4話 雨宿りの休日
雨が降りしきる中
やがて雨が止む
その場所に着た頃には既に二人の濡れていたものが乾いていた
ソドム「電脳世界は概念で出来ている訳ですから
雨宿りする所を見つけたのですよ」
ライドウ「雨宿り している暇はあるのか?
現実世界での大雨の後には雷が降り頻って
やがては天変地異に発展する危険性がある」
ライドウはそう感じた
電脳世界で見る呪力概念は一定の雨を誇っていたが
それはあくまで普通状態の場合である
ソドム「つまりライドウ君は、雨女が強きに転じれば
この状況が激雨となる そう言いたいのですか」
ライドウ「あぁ だとしたら
雨宿りなんてしてる場合じゃ」
ソドム「だとしたらですよ
「雨宿り」その言葉の意味を考えた事がありますか?
私が考えも無しにここに来ると?」
ソドムが明かりを灯した
その電灯から見えるのは映画館だった
少し古めかしい映画館であった
「雨宿りの休日」という映画が映し出されていた
それは普通の日常光景だった
ソドム「雨宿りの出来る場所
つまりここは「雨女の落ち着ける場所」なのです」
ライドウ「雨女の雨宿り場所が映画館?
いや、違うのか
正確には呪力概念で言えば
雨女が思い描く理想の形が映画となっているって事か」
ソドム「そうですね
あれが雨女が思い描く理想です
ただ…その理想を描くには
もう随分と雨女は負念を拾いすぎたのでしょうね」
ソドムが一歩一歩上映されている画面に近付く
ソドムが近づく事 それをライドウは察した
止めに入ろうとすると
辺りを生態化カードが邪魔をする
殺食欲に火を伴わせる呪力を宿した攻撃で
カードを燃やす しかしその時間もあって既にソドムは画面に触れていた
つまり「雨女の理想への拒絶」である
ライドウ「ソドム お前なんてことを
それをすれば現実世界でも発狂するはずだ
何故なら雨女の電脳世界は壊れてなかったはずだから
この雨宿りが在ったから」
紳士は笑って答える
ソドム「ご名答
だけど真実は本当に真実であるかどうか
聊か疑問ですよ
特に私のような「ST堕ち」した人間にとってはね」
【ST堕ち】
≪ID世界から何らかの形で
ST世界へ落された者の総称≫
その瞬間
ライドウは雨女の呪力の脅威に翻弄されていた
蹂躙される秩序の中に溢れる呪力による激雨
その中でひときわ目立っている魂を見つける
ライドウが手を伸ばすとそこには一人の少女がいた
ライドウ「リトス…?
何故お前なんだ」
ライドウには分からなかった その意味が
雨女の正体がリトスだったのかは分からない
ただ、それが自作自演的に生み出された制御装置だと思うと辻褄が合う
ライドウ「お前は…やっぱり優しいよ
ソドム どこにいるんだ
お前が解放した呪力は現実世界へと還るはずだ」
電脳世界の拒絶を成された事で
メタコードは現実世界へと裏返しされていく