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少女は耽る

もしかしてラブコメっぽくなってきた?

「……」

こんな時間に一人で出歩くのは初めてだ。


つまらない、何処にでもある親子喧嘩なのだと思う。

苛つきみたいなのが積み重なって遂にあたしは家を飛び出していた。


夜の街は冷たく。こんな時間に子供が一人で出歩いていれば勿論不審がられる。

あまり人は多くないが、見られてるような気がして俯きながら足を早める。


不安を紛らわすように足速に何処を目的とするでもなく夜の街を歩いた。


「はぁ」

吐き出した息は少し白くなっていた。


寒い、、、。

手袋でも持ってくれば良かった。


でも、今更すぐに帰るなんてことは出来ない。

結局子供なんだ、みたいに思われるのは癪だった。


ふと、とある男子の姿が浮かんだ。


佐月くん。


凄いなぁと思う。

やってることはかなり酷いので尊敬はできないが。


周りを物ともせず。

大胆不敵で傲岸不遜。

それでいてお調子もの、よく分からないというのが率直な感想だ。

少し前まで隠キャというか。おとなしいというより怠惰な印象を受けたのに。

今では立派な元気発剌問題児だ。何があったのだろう。



不満はあるのに、言えなくて。

溜め込んで、そして、今日爆発してしまった。

客観的にみたら馬鹿らしい、のだと思う。

それでも、どうしようもなくて立ち行かなくなってしまった。


そういえば最近は神崎くんも問題児化してきた。


佐月くんと連むようになってからだ、それでも女子人気は健在だけど。

むしろ、笑顔が増えて人気が増してるくらいだ。

基本嫌われてる佐月くんだけどそこだけは評価されているらしい。



そういえばあたしも女王なんて呼ばれてるらしい。

男子の間では氷の女王なんて呼ばれてるらしい。


確かにあたしはあまり男の子が得意ではなく冷たくあしらってしまっているけど。

氷の女王なんて小っ恥ずかしい。


あたしが本当に氷ならこんな冬の夜の風、冷たくもないんだろうけど。


キィー!と盛大なブレーキ音が聞こえた。

はっ!とし考えごとを止め、前を見ると目に入ったのは赤信号。

止まれのマーク。



咄嗟に、止まってしまった。


光が指す。

眩しいくらいの。

音のした方を見てそれが車のライトだと気付いた。


あたし、いつの間にこんなところまで。


目の前の車がとても、とても大きく感じた。

恐怖に足がすくむ。

あたしは目を瞑ってしまった。


(ごめんなさい、お母さん、)


馬鹿だなぁ。喧嘩して、家出してそのまま交通事故。


車もあのスピードだ。助かりはしないだろう。


走馬燈が頭を駆け巡ろうとした。


その時、誰かに身体を抱えられた。

すぐに背中と膝裏に手が入れられる。

きっとお姫様抱っこをされているんだろう。


ダメ、無理。避けられる訳ない。

巻き込んでしまうあたしの不注意で誰かを。そう思った時。

さながらジェットコースターに乗ってる時のような圧力がかかった。


「っぐ」

と踏ん張るような声が頭上から聞こえた。

飛んだ?

いや、跳んだんだ。


あたしを抱えた誰かが。

衝撃に備え身体を縮める。

が、何もこない。


すっと、目元を誰かの指が撫でた気がした。

恐る恐る目を開ける。

いつの間にかどうやら赤信号を渡り終えたのだと思う。

どうやらあたしは少し泣いてしまったらしい。


あたしを持ち上げる人の親指を見ると少しだけ水滴の跡があった。

無意識、というか手を滑らしただけかも知れない。

あたしを抱える人は肩で息をし茫然としていた。

ふっと、顔も、胸も、身体中が熱くなった。


やばい、涙が溢れそう。



え、てか、佐月、くん?


