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二十一話 神の器は伝説を疑る




「危なかった、ですね」


 マヨ・メコンに入る時とは別の門ーー南門から町道へと出たメレストフェリスは真横を歩く死に薔薇の騎士に話しかける。


 死に薔薇の騎士は何も言わずに頷き、首鎧と冑の顎の部分があたりガチャリと音を立てる。


(本当に危なかったです…。あのままだと、あの流種、殺されていましたからね)


 フェルベールに、敵対行動をとった相手を殺すことは許可していたが、国の重要人物的存在を殺していけないと命令するのを忘れていた。


 騎士がフェルベールに攻撃を仕掛けようとした時、インスペクターによって流種の騎士の能力値を見たメレストフェリスは咄嗟に前に躍り出て、大事になるのを防いだのだ。


(目立つのは、最低限に、できましたかね)


 それにしても気になることがあった。


「あの、また肩に、乗せてください。考え事をしたい、ので」


 メレストフェリスがそう言うと、フェルベールはまた右肩に乗せてくれた。


(インスペクターで見てみたら、レベルが、騎士団で高くて51で、平民らしき流種に至っては2とか3とかも、いました…。これって、この世界のレベルが、全体的に低いということで、いいんでしょうか)


 レベルは低く、装備はただの鉄で、魔化すらされていない。

 メレストフェリスが元いた世界で自身が創造されてからあまり日の経たないうちに攻略したダンジョンとほぼ同じと言える。


(でも、前の世界では、場所によって極端にレベルが違いました。つまり、この世界でも、その可能性があるわけで、もしかしたら私がいるのは、かなり弱いところなのかもしれません。この世界で最初に見た、アレのこともありますしね)


 とりあえずは、この辺りのレベルを知ったからにはレベルを合わせて行動しなければならない。


「それでは、行きましょうか。流牙の都・アウトメコンへ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 流牙の都・アウトメコン。

 

 真種・アウトメコン=ガルバド・レガリアが統治する流種国家の中核だ。

 一名の神と十二の御先みよって統治されているその都には、400万を超える流種達が住んでおり、安全とは到底いえない世界においてその数字はこの国がどれだけ安全なのかがわかる。

 また、統治体制も良く、あまりスラムや餓死者は見られない。

 それもやはり、神なる王の力なのだろう。


ーー曰く、偉大なる真種はその手に持った大鉈の一振りでこの地に住まう烈風を劣風に変えてしまったという。


ーー曰く、慈悲深き真種の植えた一粒の花種は荒廃した大地に水を育み地の恩恵を得たという。


ーー曰く、勇敢なる真種は、国に落ちる星にすら襲いかかり「抵抗せぬ相手など相手に値せず」と星を破壊したという。


 など、無数の伝説が語り継がれている。


 そんな偉大なる真種が創り住まうこの国の東門の近くにある大書庫の中で、その厳かな雰囲気にそぐわない幼い声が響く。


「この伝説、本当なんでしょうか」


 メレストフェリスはフェルベールに話しかける。


「…だとしたら、かなり強いかと」


「…ふぅん」

 

 これで会話はおしまいだ。

 その様子を、周りの者達は興味深そうに見守っていた。


(はぁ…。大書庫に、結構期待していたんですけど、脚色が過ぎる伝説に、肝心な魔術の本は高域までしかないんですか…。しかも、どれも、見たことあるものばかりでしたし)


 メレストフェリスが求めているのはまだ見ぬ魔術の知識だ。今更弱い魔術の本を見たところで何の面白さもない。


 宗教形態を知るために色々読んだがどれも誰かが適当に考えたような、嘘みたいな伝説が無限に書かれているだけだった。


(早く、人間の国に、移動しますかね)


 そんなことを考えていると、大書庫の飛びからが勢いよく開かれ「狩人の集いより招集! 至急本部に集まれッ!」と流種が叫んだのだった。


「書庫では静かにしていただけますか?…それで、何があったのです」


 慌てて入ってきた流種を宥めるように司書が言う。


「すまない、オレは狩人の集いからここにいる狩人たちを至急、集いの本部まで集めて欲しいと言われて参じた者だ」


「狩人の集い…厄介ごとですか?」


「再びすまないが、大書庫の司書殿であってもこれは他言は厳禁だと言われた。まあ…そうだな。厄介ごとだ」


 申し訳なさそうに頭をかきながら召集にきた流種はそう言った。

 メレストフェリスはそんな流種達の会話を盗み聞きしていく。

 

 どうやら、狩人の集いなるものがアウトメコン内にいる狩人達を駆り集めようとしているらしい。

 大書庫に幾つかの流種の声が響く。

 どうやら、この場には数名の狩人がいたらしい。


 返事をした流種達は、街でただ息をして歩いているだけの流種達とは違い、見るからに強者とわかる風貌をしている者ばかりだった。


(騎士団とやらと、似たようなものでしょうか?)


 流種の騎士団の騎士とフェルベールが衝突したことは記憶に新しい。あの後から騎士団に目をつけられているかもしれない、と騎士団を避けるように行動してきた。


(集いということは、流種達が集まるんですよね。これ、良い情報収集に、なるのでは、ないでしょうか)


 騎士団の存在をもっと早く知っていて、あの場の対応さえしっかりと確立しておけば、今頃騎士団から様々なことを聞き出せたかもしれない。

 しかしそんなことができない現状、ある程度の人数が集まり、情報を入手しやすい環境は喉から手が出るほど欲しかった。


「人…ではないですけど、その集まりの中に、前の世界ないしは、この世界の強敵の存在。

 もしかしたら、主人のことを知っている者が、いるかもしれないですもんね…」


 メレストフェリスは思念でフェルベールに卓上に並んだ本を戻しておくよう伝え、椅子から立ち上がりーー足が届いでいないのでどちらかと言うと飛び降りた。



 大きな街に突入させました!ここでは大事を起こさせたいですね…。

 メレストフェリス達が人間のようなものを倒して手に入れたあの地下室、結局使われる事なく出番が終わってしまいました…。もう少し内容を考えるべきだったかも知れませんね…(今更)

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