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四十一話 神の器は死を招く

 アウトメコン騎士団で中級騎士の地位につくデルグリは、落ち着きがなく、素行も悪ければ君主に対する忠誠もあまり持ち合わせていない。騎士団で最も取るに足らない存在であると言っても過言ではないだろう。

 さらにいうのであれば剣の腕も、騎士団に席を置けるほどのものかと問われれば、簡単に首を縦に振るのは難しいといった具合である。


 そんなデルグリが騎士団に入団できたのは彼の出自に大きく関係している。

 デリグリの本名はデルグリ・ドネショバ。姓と名を持つことから貴族であると察しがつく。彼は身分と金の力で半ば無理やり騎士団に入団したのである。

 これは長い歴史を持つアウトメコン騎士団でも珍しい例であり、いかにデルグリが出資したのかが想像できるであろう。


 そんなデルグリはマヨ・メコンからの帰りの最中に今回、何も成果の得られなかったことにがっかりしていた。


「はぁ…。なぜあの砦跡には何一つとして金になるものが残っていないのだ…」


「あー、瓦礫で埋もれていたっすからねー」


「そんな日もありますぜ」


「ですなぁ」


 デルグリの半ば独り言のような言葉に反応して声をかけてきた3匹は、デルグリが金を見せたらよってきた蛆虫だ。


ーーベッゼ

 薄水色の毛並みが自慢の中級騎士で、体力のみ自信がある流種。


ーーガウレッド

 強面の屈強な流種。一見無関心そうだが、実際は観察に重きを置く慎重派な流種である。


ーーモロフ

 胡散臭さが常に匂う中級騎士。生まれは農家で金に飢えていたためか、金に対する反応に人一倍敏感である。この4匹の中では最も年上の流種である。人間で例えるなら初老といった頃合いだろうか。


 この三人は騎士団の中で「デルグリの尻尾」と呼ばれており、それ即ち金魚のフンと同義であるとすら言われていた。


「お前たちがもっと真剣に探せば見つかったかもしれんが…まあいい。それより、どうして私がマヨ・メコンからアウトメコンまで歩かねばならんのだ。

 まさか、騎士団には馬車を買う金もないのか!」


 貧乏騎士団が、と喚き散らかすデルグリを他の騎士たちは一貫して無視する。もちろん心には嵐が吹き荒れているが、それでも大家の出自であるデルグリに口答えすることで自分の地位を脅かすこととなるのはデルグリの性格上、想像に難くない。

 いくら騎士団といえど正義より我が身なのだ。


「なにもかもがついていない! ッあークソ! せめてあの人間が薔薇の鎧を受け渡して入れば…ッのガキにしろ、砦にしろなんでこんなについていないんだ!」


「あー、人間のせいっすね、たぶん」


「そんな日もありますぜ」


「ですなぁ」


 列をなして整然と歩くアウトメコン騎士と、そこに参列するうるさい流種とその取り巻きたちの滑稽な猿芝居は騎士たちの本拠であるアウトメコンにつくまで延々と続いたという。




 ーー騎士団がアウトメコンに凶報をもたらしてから3日。

 アウトメコンで騎士団は流種の砦の悲劇と立て続けに起きたルヂの村の悪魔襲撃の後処理に酷く追われていた。

 残酷にもルヂの村の村民のほとんどが鏖殺。家もかろうじて形を保っているものから全壊しているものまで、様々である。


 悪魔襲撃の解決に大きく貢献した狩人の集いに感謝状と御礼金の支払い。

 次に役所と連携して家を失った村民たちの住居を確保が最優先事項として挙がり、騎士団は休む間もなく、その役目を遂行することとなった。


短いですが投下(*´ー`*人)つぎから、また残酷なシーンになるやもしれません。楽しみ楽しみ。

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