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第0章…単純にプロローグ。
初めまして。テープコーンです。
他の場所では『土方 樹』、『扠烙 訊』、『霊狼』等と名乗っています。
諸事情により、書いている小説が進まないのでその小説を題材に、自分を異世界召喚してみました。
不定期更新になると思いますが、よろしくお願いします。因みに警戒してR15です。
多分戦闘描写とかありそうな気がするので念のため。
新調したばかりの、お気に入りの小型ノートパソコン。
カタカタとキーボードの上を踊る指が文章を構成していった。
お気に入りのアニメキャラクターとのコラボヘッドフォンを付け、聞いている音楽は最近ハマったアニメのオープニングとエンディング、そして映画の主題歌だ。つけっぱなしになっていた深夜アニメを見た後のテレビを消して、チラリとパソコン画面下の時間を確認すれば、朝まであと四時間ほどある。
「一旦、休憩~・・・」
机の上に置いていたホット烏龍茶の入ったマグカップを傾け、ガサリとお菓子置き場と化している自身の左サイドからゲームキャラとのコラボ商品である四角い飴玉を口に放り込む。濃厚ミルクレーズン味と書かれたその飴は慣れれば結構・・・否、かなり美味しい。
「初めて食べた時はイマイチだと思ったけど、これ、気に入った。リピ決定。推しのシールも欲しいし、丁度いいか」
うん。と誰に言うわけでもなく告げて、ヘッドフォンから流れる音楽に合わせて近所迷惑にならない程度に鼻歌を歌い、傍らにいる愛猫の背を撫でた。
「休憩序でに、ちょっと読みなおそうかな?」
パソコンの画面に視線を向け、飴を口の中で転がしながら先程まで自分で書いていた小説を最初から読み返す。
これから先の展開をどうしようかと読みながら悩み、小さく溜息を吐いた。
「この先の展開、全く思い浮かばないよ?どうすんの?いや、どういう話でどういう風に終わるかは決まってるし、話の大筋も決まってる。ただ、書いてると迷子になるんだよなぁ・・・どうしたもんか・・・」
書きたいことがありすぎて、うまくまとめられないどころか、寧ろだんだんと長くなっていく始末である。
「うーあー!」
唸ってみても状況は変わらない。
ガリリっと飴を噛み砕き、咀嚼して胃の中に押し込んでお茶を飲んだ。
もう一つ。と、飴に手を伸ばし、口の中に放り込む。
同時に窓も開いてないのに強風が襲い、自身の下に魔法陣が現れた。
「・・・へ?」
驚きと理解の及ばない事態に、思わず間抜けな声を上げる。
目が眩むような光に反射的に目を閉じたと同時に、自分がこの世界から消えていくのが分かった。
*****
風に揺れる木の葉の音、鳥の囀り。目を閉じていても届く明るい光。
森の中に居るのだろう。森の中特有のニオイがした。
周囲に敵意を感じるモノはなく、何時までも目を閉じているわけにもいかないので、覚悟を決めてそっと両眼を開ける。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目の前に、『何か』が居た。否、いいなおそう。
『何か』ではない、コイツは私の愛猫である『一松』だ。
だが、それは単純に外側だけの話で、どうやら中身は違うらしい。
どうしてわかったのかと言うと、何かのオーラが・・・漏れ出ていた。
「・・・どちら様?」
「何言ってるの?君の猫の『一松』だよ?」
スリリっと、一松が甘える時のように此方に身体を擦りつけながら有ろうことか、『ソレ』は私の問いにそう『答える』。
「ソレは外側の話でしょう。自分は中身の話をしています」
そう溜息混じりに言えば、文字通り、一松の皮を被った何かは首を傾げて口を開いた。
「驚かないんだね?」
「十分に驚いてますよ?まだ思考が追い付いていないだけです」
「それにしては冷静過ぎない?」
「まぁ、自分の部屋に魔法陣が現れた時点で諦めたから」
「うん?」
「自分は、二次創作及び、一次創作の小説やイラストを書いて同人誌を発行していた上に、アニメや漫画、ゲームが大好きな人間ですからね・・・」
「嗚呼、察したって事ね?これが、異世界転移であると」
「まぁ。ソレで、キミは誰?一松に何したの?」
もう一度猫に問う。
だが、なんとなく彼の答えを私は知っているような気がした。
なんせ、私は二次元オタクである。
ようは「テンプレ」とでも言えばいいのか、猫の中身は絶対に自分をこの世界に呼んだであろう神か何かだ。
「知りたいの?君もう答えを知って居そうな気がするけど?」
「夢なら、さっさと覚めてほしい・・・」
「残念だけど、現実。ボクは君をこの世界に呼んだ、まぁ神様みたいなものかな?どう?答え合わせはあってた?」
「合ってたから、絶望した」
「ふふ。酷いなぁ」
「まぁ其処はいいよ。キミ、名前は?」
「名前?んー、教えてもいいけど外側が君の猫だし『一松』でいいよ?その方が呼びやすいでしょ?」
「良いの?」
「うん。ボクは神だからね。個体名はその時の人々の信仰によっても変わるものだし。今回は外側に名前を合わせるよ」
「分かった。っていうか、ソレ、本当にどうなってるの?一松はどうなってるの?」
「大丈夫。用が終れば二人とも元の世界に返してあげるし、一松は今ボクと同居状態で眠ってるよ。この世界に居る間はボクが君の案内役を兼ねて主導権を持たせて貰うことにするよ。いい?」
「怪我とかしない?」
「しても大丈夫。ボクが主導権握ってる間はボクの身体。ほら、君が大好きなあの作品のシリーズの聖女と同じ状態。まぁでもボクが死ねば一松に主導権戻るから気を付けて?一松は元気だけど、ほら、アッチの世界でと同じだから・・・」
「あー、言いたいことは分かる。自分も気を付けるけど、一松も気を付けてね?」
「うん」
「じゃぁ、次」
「君、本当に動じないねぇ・・・」
「まぁ。夢ならそのうち覚めるし、そもそもオタクとしての好奇心の方が強い。一人で放り出されていたらまた違ったかもしれないけれど、幸い自分は一松と一緒だからね」
成程っと、神は頷き、再び自分を見上げる。
「じゃぁ次の話に行くね。まず、ここは剣と魔法の世界、いわゆるハイファンタジーの世界だよ。ソレも君が書いたね」
「・・・ごめん。今なんて?」
「此処は君が書いた小説の世界だって言った」
「・・・嘘でしょ?」
「それが、嘘じゃないんだなぁ・・・」
「なんの為に?」
「え?だって、書くのに詰まってたんでしょ?」
「いや、詰まってたけども」
「だから、実際に自分で体験した方が早いんじゃないかと思って」
「一松?」
「うん?」
「アンタ、馬鹿ァ?」
「アハハ!」
「冗談じゃねぇ‼今まで描いたハイファンタジー作品、二つしかねぇよ‼しかも、書くの止まってたってとこから推測すると今まさに書いてたやつ‼」
「うん。大正解。此処は『魔王』と『魔眼持ちエルフ』の居る世界だよ!」
ニンマリと笑って言う一松に頭を抱えた。
すみませんが、もう一度お願いします
物語のプロローグにしては十分すぎる話だろう。
何度聞いても変わらない現実に、大きなため息が漏れた。