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十三話 神の器は夜を往く

 やっと森から出ます。

 






 空を濡らす雨も止み、いくつかの窪みにできた水溜りがどこから降り注いでいるか分からない陽光に晒され、キラキラと反射するころ、メレストフェリスとベルフェゴルは後処理を終えた"砦だったもの"を眺める。


 ベルフェゴルの魔術によって粉々になった砦は、いうならば聳え立つ瓦礫と形容するのが一番しっくりくるだろう。

 

 砦の破壊ーーこれこそがメレストフェリスの言っていた、"しあげ"の正体だ。

 前いた世界では、敵が出る建造物を完全に破壊しないと、何度でも敵が湧き出るーーリポップするーー建物が存在していた。

 今回の破壊も、もしかしたら再度出現するかもしれないという不安からの行動だった。


「ふぅ…。これで、心置きなく、ここを去れますかね」


 そう呟いた後、回れ右をして環状の太陽のようなものを仰ぎ見る。

 あれを目印に歩いていけば、マヨ・メコンと呼ばれる街に出るらしい。

 マヨ・メコンは流種の街で、野蛮そうな流種らしく野蛮な街ーースラムに近いとメレストフェリスは想像している。


 これまでの経験上、スラムには情報屋なる存在がいるはずだ。それを目当てに少し街を散策してみるのも悪くない。と、まだ見ぬ街に期待を込めてメレストフェリスは歩き出した。


 砦からは細い道が樹林の外に向けて伸びており、その細道を歩き続けること約2日で、樹林から出ることができた。

 しかし、まだまだ道は整備されているとは言えないーーまるで獣道のような、草をかき分けて無理やり作った道だった。

 なんとなく歩くのにも飽きてきたので、左斜め後ろに控えるベルフェゴルの右肩に乗せてもらう。

 そういえば現在、メレストフェリスは隠者の衣と呼ばれる、真っ黒の衣を着ている。杖は、死に損ないの腐朽杖のままだ。

 これは、目立つ行動をとるのを避けたいという考えからの行動で、隠者の衣には高い探知系耐性と若干の注意分散の効果がついている。

 それに倣ってベルフェゴルの見た目も大きく変更されており、全身、鎧部分が銀でくすんだ赤色のサーコートに覆われ、頭や脚、腕も全て似たような配色の装備ーー死に薔薇騎士の衣装に身を包んでいる。

 腰には、青い薔薇の紋様が浮かぶ大刺剣を下げており、そのミスマッチさがいい雰囲気を醸し出している。

 側から見れば、死に薔薇の騎士とその従者、あるいは騎士の子供と言ったところだろう。


 流石に騎士は違和感があるが、ベルフェゴルのレベルで最も強い装備がこれだったのだ。


 妥協は許されない。

 メレストフェリスは過去、この世界にきてすぐに巨大で強大な山のような生物と遭遇している。

 もしあんなものがこの先にでたら、並の装備では即死は免れないだろう。

 なので、盾としての役割を高めることも含め、ベルフェゴルに死に薔薇装備を渡したのだ。


「あとは…呼び名、ですかね?」


 呼び名は重要だ。

 ベルフェゴルと種族名で呼ぶのは多分ダメだろう、とメレストフェリスの数少ない常識が語る。


 しかし、ここで問題が起きた。


「んむぅ……。ベルフェゴル…。ベル…ゴ…ゴル…?」

 

 そう。メレストフェリスには絶望的にネーミングセンスが欠如していた。


 結局、ベルフェゴルも一緒になって考え、ベルフェゴルの呼び名はフェルベールに決まった。


「あ、貴方は今日から私の父親であり、私の守護をする死に薔薇の騎士、フェルベールです。

 人前で私は、貴方のことを、えっと、お父様と呼びます。貴方ーーじゃなくて、お父様?も私のことはメレストフェリス、と呼んでください。敬称は必要、ありませんので」


 そう命令すると、ベルフェゴルーーフェルベールは「…承知した」と低い声でそう答えた。


 そしてメレストフェリスはフェルベールの右肩に乗りながら空を見る。

 考え始めはのはまだ日があるうちだったと言うのに今ではすっかり星が散りばめられた星空だ。

 そんな中でも異様な存在感を放ち続ける環状の太陽のようなものをメレストフェリスはじっと見つめた。

 涼しい風が頬を掠め、隠者のローブがはためき、星の光に照らされる。

 同じようにフェルベールの赤いマントも照らされた。

 

 その場面を見た者は口を揃えていうだろう。

 

ーー夜の支配者が君臨したと。


 明日は無理そうです。

 今日も2000行けず…明後日は2000超えられるよう頑張ります(*´ー`*人)

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