心臓が鳴り響く。

コレは、吊り橋効果なのかな。


「あ、」

佐月くんは、はっとしたような顔をするとあたしを優しく立たせてくれた。


「あ、あの」

何か言おうと、───お礼を言おうとしていると。


さっ、と佐月くんがあたしを背に道路の方を向いた。

車の扉が開く。


怖い人だったらどうしよう。

いきなり道路に出てくるなと怒鳴られるのだろうか。


───そのことを見越して佐月くんはあたしの前に立ってくれてるのだろうか。


「だ、大丈夫ですか?」

出てきたのは綺麗な女性だった。


ほっ、と安心の息が漏れた。

それはどうやら佐月くんも同じだったみたいだ。


肩の力が抜けるのが後ろから見ても分かった。


「少なくとも俺は大丈夫です。あの、俺急いでるんで。すいません」

佐月くんはそういうと走っていった。


呆然とするあたしと車から降りてきた女性。


「え、えっとあの子もだけど貴方中学生?」


「い、いえ。小6ですあたしもアイツも」


「知り合い?」


「はい、多分」

向こうは気付かなかったのだろうか?

正直驚くことが多すぎてまだ気持ちが追いついてない。

現実味がないからどこか曖昧な返事になってしまった。


「ごめんなさいね。よく前を見ていなかったわ」


「いや、周りを見れてなかったのはあたしの方です。すいませんでした」


「まぁ何事もなくて良かったわ。凄いわね、あの子一気に走り出して貴方を抱えて飛び退いて。私もうダメだと思ったわ」


「あたしもです」

佐月くんが走り去って行った方を見ながら言う。


「顔赤いわよ?惚れちゃった?」


「い、いや、そんなわけないじゃないですか。ほ、ほら寒いからですよ」


「ふふふ、そうね」

余裕があってかっこいい人だな。

あたしの所為で事故を起こしそうになったのに。

起こりもしないで。


「もう遅いでしょ?道わかる?家まで送っていくわよ」


「い、いや、悪いですよ」


「良いのよ、詫びみたいなものだから。気にしないで」

お願い、ね?

なんて大人の女性に両手を合わせられると断りづらい。

少しチョロすぎるだろうか。


正直帰りづらさはあるけれどこれ以上家出を続行する気にはなれなかった。

補導される前に帰ったほうがいいだろう。


「親に電話しとく?」


「あ、はい」

電話をかけて貰い。

少し事情を話してもらってから変わって貰った。


どうやら探しに出ていたとこらしい。

心配したと怒られてしまった。


「そ、それじゃあ」

助手席に乗り込みナビをする。


「ねぇ、こっち来た方向と逆だと思うけれど。大丈夫?」


「はい、合ってます」


「そう」

ありがたいことに事情はあまり聞いて来なかった。


「本当に焦ったのよ。というかびっくりしたわ。私の不注意もあったけど。相手が止まってくれるとは限らないから気を付けてね?いつも彼みたいなヒーローが助けてくれるわけじゃないのよ?」

彼女は最後は茶化すように笑って言った。


「はい、そうします。あ、そこ右に曲がってください」


「はーい」

親切な人だ。


「そういえば彼の名前分かる?」


「え、えっと」


「あ、そうね。私の名前は姫咲 薫(きさき かおる)。姫に、花が咲くの咲く、草冠に重さにれんがで姫咲薫よ。何かあったら教えて?電話番号後で教えるわ。彼は同じ学校よね?」


「はい」


「うん、それじゃあ彼の方も」


「分かりました」

少し走らせると家の前に着いたので車を止めてもらう。


そして電話番号を貰った。


「家まで行こっか?」


「すいません、それは、ちょっと」


「そう、親御さんに話をした方が良さそうなのだけれど。何か事情がありそうね。ちゃんとあったことは話すのよ?」


「はい」


「それじゃあ」

姫咲さんは笑顔で手を振りながら車に乗り込むとそのまま走り出した。

しっかりした、社会人って感じの女性だった。



玄関の前に行き。

少し、緊張してしまい唾を飲み込む。


「た、ただいま」


「おかえり、心配したのよ。本当に。良かったわ事故にならなくて」

どうやらあたしが帰るまでの少し落ち着いていたらしい。

色々言いたいことはありそうだが。気まずさもありお母さんは口つぐんだ。

「そ、そのさ」


「ん?何?」


「吊り橋効果って本当にあるのかな?」


「へ?」

お母さんの、何の話をしてるか分からない、という顔に思わず笑いが溢れた。


「ふふ、何でもない!はっきりしたらまた話すかも!」


評価、ブクマ、お気に

ヨローーーです。

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