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親作品(テスト)  作者: 浮波飽駄
鬼畜高校九野咲、まず登校が鬼畜でした。
3/9

波乱万丈!馬車の旅。前編

ちろるです、最近雨がよく降りますね。

秋の雨は草木の匂いがいつもの雨より芳ばしく匂うのでいい香りがします。

時雨が一番いい匂いですね。

9月6日、学び舎九野咲の始まり。

この学校は中高一貫で7月が始まりと言う珍しい学舎で有名である。その理由は学び舎九野咲は他の学び舎とは学ぶものが違うから。

その学ぶものとは何か?簡潔に説明しよう。



太古からこの地は妖という物に脅かされてきた。

作物は荒らされ、女子(おなご)は攫われ、挙句の果てに命を奪い力を蓄えようとする妖まで出る始末。

抗うすべを知らない人々は困窮し、今にも息絶える半ばであった。


それを哀れに思った高天原の使徒…通称言の葉。

名乗る名が無いことから言の葉と太古の住人は天から舞い降りた彼女をそう呼び敬った。

彼女はある力を地に授けた、それは言霊の法。


言葉には力が宿ると言われているが、それを体現したのが言の葉である。

言霊の法は妖を祓う術となり、やがて妖術(妖を祓うすべ)と呼ばれる様になった。


力をさずかった地を中心に、人々は村を作り町を作り都市を作り…そして、京を作った。

それが今学び舎九野咲が建つこの地である。


そして今この地で、妖を祓う者達がその術を習いに

九野咲へと各地から集まるのである。無論それは、

業の楽一族長男"仁"。

業の静一族次女"寧"。

この二人もその内の一人である。

業…この字が付く一族については割愛しよう。



学び舎九野咲では基本教育に加え、適正のある術、

または自分が好む術を優先的に習うことが出来る。

ここが学び舎九野咲の人気な点なのであるが、設立者兼学長を務めている九野咲は適正を活かしたいがための制度なので「なんか人気出た?!」なんて影で驚いていたりする…正直棚ぼたなのである。

こんな事が出来るのは設備や教員の幅が広い九野咲等の少ない学び舎のみで、希少な場ではあるだろう。


しかも学寮が安い!学費が待遇に対してもっと増やしても良いのでは…と声が上がる程安い!また授業が面白い!など高い評価を得ている。

これは九野咲の意向なのだが、せめて自分が出来る範囲で生徒の不満を減らし学業に専念して貰いたがためだそうだ…九野咲、君は聖人なのか?


何とも夢を見ているかのような場所であるがその前には審査という物が存在する。それはとても厳しく、

ここさえ通れば後は自分の進路を絵に書くことが出来ると言われる程だ。実際、これを通過した者は名誉…は言い過ぎかも知れないが尊敬の眼差しが絶えないことは違いない。

しかもまだ子供の審査突破者に鬼祓いを頼む者も出るそうで…これだけでも凄みが伝わってくる。


この審査は中高一貫である学び舎で、中等部に入る為に受けるのは勿論だが、中等部から高等部に進む生徒達にも課せられる。

九野咲の恐ろしいところは、どんなに中等部で優等生

だったとしてもこの審査で"ある一定"を超える間違いを起こせば躊躇いなく落とす所だ。

高待遇なだけあってその中身は厳しいものである。


上記の通り厳しさもあれば憧れを抱く一面も持つこの

学び舎は、各地からの応募者で京全体が埋まり、祭り騒ぎ…いや、祭りが開かれる程だ。

審査は2日にわたって行われるので、祭りも2日どんちゃん騒ぎだ。祭りを楽しむためだけに学び舎とは別に観光者が訪れる程でもある。


この様に、名に恥じぬ教育・憧れ・名誉・影響

4つの強大な力を持っているの学び舎九野咲である。

次回号もまた、学び舎九野咲特集を載せさせていただきます。


月刊文集・言の葉の調べ。



「凄いよね、九野咲って!」

得意気にふふんと鼻を鳴らすのは仁である、彼は九野咲の中等部卒で無論高等部も受けるとの事でいまは来るべき9月6日の為移動中である。

ちなみに現在8月28日、馬でもかなりの距離があるので早めの出発は免れなかった。

「確かにすごいけど仁が誇る事じゃないでしょ」

仁の言葉に対して敢えて素直に突っ込むのは寧である

普段茶化すくせにこういう時だけ真正面から突っ込むので仁はムカッと来るのである。


「そうじゃないよ、九野咲の中等部を卒業したのが

凄いって言ってるの。」

「…?審査に受かる事が凄いって言うのは分かるけど、卒業するのがすごい事なの?

