ドーナツの穴ぼこを埋めたい女
「これ、お土産なんだけど、いる?」
女は、友達が旅行した証として、買ってきたドーナツをもらった。
「これ有名なドーナツで、結構良いヤツだからね」
女は、何も言わず、おもむろに、鞄を漁り始めた。
そして、半透明のタッパーから、楕円形を取り出すと、ドーナツの穴に突っ込んだ。
「えっ、ちょっと待ってよ。普通たまごでドーナツの穴埋める?」
穴があったら、埋めたい、そんな女だった。
ドーナツは、球体の食べ物で埋めてから食べ、ちくわは、棒状のもので埋めてから、食べるのだ。
「穴が気に食わないと、思っていることは知ってたけど、まさかドーナツまで埋めるとは思わなかったよ。普通に美味しいドーナツだったから買ってきたのにさ。普通に食べてほしかったな。ドーナツは簡単に二つに折れるからね。折っちゃえばもう、曲がった棒だからね」
女は、穴が埋めたくて、埋めたくて、仕方がない女。
タッパーから、楕円形を取り出すと、友達の口に、しっかりと押し込んだ。