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突然のアイドル訪問

どうもに春という季節は好きになれない。積雪期が終わるという淋しさもあるが、新しい時期を迎えるということで世間が騒がしくなっているのがどうにも肌に合わない。そんな時期であっても、好みに関係なく仕事はしないといけない。

 

俺の名は水城涼真。今年で24歳になるフリーのアウトドア専門のライターで大阪の北部に住んでいる。子供の頃からプロのダイバーだった父親と、登山家である母親に連れられて、あらゆる山や沢、海に連れられてアウトドアの技術を学ばされてきた。しかし、両親も5年前に交通事故により他界した。その後、俺は大学を中退して、両親が残してくれたこのアパートで家賃収入とアウトドア専門の執筆活動でなんとか生計を立てている。しかし、俺の妹である志帆は今年で高校3年生になり、受験のシーズンを迎える。志帆は遠慮して、進学せずに就職すると言ってくれたのだが、大学か専門学校を卒業するまでは、俺が面倒を見ると約束して今に至っている。

妹の志帆は俺と違ってアウトドアには全く興味がなく、昔から両親と出かけることを嫌がっていた。今では部屋で映画やドラマを見たり、時には学校の友達とカラオケやショッピングに行ったりするのが楽しいようで、運動もあまり好きではないようだ。そんな妹だが、どうやら美容師になりたいようだ。


ところで、水城涼真はベリーショートの黒髪に少しつりあがった目に低めの鼻、小さな唇の小顔で身長は170センチのスリム体型で童顔に見られることが多い。普段は口数が少なくクールな印象を持たれがちだが、アウトドアの話になると夢中になって口数が増えてしまうのが特徴的。その妹である志帆は少し茶髪のウェーブのかかったミディアムヘア、兄とよく似てつりあがった目に低めの鼻、小さな唇の小顔で身長は155センチ少しのスリム体型をしている。普段からオシャレやメイクに気を配っていて、男性から少しは人気があるという。


桜も満開の時期が過ぎて、世間も落ち着きだした4月の中旬頃のこと。昼食を終えて一息ついた頃に部屋のチャイムが鳴った。こんな時間に訪れてくるのは、雑誌の編集部の人か、何かの勧誘に来た人にしか思えない。俺は玄関前で「はい」と言って、恐る恐るドアを開いた。すると、そこに立っていたのは、黒のブラウスと赤いチェックのスカートに身を包み、サラサラの黒髪にポニーテールで二重まぶたをした大きな目に小鼻、シャープな顔立ちをして身長は155センチ少しといったところだろうか、マスクをしているのでよくわからない部分もあったが、かなりスリムである女性であった。その女性はチョコレート色をした大き目のザックを背負って、薄いピンクのスーツケースを持っていた。そして、その女性が突然「水城涼真先生でしょうか?」と大きな声で聞いてきた。


水城涼真「先生?・・・俺は先生なんて呼ばれたことありませんけど、あなた、誰なんですか?」


そうすると、その女性は突然マスクを外して「女優の若宮朱莉です」と答えた。


水城涼真「女優の若宮朱莉?」

若宮朱莉「はい!!雑誌やテレビによく出ているのですが、もしかしてわたしのこと知りませんか?」

水城涼真「申し訳ないんだけど、俺はテレビなんてほとんど見ないから全くわからんのやけど、もしかして有名人なん?」

若宮朱莉「そうですね。これでも今年のトレンドランキング第一位に選ばれました」

水城涼真「ふーん・・・それで俺になんかようなん?」

若宮朱莉「あ、あの・・・実は水城涼真先生に弟子入りさせていただきたいと思ってお伺いしました」

水城涼真「はぁ???弟子入りって何の?」

若宮朱莉「アウトドアの弟子入りです!!」

水城涼真「意味が全くわからんのやけど、なんかの道場と勘違いしてないか?」

若宮朱莉「いえ、水城涼真先生のアウトドア技術を学ばせていただきながら、仲間に入れてほしいのです!!」

水城涼真「あのな、そもそも、あんたは売れっ子のアイドルスターとちゃうん?アウトドアなんてしてる時間なんてないやろ?」

若宮朱莉「お仕事の時間なら調整します!それに東京から大阪へ引越しする準備もできています!!」

水城涼真「はあ?引越しする準備?まさか、俺らの仲間に入るためじゃないやろな?」

若宮朱莉「もちろん、その通りですよ。わたし、水城涼真先生と一緒にアウトドアライフを楽しむような人生を送りたいのです!」


その時、階段から駆け上がってくる音が聞こえてきた。それは妹の志帆が学校から帰ってきて玄関前に現れたのだ。


水城志帆「お兄、今夜の夕飯だけど・・・って何してるん?」

水城涼真「いや、ちょっと面倒な訪問者がきて困ってるところなんよ」

水城志帆「あれ?この女の人、もしかして女優の若宮朱莉さんとちゃうん?」

若宮朱莉「はい!!若宮朱莉です。水城涼真先生の妹さんですか?よろしくお願いします!!」

水城志帆「水城涼真先生って・・・なんでこんな売れっ子のアイドルスターがお兄のところに来たん?」

水城涼真「志帆、俺もよくわからんのやけど、弟子入りとか仲間になりたいとかわけのかわからんこと言われて困ってるところなんよ」

水城志帆「この人、かなりの有名人やし、今ここにいることが知れたら大変なことになるで!」

水城涼真「そうなん?どないしよかな!?・・・えっと、若宮朱莉さんだっけ!?とりあえずうちにあがってもらえる?」

若宮朱莉「はい!!」


水城涼真はそう言って若宮朱莉を自分の部屋へ入れた。妹の水城志帆はお茶の用意をしてくるといって、1階にある自分の家へと戻っていった。テレビなんかほとんど見ない水城涼真にとって、売れっ子のアイドルスターの存在すら知らないのだが、とにかく話を聴いてみることにした。


