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三十七話 悪魔の金稼ぎ

 狩人の集いのロビーに死んだ薔薇の全身鎧を身に纏った死に薔薇の騎士がいた。


「…はたして、どれが最も効率の良い依頼なのだろうか」


 死に薔薇の騎士は眼前にある掲示板に下げられた木簡を凝視しては首を傾げ、また別の木管を見ては首を傾げるといった不思議な行動をしていた。


「フェルベール、良さそうな依頼は、見つかりましたか?」


 その奇行を傍観することに耐えきれなくなった少女は思わず死に薔薇の騎士に声をかけた。


「…いや、どれが良いのか判別できない…。申し訳ない」


「フェルベールさんってかなり慎重派ですよねー」


 そういって2者の会話に割り込んできたのは長金髪を後ろで束ねた、灰色の丈の長いローブを着た少女だ。


「…アミュラか。お前は粗がすぎる」


「あの、はやく依頼、決めませんか?」


 メレストフェリスがそう言うと、他の2者はメレストフェリスに謝り、黙って依頼の選抜に徹し始めた。

 これは、人間の国へ行くための金策の一環で、狩人の集いの依頼を探しにきているのだ。

 狩人の集いに貼られる依頼はアウトメコンのみならず、マヨ・メコンやセレー・メコン、アンバ・メコンなどからも寄せられる。

 依頼者の層は国民が主だが、時に国や街から特別依頼が出されることもある。


「あー、これなんて結構いいんじゃないですかねー?」


 そういってアミュラが指を刺した先にある木簡には『魔粉金の納品 数量は1つからでも』と書かれていた。

 メレストフェリスがアミュラの後ろから顔を出し、その指先を見つめる。

 

「報酬は…一袋5000フリム、ですか。悪く無いですね」


 メレストフェリス達は元々、狩人という名がつくだけあって、何か魔物でも狩ることを予想していたが、魔物の討伐は時間の割に報酬が少なく、割りの良い依頼を探すのに時間がかかっていたのだ。

 今回見つけた依頼にある魔粉金というのは、武器に纏わせて使うもので、魔粉金を纏った武器に魔術によって属性をつけることが可能になるのだ。


 例えば、何の変哲もない鉄のロングソードがあったとしよう。錬金効果ですでに攻撃力上昇がついており、これ以上武器を変質させられないと行った時に使うのがこの『魔粉金』なのだ。

 魔粉金を塗したロングソードに低域“炎”魔術ーー<フランマ>を放てば低域炎魔術の効果が付与されたロングソードが出来上がるのだ。

 また、魔粉金には種類があり、それによって効果時間や付与できる魔術の域の高さが変わってくるのだ。


「魔粉金なら、アミュラが、作れますもんね」


「はい。これでも一応術者ですから」


 魔粉金は錬金で作成するのが一般的なのだが、ある程度の術者にもなれば魔術で作ることも可能だ。現にアミュラは高域魔術まで込められる魔粉金を作成することが可能だ。

 なので原価の発生しないリスクの全くない商売になるといっても良い。これがメレストフェリスがこの依頼に肯定的な反応を示しているわけなのだ。


(…それに、これならゴルゴーラの邪魔に、ならなさそうですからね)


 何が邪魔になるのかわからない今、間違ってもゴルゴーラに関係しそうな討伐に名乗りでるなどしてはいけないのだ。高額な討伐依頼は何個もあったが、そういう意図もあって素材系依頼に落ち着こうということなのだろう。


「えっと、フェルベール……お父様。人間の国にわたるには、どれくらいの資金が、必要なんでしたっけ」


「…18万フリムだ」


「…先は長い、です…」


 18万フリムはかなり膨大な金額である。それは、アウトメコンで警護に当たる騎士団の月収が約5万フリムということから想像できる。農民などは1万を下回るものすらいるという。


「でも18万なら魔粉金を大量に売れば一瞬で稼げますよね?」


 アミュラの主張はもっともだが、一つ、問題点が存在していた。


「えっと、一気に売ると、目立つじゃないですか。目立つのは、厄介ごとの、種なので…」


 なるほど、と納得した様子を見せるアミュラ。

 狩人の集いで有名になるのは構わないが、その噂がこの国の最高機関などに伝われば最悪、面倒くさいことになりかねないのである。


「なら、全員個別に依頼を受けるのはどうですか? 討伐依頼を受けるために揃ってきましたけど、結局受けないことになりましたし、個別に稼いでも問題ないのではないでしょうか」


「…それも、そうですね。効率的に金策をしろ、と以前主人が言っていたのを、覚えています。私は…いろいろと怖いので、フリム稼ぎには、あんまり力になれないと、思うので、もう少し情報を、集めてきます。フェルベー…お父様は、どうするんです?」


「…私は、私も、単騎でも受けられる依頼を探し、遂行するつもりだ」


 メレストフェリスはわかりましたと頷き、その後二者に「くれぐれも、正体のバレないようにお願いします」と命令を送り、扉の方へと歩いて行った。

 その姿をアミュラとフェルベール、そして人間の会話に耳を傾けていた流種たちは見送った。


なんとか2000字。今日は早めの投稿です(*´ー`*人)

ゆっくり不定期ですが、更新は必ず続けますよ……

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