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十五話 神の器は初めて街に入る

 





 (ひでり)が続き、暑い中でも最も暑くなる、太陽が頂点に達する。鳥が苦しそうに鳴き、水が飛ぶように売れるこの時間帯。

 流種の街、マヨ・メコンの東門に日常を破壊するに相応しい風貌の者達がやってきた。


「えっと、あの、ここが、流種の街マヨ・メコンですか?」


 そう門兵の流種に聞くのは流種に比べて腰ほどまでしかない、小さな人間。

 その横には薔薇の騎士と形容するしかない、異質な騎士が佇んでいる。


「あ、ああ。その通りなんだけどーー人間がこの街にくるのは珍しいね。横の騎士さんとは一体どのようなご関係で?」


 恐る恐る。

 すこしおよび腰で門兵の流種は問う。

 それに、なんの感情もないようなーーしかし、とんでもなく低い声で騎士が返す。


「…メレストフェリス、私の娘だ。私はフェルベール。見た目通り死に薔薇の騎士だ」


 その地獄から響くかの如く轟く声に負けじと門兵の流種も声を張る。


「この街には観光で?商売で?正直、商売はこの街だと厳しいものがありますよ」


「えっと、あの、観光、です」


 おどおどと小さな人間が言う。

 その言葉の確認をとるように騎士をみると、騎士も頷いている。

 門兵の流種は思う。


ーーこれだけ腕が立ちそうなら、この街でトラブルに巻き込まれても大丈夫そうだなと。

 不要かもしれないが、規則なので一応言葉をかける。


「よし。メレストフェリスにフェルベール、通ってよし。街中でのトラブルはあまり守ってやれない。くれぐれも気をつけてくれ」


 屈強な騎士と可憐な人間の組み合わせは嫌でも目を引くこととなる。

 なにかトラブルに巻き込まれないことを祈るばかりだ。


 なぜなら、トラブルを持ってきた方が怪我をしそうだったから。門兵はそう思った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「あ、案外あっさりと、入れちゃいましたね」


 その言葉に死に薔薇の騎士は頷く。


 マヨ・メコンの街は言ってしまえば発展のあまり進んでいない、古風な街だった。

 そんな街の道は十字になっていて、東門から西門までが一望できた。

 その辺りから、この街があまり大きくないのがよくわかる。

 

 メレストフェリスは街を行き交う流種の服装を見る。

 服は上裸の者から、暖かいところ特有の、サリーと呼ばれる布をぐるぐると体に巻きつけたような服装の者が多かった。


(…野蛮な生き物なんですね)

 

 そんなことを思いつつ、メレストフェリスたちが歩いている大通り。

 その横には、飲食、娯楽、アクセサリーなど、様々なものを扱ういわゆる、バザールと呼ばれるものがあった。

 その部分だけを見ると、この街は活気あふれる住み良い街なのだろう。


ーーしかし、それも表面上だけの話だ。

 バザールの隙間からたまに見える隙間。

 街の裏側が透けて見える場面が多々あった。





「すごく、いい街ですね」


 メレストフェリスはスラムへ足を踏み入れながらそんなことを言う。

 目の前には蝿のたかるゴミ置き場に頭を突っ込んだまま動かないーー死体。

 

 石レンガの壁はところどころに穴やヒビがある。


 欠損、盲目、奇形。


 薬物に賭博。


 そんなスラムが、メレストフェリスには輝いて見えた。

 ふと、彼女の後ろに注目すると、死に薔薇の騎士がまるで鮮血を浴びたかのように、真っ赤に染まっていたーーいや、鮮血を浴びて真っ赤に染まっていた。


 二十一匹。

 それは、スラムに入ってからフェルベールが殺した流種の数だった。

 

 また、目の前のゴミが喚く。


「ひっ!ひぃ!?…なんでこんなことをする!?話せる情報は全部ーー待って!本当にもう!頼む、まってくれ!!」


 ゴミはフェルベールに命乞いを始めた。

 フェルベールは悪魔ベルフェゴルだ。そんな懇願、聞く義理もなければ守る筋合いもない。

 そもそも悪魔とは、自己の快楽のため道理もなく殺しをこおなうものなのだ。


「まっ!たずっ!ガッ!だじげブァ……」


 何度も何度も腹部に大刺剣を突き刺し、トドメに頭を一突き。

 動かなくなった流種に興味はないと、フェルベールは新たな流種を求めるべく、メレストフェリスの後ろへと付く。

 メレストフェリスはまだ暖かそうな死体に近寄り、インベントリに収納していく。


 メレストフェリスの真の目的は情報屋を探すことだ。しかし、いくら流種から情報屋の情報を聞き出しても、そんなもの知らない、いないの一点張りでなくなくゴミ掃除をするしかなくなってしまっていたのだ。

 まあ路銀稼ぎにもなる。完全に無駄な行為ではない。


(みんな、おんなじようなことばっかり言ってますね…。流種の街が全部こんなのだったら嫌だなあ…)


 メレストフェリスはため息を吐く。


 そういえば、人間の街に関する情報は聞き出すことができた。

 どうやら、西北西に進めばあるらしい。

 名前まではっきりと覚えている者はいなかったが人間の国はかなり大きいと言うこともわかった。

 まあ、それを鵜呑みにするほどメレストフェリスは馬鹿ではないが。


 そして、ふと思う。


(そういえば、どうして私が、人間の国に興味を持っているんでしょうか。滅ぼすため…とはまた、別な気がしますし…)


 いくら考えてもその答えは出てこない。

 しかし、なぜかその感覚はいつものように(ないがし)ろにできず、メレストフェリスの頭の片隅に居座るのだった。



 今日も遅くなりすいません。プロローグを少し書いているつもりで、本編を書くのをすっかり忘れて気がついたらこんな時間に…。

 明日はもっと早い時間に投稿できたらいいな(*´ー`*人)

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