1-11-1 misson start
旧中国領拠点の一室、マコトにあてがわれた個室。
ベッドとテーブル、椅子、ロッカーのみという独房じみた部屋ではあるが、防衛部隊の兵士たちは共有部屋であることを考えると2世代型のパイロットは多少優遇されているのだろう。士官待遇となっているようだった。
その部屋でマコトはベッドに横たわっており、首から伸びたケーブルは椅子に座るロスの持つ小型端末に繋がっていた。
「ふむ、とりあえずのところ不調は見当たらないな。どうだ?何か自覚症状などはあるか?」
汚れたメカニックスーツに身を包んだロスの視線は小型端末に落とされている。
「いや、別に不調は感じないね」
ベッドに横たわるマコトは首とケーブルをロスに向け、側臥位で壁の方を向いている。
「あんな戦闘を何度も行っているのに何ともないのか?」
「それはちゃんとロスがメンテナンスしてくれてるからね。何時も通りさ」
「補助脳の使用も続いているが……。簡易メンテナンスだけではどうにもならんな」
「うん。そうじゃないと厳しい戦いだから」
「……ああ。全くだ。戦場がこれほど窮屈であるとは知らなかったよ」
「長期間の依頼だからね。短期ミッションならここまで窮屈なことは無いんだけど。まぁ、一度前線配置で慣れちゃうとそうでもないさ」
「当たり前だが戦場は一般人には辛いという事か。……早く帰って風呂に入りたいよ」
「そろそろ依頼された期間は終了する予定だけど……。延長されそうな気もしているよ」
「そうか。しかしそれなら着いて来て良かったと本当に思っているよ。……というか、お前私を置いていたらどうするつもりだったんだ」
「……昔はもっとひどい扱いだったからね。補給なんて来たらラッキーくらいの考えさ。だから何かあったらあったなりに出来ることをするだけさ。今回はロス達がいてくれて本当に良かったと思ってる。整備済みの機体に乗れるのは安心感が違うよ」
「……そうか。前線は恐ろしいな」
ロスはそう言うと小型端末をテーブルに置いた後、マコトの頸椎からケーブルを抜く。
「……それにしてもお前の操縦がおかしいのが良く分かったよ。指揮官のメイ・メリーの狙撃の腕も大概だが」
そして抜いたケーブルを手早く丸めながら半眼でマコトの背中を軽くにらむ。
「俺が相手できるのは中型までだよ。大型は流石に削りきれないからね。」
「向こうのメカニックたちから同情されるような眼を向けられてばかりだよ」
「向こうとは仲良くやれてる?」
「それについては問題ない。今じゃ協力的なほどさ」
「そっか。良かった」
「ああ。お前のお陰だよ」
「そうかな」
「そうとも。お前がここを守っているんだ。体を張ってな」
「そう言ってくれると嬉しいね。頑張った甲斐がある」
「誇って良い」
「ありがとう」
マコトはそう言うと体をゆっくりと起こし、ベッドに腰掛ける。
「じゃあ機体の整備に行ってくる」
ロスはそう言うとマコトに一度キスをした後、テーブルに置いてある小型端末を回収し部屋を出て行った。
マコトがミッションを受諾してから30日目。つまり期間を延期して2日後に5度目の襲撃はやってきた。
『こちら北部防衛部隊。ポイントD-1に向かっている新型エンブリオを含む集団発見!これより交戦する!』
拠点内に防衛部隊からの通信が入った直後に警報が鳴り響くと、後方支援要員は慣れた動きで移動装甲車へと乗り込み、休憩中だった防衛部隊職員は慌ただしく自分の持ち場に駆けてゆく。
マコトはそれを横目で見ながらコックピットの中で戦闘システムを起動させ、ブースターに火を入れる。
『こちらANTELOPE。戦艦は直ちに砲撃開始、その後拠点防衛部隊を残し全部隊は防衛ラインへ。27は戦艦からの砲撃後に強襲を頼みたい。新型が確認されており厳しいとは思うが……、やってくれるか』
「27了解」
『……よろしく頼む。こちらも狙撃ポイントに到着後援護を行う』
「27了解。出撃する」
マコトは淡々とそう告げた後27をポイントD-1へ向け発進させた。
HUDのマップに表示されているエンブリオは小型10体、中型2体、新型2体。規模としては今までの襲撃と比べるとかなり少ない。
マコトは間違いなく現れるだろう増援の事を考え、思わず舌打ちする。
可能な限り早く撃退をしなければ挟撃などの危険に晒されてしまうが、新型が2体もいるのであればそう簡単にはいかないだろう。
幸いなのは交戦経験があることだろう。
北部防衛部隊の味方マーカーは既にいくつか数を減らしていた。
撃破目標が少ないミッションは増援を疑え
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