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十六話 神の器は本をみる





 出ることのない答えを探しながら、メレストフェリスは大通りに戻る。

 じきに日が暮れ、夜がやってくる。

 

(夜は好き、ですけど、ちょっと暇なんですよね…)


 時間を無駄にしまいと、フェルベールには近くで寝泊まりできる場所を探してこいと命令し、メレストフェリスはバザールに出品されている本を眺める。

 

 店主はもちろん流種で雄か雌かいまだによくわからず、喜怒哀楽もいまいちだ。

 そんな店主が、メレストフェリスに話しかけてくる。


「人間の若いのはこう言う本が好きなのかえ?」


 それは老婆のようなしわがれた声。いや、老婆なのだろう。

 服装をよく見れば、男物とは違ったゆったりとしたローブのような服。さらに、白銀をあしらったネックレスにブレスレットなどの装飾品が目に映った。


「あの、ひ、暇つぶしに丁度いいかなって、思うんです」


 そう返すと一瞬硬直したが、すぐに持ち直し、一冊の本を手に取ってこちらに差し出してきた。


「暇つぶしにわしの本を読むのは容認できないね。価値がわからんのなら…ほれ、低域魔術の本じゃ。人間の若いのはこんなのが好きなんだろう? ふむ…今なら1400フリムで譲ろう。どうかえ?」


 どうやら自分の書いた本なども売っているらしく、それを暇つぶし程度に使われることに対して少し不快感を抱いたようだ。


(汚い文字、こんなものが、売れるんでしょうか…まあいっか。 そんなことよりーー)


ーー魔術本。

 その言葉にメレストフェリスは興味を惹かれた。

 砦にいた流種が使っていたのはメレストフェリスのよく知る、魔術や神秘というものだった。しかし、あの時行使された魔術や神秘が、偶然メレストフェリスの知る者であった可能性は非常に高い。


 まだ見たこともない、危険な魔術がこの世界には存在するかもしれないのだ。

 もしかしたら、そんな未知の魔術を覚えられるかもしれない。

 そんな未知を知るためにも、この魔術本は喉から手が出るほど欲しかった。

 

「あの、それ、買います。あと、その他に、魔術に関する本って、あ、ありますか?」


 スラムで聞き出したお金の単位を思い出しながら1400フリムをきっちり払い、魔術本を受け取る。


「ほぉ。本当に好きだったか。うむ、毎度あり。しかし、残念じゃがここに高域の魔術本は置いておらんのう。…あれがあるのはアウトメコンの書庫あたりじゃろうて。…して、人間の若いのは魔術が使えるのかえ?」


「えっと、はい」


 そう返すと、流種の老婆は訝しげにメレストフェリスを見た。

 魔術を行使できることに対し何か引っ掛かることでもあったのだろうか。

 トラブルが起きて騒ぎになるのは面倒だ。


(殺して、しまいましょうかね?)


 そう思った瞬間、流種の老婆が口を開いた。


「いや、すまないね。疑う気は無かったんだが…その身長で魔術を行使できるのは大した才能だよ。魔術は難しいからねえ…。まあ、かのアウトメコンの魔術師団なら中域魔術まで行使できるって話じゃしなぁ…。人間の若いのも、出世できるといいのぉ」


 どうやら、魔術をこの歳で使えることに疑心を抱いたらしい。

 確かに、身の丈に合わない発言を聞いた時、疑いを持つことは幾度となくあった。


ーーレベル30もない者が、レベル100はないと困難な竜を1人で倒したと言う話を聞いた時は、主人と共に耳を疑った。

 どうやらその者は戦い方がとても優れていたらしく、主人と共に賞賛したのを今でも覚えている。


 そんなことを考えていると、流種が話しかけてくる。


「そんな悲しい顔をしなさんな。若いのはもうすでに立派じゃよ」


 主人のことを思い出し、いつのまにかその感情が顔に出ていたらしい。

 何か勘違いしているようだがそれを訂正するのはメレストフェリスには少し面倒くさかった。

 本も買ったしそろそろこの場から抜け出そうと考え始める。


 ちょうどその時、フェルベールから隠れられそうな場所が見つかったと思念が届いた。


「えっと、はい。ありがとうございます。頑張りますね」


「はいよ。またきてくれよなぁ」


 そう言っててきとうに話を終わらせ、フェルベールのいる位置まで歩く。

 果物屋の横からスラムに入り、複雑な道をまるで知っている道を通るかのようにスイスイと進んでいく。

 夜なので、スラムにほとんど人影は見えないが、絶対にいないわけではない。

 

 そんな者たちに、スラムを小走りする人間はとても異様な姿に映っただろう。

 

 しかし、メレストフェリスはそんなゴミに一瞥もくれず、ひたすら道を進み、着いたのは他のスラムに根を張る民家と何ら変わりのないクズの石レンガでできたボロ屋だった。

 メレストフェリスはその小さな手で、朽ちかけの木の扉をゆっくりと開けた。


 話を考えるのって、かなり頭を使いますね(時間も)この2000字書くだけでも2時間近くかかっているようだと、まだまだ修行が足りていないのだと実感するしかないですね…。

 明日はもっと短い時間で書けるように頑張ります!(それと共に内容が薄くならないよう注意せねば…)

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