ほんの少しの間を置いてエンブリオの集団のやや前方へ着弾した。

 砲弾が破壊の力を撒き散らし高級住宅を一瞬にして瓦礫と変え、続けて発射された連装ロケットによる飽和攻撃はエンブリオからのレーザーにより幾つか空中で迎撃をされるが、大半は地上に降り注いだ。

 それにより小型エンブリオ二体が大破したとメイ・メリーからの通信が入ったところでマコトは27をクイックブーストで加速させた。


「こちら27、間もなく交戦開始」


 マコトのHUDには後退を完了した北部防衛部隊がポイントD-2で待機しているのを表示している。


『こちら北部防衛部隊指揮官のラリーだ。ポイントD-2で全力射撃を行った後、後退する』

『こちらANTELOPE。北部防衛部隊は後退後拠点まで退却を。その後は増援への対応に当たるため補給ののち再編成を行いたい。27、小型は逃がしても良い。……厳しいとは思うが新型は抜けさせるな』

「27了解した。……では一度迂回しポイントC-2方面から侵入、側面から突撃を行う」

『傭兵、任せきりで申し訳ないが気を付けてくれ』

「了解した。出来る限りのことはやるつもりだ」


 短いやり取りの後、27は倒壊したハイウェイの上をブースターで低空飛翔しながらその方向をポイントC-2へ向ける。戦術ポイントはリアルタイムに細かく変化をしていくが、D-2の空港辺りにセッティングされる。

 眼下の横転した車両や陥没した高速道路をモニターで眺めながら、マコトはHUDに表示されている北部防衛部隊が後退をするタイミングを計っていた。

 

『こちらANTELOPE。エンブリオがポイントD-2に侵入』

『各小隊射撃開始!』


 メイ・メリーからの通信の後、ラリーの指示で北部防衛部隊の1.5世代型のMMCV小隊達が隊列を組みながら移動を開始、戦術AIの制御のもとに一糸乱れぬ移動射撃を行う。

 砲塔から吐き出された先制のAP弾は空港のターミナルの一部を派手に吹き飛ばしながら先頭の小型エンブリオを二体粉砕し、外れた弾頭が盛大にコンクリート片と砂煙を巻き上げる。

 だがエンブリオ達は直ぐに同胞の残骸を踏み砕きながら砂煙の中から密集陣形で姿を現す。その数小型は残り6体。中型、新型の2体は小型を盾にするようにその後方に位置している。


『もう一度射撃を行った後こちらは後退する!』

「27突入する。交戦開始」


 ラリーの声と同時に再度小隊が後退を始めながら全力射撃を開始、エンブリオも小隊に向かい突撃を行いながらレーザーやプラズマ弾での射撃を開始した。


 空港を挟んで交戦が始まった北部防衛部隊は通信通り徐々に後退を始め、エンブリオがそれを追撃し隊列がやや伸びた瞬間、マコトは27をクイックブーストで加速させるとエンブリオへと突撃を開始する。その距離は5,000メートル程度、右腕の物理ブレードが触れるまでには最低でも50秒程度はかかるだろう。勿論、回避行動なしでの話ではあるのだが。


「ラナ、マップに新型をハイライト表示」

『了解しました。ハイライト終了。エンブリオの注目を浴びています』


 27の接近に気づいた新型が1体隊列を外し単機で移動を開始、その銃口を向ける。


『新型からの攻撃来ます。この距離では脅威度判定は低下していますが油断されないように』

「わかった。戦闘機動開始」


 直後に新型の左腕銃口から弾丸が吐き出されるが、27は突撃を続けながらも連続クイックブーストで機体を左右に振りながらそれを回避する。


『他のエンブリオもこちらにターゲットを向けています。攻撃が来ます』

「ライフルで牽制する。射撃は全て任せた」

『勿論ですマコト。頼りになるラナにお任せください』

「はいはい。期待してますよ」


 27は制御は全てラナに任せて左腕の中距離ライフルECL-leopard-03をエンブリオに向けてトリガーを引く。

 新型を狙ったその弾丸は胸のあたりに着弾した瞬間に跳弾し、空へと消えてゆく。


『新型の装甲は予想よりも厚い様です。生憎こちらの射撃も距離が遠いため十分な効果は上げられません』

「小型よりも大分固いのか?」

『通常のAP弾では効果が薄い様です。APFSDS弾が欲しいところですね』

「切った方が早いよ」

『うまく接近できればですがね』

「まぁ、そうなんでけど」


 マコトとラナのやり取りの間にも小型のエンブリオは新型の前方へ展開し盾となり、続くライフルからのオート射撃の弾丸をまとめてその身で受け止め一体が大破し行動不能となる。中型2体はその後方からプラズマ弾を発射、27は大きく左へ機体を動かしそれを回避した。

 直後にそれを隙と取ったのか、小型からのレーザー射撃も開始する。


「もう一体の新型は……」

『中型の更に後方にいますね。まるでこちらを牽制しているようです』

「……向こうにこちらの手の内がバレてるか」

『そうですね。恐らくは27の行動パターンをそれなりに把握しているのでしょう』

「接近して格闘戦。我ながら単純なものだからね」


 小型からのレーザーが27の装甲を舐める様に削り取っていくのをHUDの機体情報で確認しながら、マコトは距離を詰めるためにクイックブーストを発動させ機体を加速させる。

 距離が縮まるにつれて、エンブリオからの攻撃は激しさを増す。


 エンブリオとの距離は未だ2,000メートル。

格闘機って良いですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