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五十一話 死に薔薇の騎士Ⅳ

ーー占領された農村を取り囲むように、一定の間隔で斥候として出された流種。


 その眼前には高い柵に囲まれた農村と、やぐらから見張る群盗の一匹の姿があった。


 ゲンリッド達率いる征伐部隊は占領村からギリギリ見えない場所に輓獣をとめ、草木に忍びながら、徐々に群盗のいる占領村へと足を進めていた。


「術者はこの辺りで待機。戦士は半分ほど、ギジウス・バイトに従ってこちらから見た、村の背後へ。もう半分はワード・レーズガンとともに術者達の守りを。合図とともに後背部隊とともに村と農民の奪還に移れ。…酷なことを言うが、今回の目的は群盗を征伐することだ。…農民の命のことはあまり考えないでほしい…」


 農民の命を優先して群盗を取り逃がし、それが基となって大きな事件に発展する可能性は十分に考えられる。芽は摘んでおくに限るのだ。そして、小さな犠牲で全体の危機を逃れられるのであれば、それは必要な犠牲なのあろう。


(という考えは、非情なのだろうな)


「ゲンリッド殿、それは仕方ないことだ。悲観すべきではない。そうデスサイズ君も言っている。…早々に合図をくれると助かる」


「……そうだな、すまないギジウス。私は弱気になっていたようだ。ギジウス、検討を祈る。レーズガン殿、すまないが守りを頼みます」


「……年寄りの仕事。最善を尽くそう」


「ではゲンリッド、また後で落ち合おう。ギジウス殿、ゲンリッドは任せましたよ」


「あぁ」

「…任された」


 励まされてもなお、必要な犠牲が出るということに自己嫌悪をしつつ、ゲンリッドは小さくなっていく戦士達の背中を眺めていた。



ーー太陽が頂点より傾き、狼顔にできる影が伸び始めた頃、準備は整った。


「さあ、術者達よ。まずはあの柵とやぐらを破壊し、近接部隊が近づくための経路を確保しなくてはならない。“炎”もしくは“雷”の魔術を行使できる者は率先して柵を破壊してくれ。私がやぐらをやる」


 そういうと、息を潜めながらも勇志達は了解の意を示した。


 初撃はゲンリッドが行うことは、すでに決まっている。


 ゲンリッドが錫でできた杖を構えると、たちまち小さな歓声が上がった。

 それは期待の現れ。アウトメコン騎士団所属、灰燼のゲンリッドの魔術が望めると知った、狩人の集いに身を寄せる術者から上がったものだった。


「さぁ、中域“炎”魔術・チェインスペルーー<フランドアロー>ッ!」


 詠唱完了後、両手に構えた杖の先から、人間一人分ほどの大きさの、矢の形状をした炎が姿を顕にし、それに周囲が感嘆の音をあげる間もなく一直線に飛んでいく。そしてそれを追うように、同じ炎の矢が4本。系5本が同じ軌道で飛んでいった。

 圧倒的な熱量を誇る矢は全てやぐらに命中し、見えはしないが、やぐらにいた全ての賊を焼き殺した。


 チェインスペルとはそのスペルを使用して行使した魔術を、クールタイムなしで機関銃のように継続して、連続して打ち続けられるといったものだ。精神力は撃った魔術の分だけ消費するが、魔術さえあれば永久的に同じ魔術を撃ち続けることが可能だ。


 灰燼のゲンリッドの二つ名は、この、炎系魔術による絨毯爆撃によって、全てが塵になることからつけられた。


「さあ柵に魔術を叩き込め! 隙間から出てきた群盗は戦士達に任せるぞ!」


昨日も体調不良で寝込んでおりました。

健康第一(*´ー`*人)

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