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初めてのファンタジー?小説です。
拙い文章等あると思いますがお付き合い下さい。
昔々、ある孤島で1人の男の子が産まれた。
その子は生まれながらに色白で切れ長の黄金の瞳とタンポポの綿毛のようなふわふわと柔らかい黄金の髪を持っていた。
この孤島の一族に有るべきモノがなく、そしてあってはならない容姿を持っていた。
その子を産んだ者は嘆いた。
何故、こんな容貌で産んでしまったのか、ゴメンね…本当にゴメンと何度も謝り、小さな舟を用意すると赤児の首に小さな袋を下げ柔らかい布に包むと祈りを込めて船を海へと押し出した。
波に揺られて小さくなっていく小舟を見つめいつまでも涙を流しながら手を合わせていた。
紅い月だけが全てを見ていた。
**
どこか遠くの小さな漁師の村の外れに心優しい爺さんと婆さんが2人で暮らしていた。
爺さんは海へ魚を獲りに船を出し、婆さんは干した魚の具合を確かめていた。
とても晴れた天気の良い日だった。
爺さんが漁に出て暫くすると少し遠くを小さな舟が揺れて渡って来ているのを見つけた。
今日は波も穏やかで風も少ない。だが、その小舟はこちら側へとやって来る。
ふと、不思議に思ったが何となく近づいて来る小舟の元に船を近づけて中を覗いた。
すると柔らかそうな布に包まれた小さな産まれたての赤児がすやすやと眠っていた。
「あれまぁ!」
と爺さんは小船に急いで紐を括りつけ離れないようにすると、小さな赤児をそっと抱き上げた。
フワリと柔らかな布に包まれた赤児は甘く良い匂いがして爺さんはその柔らかな頬をそっと撫でた。
「こんな赤児が…かわいそうに…生きているのか?」
そう呟くと赤児は眩しそうに目を開いた。
その瞳は黄金。
フワリと揺れる柔らかな黄金の髪。
爺さんは「か…びと…」と小さく呟くと遥か遠くを眺め手を合わせた。
そしてこの美しい赤児を連れ帰ることにした。
「婆さん、この子2人で育てよう」
「え?お爺さんどうしました?こんな産まれたての赤児…」
海での経緯を話し2人で話し合って、この赤児を育てる事に決めた。
「名を何とするか…」
「お爺さん、この袋の中に入ってるのはなんでしょうか」
赤児の首から下げられた小袋の中には矢尻のような形の血赤珊瑚に似た物が入っていた。
「うむ。コレは首飾りか何かにして下げておいてやろう。形見か何かかもしれんからの」
「そうですねぇ、本当に美しい赤児や。真紅がよく似合う」
「…名は、紅矢とするかの」
「そうですね。良い名ですね」
かくして、紅矢と名付けられた赤児は心優しい爺さんと婆さんに育てられる事となった。
**
「紅矢ー!遊ぼうぜー!」
あれから10年が経ち、紅矢は爺さんと婆さんに大切に育てられ赤児から少年へと成長していた。
周囲とはかけ離れた容姿をしていたが、優しい2人に育てられたからか紅矢自身も心根の優しい思いやりのある少年に育っていた。
「陸多、オレ今勉強中」
「えー!つまんねぇ!遊ぼうぜ!」
フフッと笑って本に目を落とす。
黄金の切れ長の瞳と黄金のふわふわの髪は健在で海の近くの漁師村にも関わらず肌も白いままだった。
そんな村の人間とは容姿が違っていても爺さんと婆さんの人柄もあり心根が優しい紅矢は爪弾きにされる事もなく村の一員として皆接してくれていた。
「紅矢、ちと干物を村の補佐の所に持っていってくれんか?」
「じぃさま、いいよ。すぐ行ってくるね」
干物を預かり村に続く道を歩き始める。
「紅矢ー!どこ行くんだ?」
後ろから陸多が追いかけてきて声をかけてきた。
「じぃさまのお使い。村の補佐の所だよ」
「そっかー!じゃあ一緒に行く!」
陸多は村の長の息子で紅矢とは同い年だった。
学校という物はなく手習塾で村の子供達は家業である漁の手伝いながら勉学に勤しんでいた。紅矢も爺婆の手伝いをしながら週に数回そこに通い勉学を習っていた。
村から紅矢の家まではかなり距離があったが、陸多はしょっちゅう紅矢を遊びに誘いに来ていた。
「陸多は、算術はどこまで進めた?」
「オレは紅矢と違って頭わりいから、体動かしてる方が良いし…」
ポリポリと頬を掻いて誤魔化している。
「村の長になるんだろ?がんばって勉教しないとダメだぞ」
「分かってるって。でもオレ村の外に出たいんだよなー!こんな田舎の海の景色だけじゃなくて色んな場所に行って色んな物を見てみたいんだ!」
「陸多みたいにヤンチャだとそういうのもいいのかもね。でもそれが勉強しない理由にはならないよ?」
「ハイハイ。紅矢は厳しいなぁ」
2人で軽口を叩きながら村へと歩いた。
村へ着くと何か騒ついていていつもと少し違っているように感じた。
「…紅矢、オレちょっとトーチャンとこに行ってくる」
「うん。オレはとりあえず補佐の所に行ってくるよ」
2人は別れ別の道へ進んだ。
補佐の家に着くと扉を叩き、返事を待つ。
「補佐?紅矢です。じぃさまの使いで来たんだけど」
扉が開くと中で数人が話をしていた。
「紅矢か、干物ならそこに置いといてくれ。後でまた使いをやるから」
「補佐、何かあったのですか?村がざわついてる」
「紅矢、お前にはまだ…」
「補佐、紅矢の所は爺さまと婆さまだけだから心配だ。紅矢に話しておいた方が良い」
「…。それもそうか。…紅矢、この付近では無いがここ最近魔獣だと思われる被害が出ているらしいんだ」
「…魔獣?」
「まだわからないがな」
「わからないって?」
「犯人を誰も見ていない。というか誰も生き残っていなかったんだ」
「小さな村がやられてるらしいんだよ」
「まだまだ遠い場所で起こってるからここいらは被害なんて無いんだが、行商人がそう話してて…」
「食い散らかされたような人の亡骸と荒らされた家だけが残ってるらしい」
「女子供も関係なくやられて、若い女子は特に酷い有様らしい」
補佐と村人達は口々に話してくれた。
「で、いつこっちの方にもそいつらが来るかわからない。用心しとくに越したこたぁない」
「あ、それで家はじぃさまとばぁさまだけだからオレが…」
「そういうこった」
「…怖いですね。都の方はどうなんでしょうか」
「まだそっちは被害のひの字も出てないらしい」
「だから、まだ何も対応してもらえないらしいぞ」
「紅矢、気を付けてやってくれな。爺さまも婆さまもこっちに来いと言ってもなかなか首を振ってくれない」
「はい」
「じゃあな、爺さまと婆さまにも気を付けろと伝えておいてくれ」
補佐の家を出て家に戻ろうと歩き始めると陸多が居た。
「紅矢、聞いたか?」
「うん、聞いた。怖いね」
「オレ今まで以上に鍛錬する!そんで村を守るんだ!」
「うん。そうだね、オレも一緒に鍛錬する。皆を守ろう」
ゴツンと拳を突き合わせて約束をした。