ここには"受かったら後は絵に書くように"…って」

確かに不思議である、仁の言っていることは文集と噛み合わないのだ。


「寧、それは違うさ…確かに、そこに書いてあることは半分合っているかもしれない。」

仁は今まで違い神妙に言葉を紡ぐ。地味に格好をつけているのがまったくもって似合っていない。


「半分…?何が半分?」

答えて、という様に文集を仁に放り投げる寧。

仁は文集を受け取ると、例の絵に書くというページを

開き、ある文章を指で指す。


「…ふむふむ"程である"か。そこがどうかした?」

何もおかしい点はないと思うと言いたげな目を寧は仁に向ける。

「確かにこれだけだとおかしくない、だが中等部卒の当事者から言えばこれは語弊があるんだよね。」


どういう事だと寧。

「次にこの点、"ある一定"これとさっきの共通点は分かるだろ?」

「なんだか抽象的で分かりにくい文章って事?」

そうそうと首を縦に振る、こういう勉強方面の時は寧より仁が生き生きとしている。


「極めつけはこの文章、"これだけでも凄みが伝わってくる。"確定だね。」

何がだよという野暮な質問はせず、さすがに暴論では?と寧は思う。

「いやいや、単に情報を開示出来ないだけなんじゃないの?それだけで嘘と決めつけなくて…あっ」

寧は気づいたようである、抽象的で肝心な部分が分からない文章。それは実際に聞いたり見たりしているかしていないかの違いだという事に。

「盲点だったね、最初に言ったろ中等部卒って。」


「寧、この文集は正直僕にとって要らないものだ。

何故なら僕は内容の中心にいるのと同じだからだ。

僕がこの文集を書くなら、"審査に受かったら絵にも書かなければいけなくなるほど厳しい勉強生活が待っているだろう。"だな。」

(まぁ、最初の方になんで人気出た?!って書いてあるからあながち嘘を書きたくて書いた訳では無いというのは分かるんだけどね。)

仁は九野咲の誇りはどこへやらと厳しさを強調した文章を作り上げる。

…いや、誇りを持つからこその厳しさの強調だろう。

取り敢えず小さな事で誇るのは子供らしいと言えば子供らしい。


「キミってほんとそういう所変わんないよね。

意地悪くて、間違っているものが許せない所。」

呆れた様に…否、呆れてため息が出た寧は反面ちょこっと笑っていた。

「君も変わんないだろ?9年前倒れて体力が尽きかけてる僕に、無尽蔵にあれは何?これは何?と聞いてきた彼女が今もいると思うと恐ろしいね。」

仁も反射的に笑みを返す。


そして二人仲良くもう一度文集を読み直し…

「「あーあ、九野咲が楽しみだな!」」

声を合わせて微笑が篭った声が重なる。

「いやいや、君は中等部にも入ってないじゃないか。僕は君と勉強したいんだ、ちゃんと受かってくれよ?」心配する仁を尻目に寧は笑う。


「仁はいつでもボクの事になると心配性じゃない?」挑発的な目で仁をみる寧。

「馬鹿言うなぁ…君はなんやかんやで解決する規格外じゃないか、言うなればその方面の化け物だな。」

仁は挑発を煽りで返す、元気づけも兼ねてだが。

「化け物かぁ…いいな!よしっ今日からボクは化け物だ!探求の化け物、良い響きじゃない?」

笑った顔は日差しのせいか眩しく見えた。

(なんやかんやこんな風に風向きが彼女に味方するのは、彼女の天性だろうか?)



明るくて、知りたがりで、ちょっぴり意地悪で。

業の一族にこんな人がいる事が僕には驚きで…

でも違う、印象の高低差が思いがけない一撃となったのは事実だ…でもそれはこうも考えられる。


周りが、酷かったんじゃないかな?


…悲しい事実だ、僕自身権力だのお金だのそんな物に興味はない…なのになぜ僕が後継者なのだろうか?

