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音楽スタジオと登山ショップ

久しぶりの土曜日は天気が悪く、久しぶりのアウトドアライフの休日となった。その日の午前中、水城涼真は執筆活動に追われていると突然チャイムが鳴った。水城涼真が玄関のドアを開けると、目の前に若宮朱莉が立っていた。


水城涼真「なんだ朱莉ちゃんやん。どないしたん?」

若宮朱莉「涼真さんにちょっとご相談がありまして・・・お邪魔してもよろしいですか?」

水城涼真「俺に相談?まあいいや、とりあえずあがってくれてええよ」

若宮朱莉「ありがとうございます」


若宮朱莉はドアを閉めて水城涼真の部屋に入ると、テーブルの右側に座り込んだ。少し落ち着かない感じだったが、いきなり話をきりだした。


若宮朱莉「涼真さんってたしかバンドを組んでいらっしゃったとかで、パートはボーカルとギターでしたよね?」

水城涼真「バンドやってたよ。昔、俺は作曲家になりたくて音楽事務所にいたことはあったけど、でもそれはもう数年前の話だよ」

若宮朱莉「わたしのデビュー曲をお聞きになったことはありますか?」

水城涼真「申し訳ないんだけど、俺は洋楽にしかほとんど興味がないんだよ。アイドルの曲なんて聴いたこともないし朱莉ちゃんのデビュー曲も知らない」

若宮朱莉「わたし、ニューシングルを出すことになりまして、それで涼真さんにわたしの歌を聴いてもらって感想をいただけないかとお願いにきました」

水城涼真「俺はプロのミュージシャンでもなんでもないし、そんなの朱莉ちゃんの周りにたくさんおるでしょ?」

若宮朱莉「涼真さんの作ったオリジナル曲をホームページで聞かせていただきました。音楽にも詳しい人なんだと思ったので是非お願いしたいと思ったのです」

水城涼真「歌のことなら妹の志帆に聞いたほうがええと思うんやけどな」

若宮朱莉「妹さんは歌が上手なんですか?」


すると、水城涼真はパソコンの画面を触って音楽をかけた。少し前に涼真がある音楽アーティストのカバー曲をレコーディングして妹の志帆に歌わせた英語のバラード曲だった。


若宮朱莉「これ、もしかして妹さんが歌っているのですか?」

水城涼真「そうや。妹はプロ並みの歌唱力があるんよ。バンドとかそういうのには興味ないみたいやけどな」

若宮朱莉「妹さん、めちゃくちゃ歌が上手じゃないですか!!声も綺麗でプロ顔負けだと思いますよ!!!」

水城涼真「俺は妹の歌を自慢するために聴かせたんやなくて、朱莉ちゃんはCDを売るほどのプロでしょ?こんなのに驚いていたらあかんよ」

若宮朱莉「でも、わたしはとてもこの妹さんのような歌唱力があるとは思えません」

水城涼真「だったら朱莉ちゃんの歌を聴くために今から音楽スタジオでも行ってみよか?ちょうど執筆活動も一息ついたところやしな」

若宮朱莉「わかりました」

水城涼真「あと、帰りに登山ショップに行って、沢装備を購入してほしいって思ってるからお金も持ってきてほしい」


若宮朱莉は「すぐに準備してきます」というと、水城涼真の部屋を出た。水城涼真は服を着替えて押し入れにしまい込んでいたエレキギターと音楽器材を出してきた。そして、大きなカバンに詰め込んで部屋を出た。そして、外に出て車のトランクに音楽器材を詰め込んでいると、サングラスをかけた若宮朱莉がやってきた。


若宮朱莉「おまたせしました」

水城涼真「助手席に乗ってさっさと行こうか」

若宮朱莉「音楽スタジオってここから近いのでしょうか?」

水城涼真「ちょうど、前に行った登山ショップの近くにあるんよ。既に電話して予約しといたからさっさと行こう」


車に乗って音楽スタジオへの駐車場に到着して、水城涼真は音楽器材をトランクから降ろした。ギターを担ぐのも数年ぶりのことだったが、登山に慣れているせいか、そこまで重さを感じなかった。そして、音楽スタジオに入ると店員さんに「予約していた水城です」と言った。すると、店員さんは「少し早いですがBスタジオは空いているのでどうぞ」と言った。若宮朱莉とBスタジオに入って、水城涼真は音楽器材のセッティングをはじめた。そしてセッティングが完了するとミキサーでマイクの音を調整した。水城涼真は「エコーはほとんど落とすので、ちゃんとお腹から声を出して歌ってほしい」と言った。若宮朱莉は「はい!」と答えてマイクを手に持った。