部屋に入るととりあえず若宮朱莉を丸い木のテーブルに座らせた。テーブルの向かい側に座った水城涼真は少し落ち着かない様子で、話の切り出し方を考えていた。


水城涼真「えっと、俺はテレビなんてほとんど見ないし、芸能界とかよくわからんのやけど、あんたは全国的な売れっ子のアイドルスターなんよね?」

若宮朱莉「そうかもしれませんね。それが何か問題ありますか?」

水城涼真「それやのに、俺に弟子入りしたいとかアウトドアの仲間に入れてほしいとか、どういうつもり言ってるん?」

若宮朱莉「先ほども言いましたが、わたし、水城涼真先生の記事を読んでいて、こんな人とアウトドアライフを楽しんでいく人生を送りたいと思っています」

水城涼真「俺は信頼できる仲間と一緒にアウトドアライフを楽しんでいきたいとは思ってるけど、弟子入りとかそういうのは全く考えてないんよ」

若宮朱莉「だったらわたしをその仲間に入れていただけないでしょうか?」

水城涼真「俺のやってることわかってる?ロッククライミングしてロープワーク訓練をしたり、危険なナイトハイクもしてるし、夏は沢登りやスキンダイビング、登山も普通のルートじゃなくて、秘境を求めて、誰も行かないようなバリエーションルートを歩いたり、冬はバックカントリースキーや雪山登山をメインにしてる。どれも命がけでやってるんよ。雑誌に掲載している記事は初心者向けなんだよ。だから若宮朱莉さんが思っているような感じじゃないんよ」

若宮朱莉「そうなんですね。そのお話を聞いてますます仲間に入れていただきたいと思いました。まだまだ初心者ではありますが、どうにか水城涼真のアウトドア仲間に入れていただけないでしょうか?」

水城涼真「本当にわかってるんか?命がけでやってることやのに、なんでそう思えるん?」

若宮朱莉「わたしは自然が大好きなのですが、それよりも自然の中で感じる非日常的な感覚を体験することを求めています。たしかにわたしは売れっ子のアイドルかもしれませんが、だからといって自分が特別な人間だとは思っていません。わたしは芸能界という世界に存在していますが、大自然の中での自由を求めています」


こんな話を真剣な眼差しで話す若宮朱莉に水城涼真は心が打たれた気分になった。今まで数少ない仲間うちでの話でしていたことを語っていたが、他にこんなことを言う人物はいなかったのだ。


水城涼真「あんたの話はわかったけど、俺らと一緒に行動して命を落とす覚悟はある?それに、俺らがやってることは普通じゃなくて、かなりしんどいこともやるけど、そんな覚悟もある?」

若宮朱莉「もちろんです!!どんなことでも耐えてみせます!!」


そんな話をしていると部屋のドアがノックされる音が聞こえた。水城涼真は「どうぞ」というと、ドアが開いて妹の水城志帆がトレイにコーヒーを入れたカップを二つ持って入ってきた。水城志帆は若宮朱莉のほうを見ながら「はじめまして、妹の志帆といいます」といって、若宮朱莉が座っているテーブルの前にコーヒーカップを置いた。すると若宮朱莉は「志帆さんですね。覚えました。今後ともよろしくお願いします」と言った。


水城志帆「お兄、結局、若宮さんは何しに来たん?」

水城涼真「簡単にいうたら、俺らのアウトドア活動の仲間に入れてほしいって言われたんよ」

水城志帆「ええーーー!!でも、若宮さんは全国的に有名なアイドルスターやし、東京に住んでるんとちがうん?」

水城涼真「そうなんやけど、なんか大阪に引越しするとか言ってるんよ」

水城志帆「それってほんまなん!?」

若宮朱莉「はい!もう東京の家は引き払らってきました!!」

水城志帆「うわーーーすごい決断して大阪に来たんやな。お兄、どないするつもりなん?」

水城涼真「そんなんこっちが聞きたいわ!若宮さん、あんた、住むところとか今後どないするつもりなん?」

若宮朱莉「ここのアパートって入居者募集の看板がありましたけど、まだ空き部屋はありますか?」

水城涼真「空き部屋はあるけど、あんたみたいな有名人がこんなボロアパートに住むつもりなん?」

若宮朱莉「わたしは寝る場所があれば十分ですので大丈夫です!」

水城志帆「それより若宮さん、芸能活動はどないするつもりなんですか?東京での仕事がいっぱいあるんとちゃいます?」

若宮朱莉「東京での仕事は減らしてもらうつもりです。必要であれば新幹線で東京に行きますし、大阪での仕事を増やしてもらうつもりです」

水城志帆「それでやけど、お兄は若宮さんをアウトドア仲間に入れるつもりなん?」

水城涼真「この若宮さんの意気込みは気に入ったんやけど、仲間に入れるかどうかは今すぐ決められへんのよ。まずは簡単な登山に連れていくぐらいやったら別に構わんけどな」

若宮朱莉「それでも構いません。わたしは水城涼真先生のアウトドア仲間になれるように頑張っていきます!!」

水城涼真「それと水城涼真先生と呼ぶのはやめてくれへんかな?俺は先生やないし、仲間になるつもりやったら涼真さんとか他の呼び方があるやん」

若宮朱莉「では、涼真さんと呼ばせていただきますね」


その後、アパートの賃貸契約の話になり、若宮朱莉は一階の103号室に入居することになった。もちろん、騒ぎにならないように有名なアイドルスターが住んでいるということは近隣の住民に気づかれないようにするという条件付きの契約にした。

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