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決定権は誰にある

 さぁて、折角転校生が来て、漫画や小説やらだったら新キャラってタイミングで謎に変な男のダイエットに付き合うという展開もここで修了だ。決着をつけてもらおうじゃないか。

 三月明音は昔に比べるとだいぶ丸くなった印象で私は空気が読める良い女アピと複数回のストーカー行為と盗撮と毎日ポストに殺害予告と恋文を合わせたようなものが入っていたことを除けば大人しかった。これは俺にとって嬉しい誤算ではある気がする。


 どうするかはお前が決めろと言ってから実に3日が経っていた。3日もあったら世界も救えるというのに……。

 この期間がアイツのビビリさを表しているような気がする。まぁ、然るべき準備をとったと思おう。


「で、何? 呼び出しやがって。俺これから女の子と遊ぶ予定だったんだけど」

 昼休み、空き教室。一番最初に会った場所に呼び出されていた俺は元デブ男の前に座っていた。

 割と短期間でいい感じに仕上がったな。少し筋肉もついて、まぁ、人の趣味は人それぞれだから大衆向けになったって感じか。

 アイデンティティは人それぞれだが、コンプレックスなら何か理由があるうちに克服しといた方がいい。


「え、約束あったんですか? それなら言ってくれれば」


「まぁ、ナンパに行くだけだけどね」


「アンタ本当に中学生なんか…………」

 最近のガキどもはませているので小学生で付き合ってるのだって普通だ。全く、けしからん。

 真面目だったりしっかりしているガキをみるとイライラする、きっとただの嫉妬なのだろうが。

 

 まぁ、人間の好感度はその人の性格と相手の対応を含めたものだ。どれだけ性格が良かろうがそれを周りが褒め称え続けていては面白みがない。

 逆に多少クズでも周りからクズ判定されてれば案外面白い。


「で?」


「今日、告白します」


「あっそ、ガンバ」

 それだけ言うと俺は立ち上がり椅子を閉まった。


「ちょちょ、待ってください。最近冷たくないですか?」

 

「いや、元から冷たかったぞ」

 

「確かにそれはそうかもしれない」

 ……。案外良い感じの顔だったのがイラっとくる。良いじゃん、なんでみんな痩せたらイケメンだったってことにしたいんだよ。現実そんな甘くないだろ、痩せたってことが凄いんじゃないの? それでイケメンだったから付き合いますって日本人の考える純愛と違くない?

 純愛ビーム撃たれるぞ? 


「いや〜、結局人は顔なんだなぁ」


「え、なんですかそれ。俺の努力全否定しに来てます?」


「いや、お前も痩せたら意外とイケメン民かと思って」


「先輩の方こそ、イケメンじゃないですか」


「男に褒められても嬉しくないんだけど。俺の顔がいいならなんで俺はモテないの?」


「先に褒めたの先輩じゃないですか? てか、それマジで言ってます?」

 コイツなんか痩せてから調子乗ってね。まるでツッコミ要員じゃん。いや、ツッコミ要員なのか。


「で? 何?」


「え、スルー?」

 お前如きがこの俺と会話しようなんて百年早いのだ。筋トレでもしてこい。


「で、何?」


「あ、あぁ、えっと。その告白するんで、何か良い感じの言葉でもかけて貰えないかと」


「はぁ、お前まだそんなこと言ってんの?」


「いやぁ、でも。いざ告白するとなると緊張するっていうか。別に好きって気持ちは変わってないんですけど本気なんで」

 俯きながら手を握る元デブ男A。前のときもだいぶ緊張していた気がするが、今回はさらに緊張しているようだ。ここまで頑張ったからって意識があるのかもしれない。でも振られたくないって気持ちがその女子に関係ないところで上がってるようなのは少し違和感のような気持ち悪さがあるな。


「別に前と何も変わってないよ。成功する確率ぐらい。いくら努力したってガチだろうかお遊びだろうが振られるときは振られるんだ。努力すれば成功するってわけじゃないけど、失敗したからって努力が無駄なわけじゃない」

 椅子に横向きに座って外の景色を窓から見ながら呟く。

 夏の空に浮かぶ入道雲は相変わらず絵画みたいに綺麗だった。


「そう、ですね」


「あと、こんなに努力したのにってのは相手にとって関係ないからな。次、エゴの押し付けみたいなことはすんなよ」

 目を見つめながらそう忠告する。前までなら逸らしてただろうに今はしっかりと見つめ返してきたのを見るに成長、というか変化はあったみたいだな。


「頑張ってみます」

 そう言って立ち上がり、自分の頬をパチンと叩く元デブ男A。

 俺は出て行こうとするソイツになんとなく足を引っ掛けた。


「あぶな! 何するんですか!?」


「俺だったら重いって振るはお前のこと」


「何言ってるんですか?!」

 折角気合を入れたのに何言ってんだみたいな顔をする元デブ男A。絶対心の中でそう思ってる。


「お前名前なんだっけ」


「え、雨宮 蓮(あまみや れん)ですけど」

 案外かっこいい名前持ってるな。


「へぇ〜、そっか。まぁ、頑張れよ」

 そう言って俺は雨宮の肩を軽く叩くとヒラヒラと手を振りながら教室から出た。

 

「ったく、呼び出しておいて先輩より早く部屋から出ようなんてなってないなぁ」

決めるのは俺ダァ。

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