二十六話 神の器と赤髪の人間
メレストフェリスは考える。
(…汚い手で、触れられたくないですし、めんどうだから、殺しちゃおっかなぁ…)
しかしここはロビーの中だ。
いまだ無数の流種達がロビー内におり、いく匹かは面白そうにこちらを見ていた。
ここで殺した場合、流石に周りの目が多すぎる。
(はぁ…。とりあえず、フェルベールに頼んで、汚い腕だけでも、落としちゃいましょうか)
寄ってくる流種は決して遅くない。しかし、メレストフェリスやフェルベールからしてみればハエが止まるようなスピードだった。
フェルベールがその流種の手を止めるために動き出そうとしたその時。
「ーーおい、グレイトス。辞めておけ。そいつらに危害を加えた場合ーー私が貴様を斬るぞ?」
外部からの声があった。
その声に思わずぞくっと身震いをして流種ーーグレイトスは動きを止め、その声の方へと振り向く。
そこには、先ほどまで壇上で話をしていた赤髪の人間の姿があった。
いつの間にメレストフェリス達のいるロビーの最奥に移動してきたのだろうか。いや、多分見逃したのだろう。
そんなことより重要なのは、声の一つで流種を身震いさせるほどの人物が、メレストフェリス達に近づいてきて、尚且つ守ってくれたと言うことだ。
「だ、だけどオレだけが悪いってわけじゃ…ほら、こいつら礼儀がなってねえんだ。しつけも先達の務めってもーー」
そう言って慌ててフェルベール達を見るグレイトス。
しかし、振り返る最中、その言葉を遮るものがいた。
「ーー先達、な。フフ…グレイトス、貴様は面白いことを言う…。そもそもこいつらは狩人の集いの者ではないのだがな…いつの間に狩人の集いは外部から来た大切な情報提供者に野蛮をけしかける集いになったのかね?」
その言葉を聞いたグレイトスなる流種は、メレストフェリス達を見て、顔面蒼白ーー毛に覆われて全く分からないーーと言った様子だ。
「まぁよい。グレイトス、私は貴様に用があったのではない。時間の無駄だ、さっさと散れ」
赤髪の人間は手で何かを払う仕草と共にそう告げる。
それを聞いたグレイトスなる流種は、バツが悪そうに、同時に逃げるようにその場を去っていった。
その姿を見て、ロビー内には観衆達の笑い声が少し響くが、すぐに消えた。
「あの、えっと、助けてくださり?ありがとう、ございます」
メレストフェリスは赤髪の人間に表面上の感謝を伝える。
別に困ってはいなかったが、助けてもらったなら礼を言うのが当たり前というものだ。
普段ならここで、助けた側が一言つけるか、なにもないかで終わるのだが、この人間は想定外の言葉を投げかけてきた。
「ふむ。貴様らには元から私の馬車に乗ってもらおうと思っていたが、同席する流種達は移動してもらうとするか」
いや、これは独り言に近い。
そんな独り言の中で気になる言葉がメレストフェリスの耳に入った。
「えっと、わたし達も、馬車で、モラクスの場所まで、行くんですか?」
「あたりまえだろう? さらに詳しく情報を聞くためにも貴様らは私と同じ馬車で移動してもらうつもりだ。ふむ…その様子ではどの馬車に乗るかなんぞ決めかねているのだろう? むしろちょうど良いとは思わないかね?」
これはありがたい。この人間との距離を詰めたいこちらとしては願ったり叶ったりだ、とメレストフェリスは思う。
しかし、なぜそんなに積極的に同じ馬車に乗せようとするのか、その心理がわからない。もしかしたら、フェルベールの正体に勘付いているのかもしれない。
そして、赤髪の人間の話はまだ続くようだ。メレストフェリスは黙って聴く。
「それにな、ここは流種の国だろ? いかんせん周りには流種しかいないからな。たまには別の種族…人とも話してみたいのさ」
なるほど、とメレストフェリスは納得する。同じ食べ物ばかり食べていると、違うものが食べたくなるような物なのだろう。
メレストフェリスは納得はできないが共感することはできた。
「えっと、たいへん、なんですね」
適当にそう言っておく。
その言葉に赤髪の人間は「まったく…その通りだよ」といって、やれやれと首を振った。
「さて、すぐに出発だ。貴様らは私について来い。どの馬車に乗るのかを教えてやる」
メレストフェリス達は人間について行くのだった。
会話が単調で面白みがないですね…。
今からでも少しづつ学んで、いつか校正ないしは改稿を行いたいですね(*´ー`*人)




