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親作品(テスト)  作者: 浮波飽駄
鬼畜高校九野咲、まず登校が鬼畜でした。
7/9

半人半鬼兄弟の憂鬱。

ちろるお気に入りのキャラ、幽鬼の銀・誉兄弟の差し込みストーリーです…過去については後日。

札を貰った帰り道、銀と誉は互いに何かを考えていた。しかし浮かぶのはただ一人の少年の技術…そこから来る畏怖と衝撃だった。

「…銀」「なんだよ、誉。」

静寂の布に針を通した誉は何かを言いたげだった。

「あいつの事だろ?すげぇよな。」

貰った札を腰付の鞄からちらちら覗かせながら言う。

「えぇ…凄いです、こんな札を軽々と…僕のは汎用ですがあなたのは専用でしょう?そんな物を」


「違う、お前が本心で思ってることはそういう事じゃないだろ?」

間髪入れずに誉の言葉に被せる銀に、誉は少し嫌悪とありがたみを感じる。


「…何を根拠に。」自分でも分かりきっている…だが、認めたくなかった。認めたら…あの日を認めることになるから、自分の考えが間違っていても忘れたかったから。


銀はそんな誉の問いに答えず九野咲の入学試験がもうすぐな為に早めに開店している露店の一角でかでかと«豚角煮肉まん~持てる白飯と角煮~ »と描かれた看板の(もと)。屋台にて角煮まんを2個購入して誉にひとつを渡し、近くの長椅子を指さして

「ほら、少し話そうぜ。」誉に提案する。

「…そうですね、話しましょう。」


誉は少しだけ表情が柔らかくなった、暗い顔は何処へやら普段見せない誰かを頼る顔…兄として見てくれている顔を銀に見せる。照れくさい銀は角煮まんを頬張ることで表情を隠す。もちもちとした厚い皮に包まれた角煮は、噛み締める事に味が溢れる。肉の柔い感触と繊維…筋が(ほど)ける感覚は舌に異様の快楽を放つ。そして銀のお気に入りは…


「うめぇ!この時期限定肉屋の梅特製角煮まん!ここが上手いよな!」銀が指差すのは豚肉の白い脂肪の部分である…確かにここは他とは一線を引いて柔らかさが違う。その部分はよく味が付いており、まるで形を持った味…噛めば(とろ)けて美味になる。


その蕩ける瞬間こそ銀が一番の舌鼓(したつづみ)を打つ瞬間!味を食べながら厚い皮を頬張るとそれは角煮と白飯を食べているかのような感覚…これこそが角煮まんの『持てる白飯と角煮』に相応しい理由とそれを背負える器だ。


「美味い…お腹が空いている時でもこの満足感は計り知れないですねぇ!」珍しく大きな声を出し、食べる勢いも強く全体的に普段の誉とは違う一面を見せる。

「お、勢いすげぇな。角煮まん食う時だけ俺より食べる速さが段違いじゃないか?」銀は角煮まんを味わって食べているが誉は逆。角煮まんは()っ込む事が一番美味い食べ方と考えている。


が、途中で道の端の路地から視線を感じて角煮まんを咥えながら振り向いてしまう。

兄者(ふひざぁ)あほこに()れかいはへんでひたか?」「言ってる事が聞き取れねぇよ。」

苦笑しながら角煮まんを買った時に付いてくる口拭き紙で誉の口を優しく拭き取る。


そんな誉と銀の様子をまじまじとこっそり見詰めるという矛盾した行動をするのは…同学年女子である。誉は3年の中では頼れる存在、故に人気を博している。

顔も悪い訳ではなく、幽鬼特有の額から出てくる蒼い角がかっこいいとの事で誰からも人気がある…が今の様に本人が見かけによらずそういう事に鈍感な為、恋仲に発展することは無い。そして、実は銀も人気だったりする…今の光景がそうだ。


「銀…自分では拭けますよ。」

銀は何言ってんだかと誉の口を拭きながら

「角煮まん(くわ)えたままで、手を角煮まんから離そうともしない奴に言われたかないわ。」

そう言いながら丁寧に角煮のたれを拭いていく、誉も別に嫌がらず少し恥ずかしそうにしている。


…ここである、普段二人は冷静頓着(れいせいとんじゃく)豪快無頓着(ごうかいむとんじゃく)と根っから反対な二人で兄弟としてでは無く、二人で一人の組として接している。それがいざ兄弟として接してみると、性格が反対になる。


普段細かい所まで気にしない銀だが、兄弟の時間となると弟のあれやらこれやらが兎に角気になる。普段物静かで食事等を綺麗に済ませる誉は豪快さが増して何もかもが雑になる、口の汚れも気にしない。

要は銀は何かとこだわる様になり、誉は何もかも考え無しに行動する。


そんな所が良い!と、そういう事らしい…まぁそれは置いておいて。誉の口を拭きながら銀は誉に優しい視線を向け、改めた姿勢で誉を見る。

「なぁ、あの日あの時。俺はお前を庇って悪いと思ったことは無い、そんな事はいいから今の俺を支えてくれれば良いんだよ…幽鬼のたった一人の弟で、その兄何だからさ、な?」


誉はひとつ頷き銀とは顔を合わせずに反対を向く、見えるのは京一の大きさを誇る湯炊き場。

いつかあそこに暇な時に兄と行きたいと思う…囁かな願い。(願ってもバチは当たらない…そうでしょう?人間を辞めた今でも。)

誉はいない誰かに小さく大きな願いを願う。


「良しそろそろ行こうか…あー3日後から入学試験かぁ、こいつは第二だから俺らは警備担当じゃねぇな。あいつの室、見たかったんだけどなぁ。」

銀はいつもの様子に戻った、こいつとは仁の事で札をひらひらさせる事が仁を表すらしい。誉も立ち上がり角煮まんの店主に礼を言って兄の後を追う。


「僕らは休めますかねぇ…学長は人遣いが荒いですから。」去年を思い出し身震いする誉。

「やめろよ特別休養で1ヶ月休んだのはいい思い出じゃねえか。」そうは言うものの銀は目が死んでいる。

「…僕らは親に従うだけです、それ以上を求めてはいけない。」誉はいつもの無表情に戻り冷たく告げる、ため息がすっかり癖になっている銀は気持ちとは裏腹に、この何気ない日常が案外楽しい物だと思うのだった。






次回投稿は未定になります。

投稿はしますが…3連休なので書けるかな。

次回は第二陣試験前夜編となります。

段取りがかなり多かったですがもうすぐ学び舎の中を書けますね!わくわくですよ、では次回で。

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