結構適当3
うーむ、遅れた。
「何で、昼休みは俺と居て犯行は自分には不可能だって言わなかったんだ?」
放課後、俺は家に帰ろうとする佐月を引き留め聞いた。
「あはは、それならお前が言ってくれればいいじゃん」
「別にお前平気そうだったじゃん」
「酷いなぁ、内心泣きそうだったよ?足プルプル」
「嘘付け。俺のことを嫌いな奴を何故助けてやらねばならん」
「そりゃ、そうだ」
そもそも考えがあって言わなかったんじゃないのだろうか?
ただ思いつかなかった?言えなかったなんてことあるか?
俺を気遣ったのか?そんなことあるのだろうか。
いや、コイツ基準が意味不明だしおよそテンションで行動決めてる節があるから分かんないな。
「なんで言わなかったんだ?」
「………。なんか、有耶無耶にした方が良いんじゃないかなって」
珍しく、いや。そんなことを言えるほど俺はコイツについて知っているわけではないがらしくない。悩んで、言葉を間違えないよう慎重に紡いでいるようだった。
「あんな大勢の前でコイツが犯人です。なんて吊し上げても可哀想だろ。それに有耶無耶にしといた方が忘れるのも早いかも。俺が疑われてるぐらいで良いんじゃねーかな。その内これは俺がやったことだったってことになってアイさんは俺を恨む。今回は俺を陥れるためのものでアイさんを狙ったんじゃなさそうだし」
確認するように、言い聞かせるように、納得するように。
時に前後し、繰り返しながら佐月は言った。
「そんなお前気を使う奴だったんだ。…それに……」
「っふ、それは普段からあんなに言ってるのにってことだろ?アレはそれなりに力が拮抗してるから良いんだよ。俺は強いから向こうは数で対抗してきた。でも弱い奴を数で攻めても可哀想だろ。別に誰でも彼でも傷つけたい訳じゃねぇよ。むしろ傷つけたくなんてない。優先度とかの問題もあるから何がなんでもって訳じゃないけど」
佐月の哲学というか思想というか考えみたいなのに触れた気がする。
きっとそれはまだお粗末で矛盾だらけのものなんだろう。
だからゆっくりと確かめるように紡いで時に付け足す。
「でも」
「傷付いてねーよ。俺は」
確信したように。
そう解釈するかのように。
名付けるように。
強がりというよりそういうことにしているかのような。
そうありたいかのような。
「嘘付け」
俺は思わず呟いた。
下を向いて。
分からなかった、その強さが。
そんな俺を佐月が眺める。
いや、見つめる。
「お前は最強だ。でも無敵じゃない。傷付けられればその分傷付く。俺がお前を無敵にしてやるよ」
「何も言えなかったお前に?出来るの?」
ふざけたような笑顔。
貼り付けたような、馬鹿にした笑み。
うっぜぇ。
「何とかなるし、何とでもする。俺、容姿良いし、勉強出来るし、運動もできるから」
「はっはー!うっぜぇ。良いねぇ。そういうの嫌いじゃない」
右手で顔を覆い笑いながら上を向く。
傲慢で、不敵な感じが思いっきり出てた。
しばらく笑った後覆っていた手を離し俺の方を見つめる。
1度目を閉じ、大胆不敵な笑みを浮かべた佐月は右手を差し出してきた。
「よろしく、クソイケメン野郎」
「こちらこそよろしく、ど変人」
笑顔で(煽り的意味)俺たちは握手を交わした。
「よっし、慎也行こうぜ?」
「距離の詰めかた早いな。凪」
そうだ、別に名前で呼ぶなんて特に特別なイベントなんていらないだろ。
◆
「なんか割と最初から絆レベル高そうだったな」
「人の回想にコメントするのはありなのか?」
「まぁここは、時間軸も良くわかんないし。良いだろ。メタ発言何気にしまくりじゃねーか俺たち」
「まぁ、そうか」
「お前、俺はタイプじゃないから近付いてきたんじゃなかったっけ」
「適当だよ、覚えてるわけないじゃん」
「いや、そんな大昔じゃないだろ2、3年前だよな?」
「そうだな、また会いたい奴とかいる?」
「おぼえてねぇな。何人か同じ学校にいるんじゃね?ほら、あの、女王様いなかったけ?」
「あぁ居ると思う。回想のが、真面目そうだったな。俺たち」
「…………懐かしいなぁ。郷愁に駆られるぜ」
そろそろどっちが喋ってるか分からなくなってきたな。
「これぐらいで、また本編戻るか」
「そうだな」
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