水城涼真「今からミドルビートで適当な音を出して俺がギターを弾くから、それに合わせて朱莉ちゃんは適当に歌ってみてほしい。歌詞は自由でいいけど、テーマは登山にしとこうか」

若宮朱莉「思いつきで歌詞をつけて歌うのですか?」

水城涼真「ジャムセッション。つまり作曲の基本だよ。適当に音に合わせて歌ってみてほしい」

若宮朱莉「わかりました。やってみます!」


ミドルビートのドラムとベース音がなって、その音に合わせてギターを弾き出した水城涼真は若宮朱莉が歌い出すのを待っていた。すると若宮朱莉は「自然の中の神秘~コバルトブルーの沢に巨大な岩~」などと適当な歌詞で音に合わせて歌い出した。途中で歌詞が思いつかなくなって無言になったりしたが、ジャムセッションは5分ほど続いた。そして水城涼真は音楽を止めた。


若宮朱莉「こういうことしたことがありませんでした。やはり作曲って難しいですね」

水城涼真「それより朱莉ちゃんの歌唱力のほうが問題やわ。あのね、正直ベースに答えてほしいんやけど、歌ってる時、周りの音を聴いてないやろ?」

若宮朱莉「歌うことに必死になってしまって、周りの音なんて耳に入ってこないです」

水城涼真「朱莉ちゃんは自分が前に出ることしか考えてない歌い方なんよ。せっかくベースが前に出てきて音を出してるのに、それをかき消すような感じといえばええんかな。ちゃんと周りの楽曲の音を聴きながら、ここでドラムが出てきた、ギターが出てきたって時は、声を小さくするとか、ボーカルだけがなんでも一番やないってことをよく覚えておくことやね」

若宮朱莉「はい。よく覚えておきます!」

水城涼真「音楽ってのはボーカルだけじゃなくて、全ての楽曲が一体にならないといい曲なんてでけへんよ。今度はそれを意識して歌ってみて!」

若宮朱莉「じゃあ、さっきのをもう一度お願いします。今度は意識して歌ってみます」


さっきと同じ曲でジャムセッションをはじめた。最初のうちは全く歌わなかったものの、楽曲の音を意識しながら若宮朱莉は歌い出した。音楽が一体となりはじめて、水城涼真も音楽にのりはじめた。若宮朱莉もだんだん慣れてきたようで、適当な歌詞をつけながらだんだんノリノリになって歌っていた。5分以上のジャムセッションが続いてネタが切れたので音楽を止めた。


水城涼真「朱莉ちゃん、かなりよくなったやん。ちゃんと他の楽曲も聴けるようになってきてるし、その調子やで」

若宮朱莉「ありがとうございます。わたしもコツが掴めてきた気がしました。でも涼真さんの妹さんのような歌唱力にはとてもなれそうにありません」

水城涼真「妹の歌唱力や声は天性のものやと思ったほうがええ。あいつは昔、ピアノを習ってたけど、ボーカルの練習なんてしたこともないんよ」

若宮朱莉「生まれ持った才能ということですね。わかりました」


スタジオの時間が終わりに近づいたので水城涼真は音楽器材を片付けてさっさとBスタジオから出た。料金を支払うと、さっさと車に乗り込んで次なる登山ショップへ行くことにした。そこから5分ほど車を走らせると登山ショップに到着して、さっさと車を降りた。


水城涼真「今日は沢用のザック、沢用グローブ、フェルト沢靴、沢用のゲイター、防寒着を買ってほしいんよ」

若宮朱莉「わかりました」

水城涼真「沢用のザックはそんなに高いものでなくてええ」


登山ショップの店員にそれぞれ揃えてもらって若宮朱莉は沢装備を揃えることになった。水城涼真は「一応、ドライパックも2つほど買っといたほうがええわ」といって、ドライパックの10リットルと15リットルの二つを買い物カゴに入れた。レジにいって合計金額が5万円弱だったが、若宮朱莉は惜しむことなく財布からお金を出した。大きな紙袋を二つ持った若宮朱莉はサングラスをつけるのを忘れて登山ショップを出た。しかし、これが後々になって面倒なことになるとは予想していなかった。


若宮朱莉「いよいよ沢デビューさせていただけるんですね」

水城涼真「夏は沢がメインやからね」


そうして、二人は車に乗ってアパートへ戻っていくことになった。

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