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二十八話 開戦

 



 どれほどの時間が経っただろうか。

 陽が完全に傾き、じきに黄昏時と言った頃、ガラクタの上に佇むモラクスが、いきなり地を揺るがす、猛る獅子の如き咆哮をあげた。

 

 そのあまりにも唐突で威圧的な咆哮に前陣で見張りについている流種達は震え上がった。

 いや、後ろに控える流種達も毛を逆立てて怯えの表情を見せていた。


 牛頭の悪魔モラクスの持つ特殊能力はルーセントイビルと同じく威圧だ。しかし、モラクスの威圧はルーセントイビルのそれよりも効果が高い。


 もはや前立てしておいた作戦など決行することは不可能に近い状態にまで、その咆哮一つで持ち込まれてしまった。

 

 メレストフェリスは横にいる赤髪の人間を見る。

 人間の方がメレストフェリスよりも少し前にいるせいでその表情は見えないが、怯えているといった様子は伺えない。

 しかし、ひどく真剣な面持ちで必死にモラクスを見ているのは分かった。


「ーーフン、騒がしい家畜の悪魔めが。しかしーー少しまずいな」


 そう言って顎に手を当てる人間の雌。


 メレストフェリスは少しだけ、この人間がどのような考えを導くのか楽しみだった。

 それは勉強に近いものなのかも知れない。もしかしたら不利を覆す手札が増えるかもしれないと考えたからだ。

 または、この人間が流種達を従えるだけの力を見せてくれるかも知れない。


 あれでもないこれでもないと思考を重ねた後、人間は口を開いた。


「フェルベール、貴様ならアレを相手取ることは可能か?」


 しかし、人間がたどり着き、出した答えは他力を乞うというものだった。

 メレストフェリスは少し落胆しながらもフェルベールに命令を送る。


「…無理だな」


 というのはもちろん嘘で、モラクスよりも儀式召喚術で呼び出したベルフェゴルの方が強い。

 しかし、偽るのには理由があり、純粋にこの人間の力量、ないしは流種の戦い方を見て学んでおきたいというものと、どう言った作戦を立てるのかが気になったからだ。


「そうか…これは失敗だな。集いの最高責任者として、事を甘く見ていたようだ」


 人間は自らを責める。

 しかし、その顔は笑っていた。


(なんで、この人間は、笑っているんですかね)


 打開策があるのだろうか。もしくはただの狂人か。

 メレストフェリスにはわからない。


 そんなメレストフェリスを置いてけぼりに人間は前陣でモラクスの咆哮で怯んだ流種達の方へと歩き始めた。


「狩人頭エイレン・リスクが命ずる。貴様らは見ていろ、あの敵は強大だ」


 叢から姿を露わにした赤髪の人間に気がついたモラクスは再び野蛮な咆哮をあげた。

 そんな中、流種の中にも雄叫びを上げるものの姿があった。


「オレ達にただ見ていろだと!? バカはよしてくれ!人間風情に何ができるというんだ!?」


 そう声を発したのは巨漢の流種ーーグートドン・グレイトスだった。

 

「…フン。貴様、気がついていないのか?毛が逆立って顔は強張り、今にも逃げ出したそうじゃないか」


「んなッ…狩人頭だからといい気になりやがって、所詮前任から任されただけの名だけ頭がよ!!」


「ほぉ…言ってくれるじゃないか。ならばーーいや、今はそんな事をしている暇はないな。グレイトス貴様は今何を相手にしているのだ?」


 そう言われたグレイトスはハッとして後ろを見る。

 そう言えば先ほどからあたりの流種の声が聞こえない。それもそのはずでーー


ーー流種達は総じて丸くなって怯えていた。

 まるで何か恐ろしいものから目を背けるかのように。

 そして感じる。

 圧倒的な力を。


 グレイトス達、前陣の目と鼻の先にモラクスは蹄で大地を抉りながらゆっくりと近づいてきていた。


(あの流種、モラクスに、気づいていなかったんですか…見た目通り、馬鹿なんですかね)


 メレストフェリスとフェルベールは後陣で暇をしている。

 恐怖に怯える流種達と無関心で何も感じていないメレストフェリス達。まるで別世界のような差があった。



「あっ…アレがモラクスッ…」


 囁くようなグレイトスの声。グレイトスも恐怖に呑まれているのが一瞬でわかる、そんな声だった。


「グレイトス…貴様では何もできん。大人しく後ろに下がれ。そしてーー見せてやろう。現狩人頭エイレン・リスクの狩というものをな」


 そう言って赤髪の人間ーーエイレン・リスクは何もない空間からいきなり巨大な石槌を取り出した。

 手元の持ち手に当たる部分から、先で大きく四角く膨らんだ頭の部分まで、その全てが青白い石でできていた。


(あの人間、あんな重たそうな武器を、持てるってことは、筋力に重きを置いているのかなぁ)


 メレストフェリスはそんな事を考えながら今後の展開を楽しみにする。


「この槌…薄月の石槌。フフ…やっと試せる…。父より授かりしこの力、悪魔相手にどこまで解放できるのだろうか…」


 奇しくも同様に、エイレン・リスクも楽しみだと言った表情を薄い月明かりの下で浮かべている。


「さぁ!下がれ流種達よ! ここは私がやる。貴様らは語り継ぐ用意をしておけ! ーー始まるぞ! 英雄譚が! エイレン・リスクの秀美なる英雄譚が!!」


 何かに取り憑かれ、狂ったかのように声を上げるエイレン・リスクに怯えまじりの目線を向け、流種達が後ろに下がる。


(…流種たち、こっちにこないで、欲しいんですけども…)


 メレストフェリスは鬱陶しそうにそれを見つめるのであった。

 

(このゴミ達、無駄に大きいから、あの人間の戦いが、見えなくなるんですよね…)


 そこでメレストフェリスは思念でフェルベールに命令を送る。

 肩に乗せろと。


 そして見えたのは石鎚を両手で構える人間の背中と、遠くにいてなお、人間よりも大きく見える悪魔モラクスの姿であった。


 石槌を構えて止まる人間と、巨大な斧を片手で持つ強大な悪魔。

 その戦いの火蓋は、三度目の悪魔の咆哮によって落とされた。



 忙しくって全く内容を詰めれていない…。でも、疲れた脳の良い息抜きになるので今後とも続けて行きたいですね(*´ー`*人)

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