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五十四話 死に薔薇の騎士Ⅶ

ーー農村内部。


 革鎧を入念に着込んだ流種が言う。


「なんなんだ…この有り様は…」


 農村の内部の建物は特別酷い有様ではなかった。

 ぽつぽつと立ち並んだ土壁でできた建造物と、畑。

 そのどれもが特に破壊されることも、汚されることもなく放置されていた。


 しかし、革鎧を着込んだ流種が困惑の色を示したものは建物ではなくそこにいる者達の容貌だった。


「…なんで……なんで、アイツらどう見てもスケルトンだよな…?」


 壊れた柵から見えた景色は、鍬や万能などを持ったスケルトンが力なく空いた穴を、穴の先にいる流種たちを見つめるーー見つめると言っても眼球はないーー光景だった。


「…まるで、農民たちがそのままスケルトンにされたような…」


 その時、一番穴に近い位置にいた流種が気づいた。


「おい、中には弓を持ったやつもいるぞ」


「よくみろ、弓だけじゃねぇ。湾刀や槍を持った奴もいやがる。ありゃ一体なんだ?」


「さっきの矢の数からして、弓持ちの数はこれだけじゃなさそうだな…しかしこんな数のスケルトン、どうやって用意した…?」


 流種たちは口々に疑問を口にする。


 スケルトンは魔物だ。そして、スケルトンの自然発生条件はーー


「ーーその地が汚れていること、龍などの災害によってもたらされる怨嗟、そして大量の死体が無造作に腐り果てている場所…。僕が思うにこの場所はそのどれにも適してはいない。デスサイズ君もそう言っている」


 デスサイズと呼ばれた大鎌をキラリと光らせながら黒衣の上種が言う。


「…自然発生を除けば、相手にスケルトンを召喚できる術者がいる…? しかし、僕が思うに時間制限のある召喚術をある種の閉鎖空間であるこの農村内で使うことのメリットが浮かばない…。召喚の時間が切れるまで外で待っていれば勝手に相手の勢力を無力化できるのだから…」


 ぶつぶつと呟きながら思考を巡らせる上種の近くで、誰かがつぶやいた。


「…生者をアンデッドに成れ果てさせる、中域の呪術<怨嗟漬けの病葉>か」


 そうつぶやいたのは、くすんだ色の薔薇を身に纏いし騎士。


「君は…その装備、死に薔薇の騎士だね。やはり征伐に参加していたんだ。…それで、君の先の言葉からしてこの状況の手がかりを何か知っているみたいだけど、詳しく聞かせてくれるかい?」


 敵の目の前で無防備に会話をするなどもってのほかであるが、スケルトンたちは村の外には出られないらしくただ瞳のない眼窩でこちらを見ることしかできないようだ。


「…私が知るのは中域の呪詛に<怨嗟漬けの病葉>という、生きとし生けるものに不浄なる魂を刻みつけ従属させるものがあるというくらいだ」


 巨大な岩が地の底で転がるかのような、恐ろしく低い声。

 その装いも相まって、死に薔薇の騎士は周囲の者にどこかしれぬ恐怖を感じさせる。

 

 ギジウス・バイトもその一匹で、若干毛が逆立っていることに気がついた。


「…死に薔薇の騎士よ、その呪詛は召喚と同じように時間に制限があったりするものなのかい?」


「…いや、時間による制限はない。ただ、術者が離れすぎるとアンデッド達は制御を失い、やみくもに生者を襲いだす」


 淡々とそう述べる死に薔薇の騎士の言葉には妙な信頼感があった。


「なるほど、だからガイコツ達は農村から出てこようとしない、できないように命令されているのか」


 スケルトンの発生原因は理解した。


「待て、じゃあこのスケルトン達はーー」


「…あぁ、農民達と群盗だろうな」


 

雪も溶け始め、少しずつ暖かくなってきた気がしますね(*´ー`*人)

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