表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/57

十七話 神の器と初めての人種




 メレストフェリスが開けた扉の先には地下へと続く階段があり、メレストフェリスを飲み込もうと大口を開けていた。

 どうやらフェルベールの居場所はこの奥らしい。


 階段をとんとんと下る。外観からカビ臭いと思っていたが、意外にそんなことはない。

 その先にあったのは、それなりに広く、そして綺麗な部屋だった。

 10メートル四方程のほぼ正方形の部屋の西と東側に扉が付いており、その扉のどちらもが案外新しい。

 

 東側の扉を開けると、4メートル四方の部屋が眼前に現れた。

 硬そうなベッドと本棚が備え付けられた一室は、メレストフェリスが過ごすには非常にちょうど良いと言える。


 そしてその、本棚の横に立つフェルベールにメレストフェリスは近寄った。


「えっと、こんな場所、どうやって?」


 メレストフェリスはフェルベールに問う。

 すると、思念で色々説明してくれた。

 

 どうやら、スラムを歩いているとスラムの奥地で、この人間らしき人影を発見し、それを追いかけていると、この部屋に入っていくのがわかったそうだ。

 人間は拘束し、西側の部屋に監禁してあるとのことで、メレストフェリスは西側の部屋へ移動する。


 移動の際、メレストフェリスはフェルベールの方を向き、フェルベールを讃する。これは主人がやっていたことの真似にすぎず、心などこもっているはずもない。


「フェルベールは凄いですね…。さすが、悪魔です」


 心がこもっていないと知りながらも、そう言われたフェルベールは死に薔薇の兜の下で少し笑ったと言う。


 西の扉がフェルベールによってゆっくりと開かれる。部屋の広さはそれほどでもないが流種の住む石積みのボロ屋とは確実に違った建築様式が用いられた、土の壁があった。

 ふと床を見る。そこには手足を折られ、動けなくされたーー


「えっと、これって本当に人間なんですか?」


ーー人間のような者がいた。

 確かに、遠目で見れば人間に見えるだろう。

 人間らしい体躯に流種のように毛のない手足。

 しかし、ある一点だけが著しく人間と認識させる要素を取り払っていた。


「あの、喋ることってできますか?そのーー肥大化した? 頭の理由を聞きたいんですけど」


 そう。

 頭がメレストフェリスの知る人間のサイズと極端に異なっていたのだ。

 普通の人間の頭の約、4倍。

 特に、後頭部が大きくタコのような印象さえ覚える。

 

 そんな人間のようなものは白く濁った瞳でこちらを見ると、口を開いた。


「わしゃしは、ぜんのうなる、ごっどへっどしゃまの、おんけいを、うけしもお…」


「あの、すいません…まったく、何言ってるのかわかりません」


「こんあここをひて、ゆるはれるほてほおほっているのは!? ひははらなと、わかゴフッ」


 その言葉が通じない苛立ちと、あまりにも醜悪な見た目からくる嫌悪感から、ついフェルベールに首を刎ねるよう命令してしまう。

 フェルベールの剣がタコの頭を刎ね、落ちた頭は二転三転、コロコロと転がった。


(気色悪い、ですね、本当に)


 そして、飛んだ頭はこちらを向いて回転は収まりーー

 

「ばかめひぁ! しょういひしゅしゅしゅーー<ゲバの呪い壺>」


「ふぇ?」


 あまりの出来事にメレストフェリスの頭はついていかない。

 首を刎ねたはずの人間はその肥大した頭のみで何かしらの術をかけてきた。

 フェルベールは慌ててその動く巨頭を大刺剣で突く。


 メレストフェリスに半透明の壺が飛びーー当たると共に割れ、中身がかかる。

 

「えうぁっ!」


 その中身はメレストフェリスの右半身にかかり、右半身に黒いモヤが上がる。


(えっ、えっ、なに、え)


 思わずメレストフェリスは後ろに飛び退き、フェルベールの大刺剣の突き刺さった巨頭と自分を交互に見る。何かされたことを理解して、メレストフェリスは焦る。


 しかし、何も起こらない。

 立ち上がる黒いモヤはすぐに消え、右半身は壺の中身がかかる前となんの変わりもない。


 身体を触って確認するが、特に何の問題もなかった。


 メレストフェリスは巨頭を見る。

 フェルベールの大刺剣に突かれた巨頭はもはや動くことはなく、ただ赤い血を流すだけだった。


 メレストフェリスは<ゲバの呪い壺>と言う言葉を思い出す。


 そういえば、前いた世界でそういう名前の高域呪術があったはずだ。

 効果は腐敗と盲目。レベル差と耐性値の高さが幸いして呪術を無効化したのだろう。

 

「フェルベールにかかっていたら、危なかったかも、しれませんね」

 

 そう言ってメレストフェリスは巨頭と分担された身体をインベントリにしまい込む。

 

「この世界の人間がもし、こんなのしかいなかったら、いやだなぁ…」


 そう言って回れ右して扉を開け、東の部屋へと帰っていった。








ーー明かりの一切もない部屋の中、一つの声がその場の静寂を脅かす。


『ほぅ…あの程度の呪術は効かないと…レベルは変わっていないと見える。さすが、我が……だ。…しかし、不思議な人間だったな。フム…そっちの情報も集めるとしよう…』


 そう言って声は聞こえなくなった。

 その声色は全く違うが、メレストフェリスとどこか似ている。そんな気がした。


 今日は少し早めに投稿できそう…?

 今日は昨日の反省を活かしていつもより早く書き始めたんですけども、まだ時間あるから大丈夫っていう謎の安心感によっていつもより書いている時間長かったです…(*´ー`*人)デモタノシ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