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三十一話 赤髪の記憶





 エイレンは考えていた。

 なぜ偉大な父の後継である自分が英雄になれないのか。

 いや、故英雄の系譜である自分がなぜ英雄になれないのかを。

 

 父は偉大だった。

 愚か者どもが住まう人の国から追放されても、その状況に屈する事なくその圧倒的な力で、流浪の末接岸したアウトメコン国内に狩人の集いを設立した。

 力を重んずる流種達は、強き父に心を開いた。それと共に、娘であるエイレンも、父と同様流種達に好かれていた。


 しかし、悲劇の夜。父であるレオドール・リスクの死を境にエイレンは流種達から、狩人の集いから畏怖される対象と化したのだ。


(そういえば、明日が父の忌日、か…あの日、私は英雄の道を選んだはずだったが…。あぁ父よ…私は間違っていたのだろうか…?)





 かつて、人間の住む大きな国に住居があった少女時代。

 その追憶の一端。かつての思いーー


「ーー故英雄の技が行使できれば、私もお父様のように人々を守れる狩人になれますか?」


 無垢な少女はふとした疑問を、型口で切り揃えた赤髪を揺らしながら目の前に居る同じく赤髪で、身長の高い初老と言っても良い男に投げ掛ける。


「あぁ、エイレンならなれるさ。立派な狩人にな」


 そう言って微笑む父はエイレンの言葉を全て肯定してくれた。






 父は偉大で優しく、常にエイレンを見てくれていた。

 あるとき、父が故英雄の力のことを教会の奴らに嗅ぎつけられ、国外追放を受けたことがあった。エイレンは父の潔白を訴えようとしたが、父に諌められ、人には為さなければならないこともある。とおとなしく国を追放された。

 

 アウトメコンに来る前、とある洞窟で長い時を過ごしたこともあった。

 その時、父にエイレンは聞いたことがある。

 

「…お父様。なぜ…なぜ、正義である故英雄の血を引くお父様に国外追放が課されなければならなかったのです…?」


 それは純粋な疑問。

 この時、エイレンはまだ知らなかったのだ。故英雄が何を成そうとしていたのかを。そしてその力を。

 

「そうだな…。エイレンは平和な街に、ガーゴイルがいたらどう思うかい?」


「ガーゴイルと言うと、古の巨人が作り上げた、契約により命令を果たす魔法生物…ですよね? …何かを犠牲にすることで悪にも正義にもなる怪物、が追放と一体何の関係があるのですか…?」


「故英雄は強かった。そしてその系譜である私も強い。エイレンには伝えていなかったが、私はね…ずっと教会から故英雄の力を貸すよう言われていたのだよ。だが、拒否し続けたことで力を貸す気がないと判断した教会は、その力が国内で行使されることを快く思わず、追放させたんだろう。これも憶測に過ぎないがね」


「お父様は、自身が金でも渡されたらどう寝返るかもわからないガーゴイルのような存在だと、そう言いたいのですか…?」


 その答えは言葉ではなく、父の疲れたような笑みから伺えた。

 エイレンはその日の夜、教会に対する怒りで眠ることができなかった。




 いつしか洞窟での生活も終わり、たどり着いたのはアウトメコン。

 人の国とは違う、活気にあふれた国にエイレンは興奮した。


 屈強な流種達はエイレンとレオドールを最初こそ、惰弱で貧弱な人間が来たと騒ぎ立てたが、レオドールの圧倒的な強さと、人柄で慕われるべき存在へと成り上がった。


 そしていつしかレオドールを筆頭とし、力があるが国には属さない流種達が各地から集まり、その団体は名を広げ功績を積みーー狩人の集いと呼ばれるようになった。


 そんな父にエイレンはより一層憧れ、自らが故英雄の力を行使したいと思うようになるのも仕方のないことだった。


「お父様。そろそろ故英雄の力がなんたるかを私に教えていただけませんか…」


「…エイレン。その時が来たら教えよう。これはとても扱いが難しい代物だからね」


「ッ…その時とは、いつ来るのですか…。もう何年も聞いて、何一つとして教えてくれないじゃないですか…!」


「それでも教えられないものは教えられない…。さぁ今日は天気が良い。難航している依頼もないし久々に街の外を歩きにでも行こうか」


 何かを誤魔化すようにピクニックに誘う父。その顔はどこかもの寂しげに見えた。


 そういえばその日からだろうか。


 エイレンの言葉を全て肯定してくれなくなったのは。英雄になれると言ってくれなくなったのは。


 何か喧嘩をしたわけではないが、会話は少しずつ減っていった。

 もちろん思春期故のコミュニケーションの変化もあっただろう。


 しかし、エイレンは己が父の期待に応えられていないから興味を失われたと考え込み、自分を高めることに打ち込み始めた。


 力を求めて足が棒になっても走り、重い剣を日夜問わず振り続けた。

 知識の探究にも明け暮れ、父には心配されながらも居場所は狩人の集いの修練場か大書庫になった。


 知識の探究とはそこがなく、故に止まることを知らない。また、万物には因果や縁起の法則といったものが存在する。


 それは必然的に訪れることとなった。


 大書庫でふと覗いた本で知ってしまったのだ。


ーー故英雄が成さんとしたことを。


 2日も投稿できなくて申し訳ございません。(*´ー`*人)

 

 もう少しエイレン視点が続きますのでご注意ください。あと2、3話くらいですかね?


 ん〜。早くメレストフェリス視点書きたいですね。

(電車の中から失礼しました)

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