そんな環境に置かれていた僕を引っ張ってくれた彼女に僕は感謝している。じゃないと、僕は抜け殻の様になり続けていたかもしれないんだから。



「おーい、少年!そこは賛同するとこだろー?」

寧がにひっと口を三日月にして笑う。

釣られて僕も笑ってしまう、でも悪いことじゃない。

「誰が少年だ、15はもう青年だろう?」

「うーん…まだ少年じゃない?」

割と真剣に考えて返答する寧。

「わざとだよっ!察してよそこは…」

あははと楽しげに笑う寧、そんな彼女は憎めない。


楽しげな会話が馬車の中で続く、と言っても会話しかする事の無いが正解か。

そんな中、仁は寧の初めての九野咲の審査について、

注意を行っているところだった。

「寧って興味を持ったことしか調べたりしないよね、

そこ、駄目な所だと僕は思うけどねえ。」

寧は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「うぅ…やっぱり駄目だよねぇ、そこはボクも同意見さ、さっきの文集だって指摘されれば簡単なことだったのに、間抜けにもボクは色々質問だの仁に任せちゃってたしねぇ。」


割と気になる点らしい、落ち込み具合が尋常ではない…が、寧の言う事はもっともだ。

先程の文集のくだり、たとえ関心が無くとも仁が御丁寧に"鍵"を並べた時点で察しがつく。

だが寧はそれに気付かず暴論では?と疑ってしまった…明らかに異常な視野の狭さ、説明されたことを忘れる感覚の短さ…問題である。

「君はひとつの事に集中する時に真価を発揮する。

でもそれはいい事だけじゃない、視野が狭まるという事は発見を見逃すことに繋がる。

それは君の本望ではない、そうだろう?」


これでも仁と寧は長い付き合いなのだ、互いをよく理解している。だからこうやってたまに善し悪しを言い合うのがすっかり恒例となっている。

実際、自分の弱い所を真に自分で理解できるものなどこの世に居ない。二人はそれを理解している。


「流石に長いね、キミの言う通り。ただ癖って言うよりかは…いや癖なのかな?」

寧はいつの間にか自分の言っていることに確証を持てなくなっていた。

「そこもだな寧、何かを確かめる時や考える時、そんな時は一番有力だと思ったものを掴んで離しちゃだめだ。確信を持って考えていかないと何時までも進展がないからね。」


ぐぬぬと可愛い唸り声をあげる寧、慣れていけばいいと諭す仁の二人は相性がぴったりだと思える。

と、ここまで何かとダメ出しをされている寧だが、

これも審査を通るために必要な事なのである。

正直今寧に教えを説いている仁でさえ、受かる自信は半々と言ったところなのだ。

いくら中等部卒と言っても高等部に入るには訳が違う、油断は禁物である。


「お客さん、そろそろ野営に入りますぜ。」

と、完全にここまで空気だったが馬で京へ向かうのだ。当然仁と寧は乗馬なんてしたことが無い。

ここまで来れたのは馬乗りに乗ってきたからである。

そこに御者が居るのは当然である。

「はい御者さん、今日はどのくらい進みました?」

「んーそうですねぇ…大体京まで後2日ぐらいですかね、この連なる山…六拡散を越えれば何でね。」


(かなり進んだのか…六拡散まで来たとは、気づかなかった。中等部の時に京まで言った時は3日位かかったのに、今回の御者さんはかなり上手だな。)

ここまで大した揺れを感じなかったのに、かなり速い到着になりそうである。

「そんなにですか?!話していて気づきませんでしたよ、しかしそれではかなりの速さで移動されたので?あまり振動は感じませんでしたが…」


「お二人がそれだけ集中されていたという事ですよ、それに少しだけお話を耳にしましたが貴方は中等部の時の道のお話をしている。

最近整備されたのをご存知ないのも仕方がない。」

雄弁にかたる御者だが、仁は少し疑問を感じていた。


(整備…?中等部から高等部までの1ヶ月と半月でそこまで変わるものなのか…?)

京と業の楽本家との行き来をする上で、京から楽へ

楽から京へと、少し道が異なるのだがそれは

六拡散を通るか通らないかの話…なにか妙だ。

「…なるほど、まぁ客の僕が何を言っても意味を為しません。それに京には早くつけた方がいい、ありがたい話ですよ。なぁ寧。」

「ん?そうだな、御者のおっちゃんありがとね!」

「いえいえ、私よりも馬を褒めてやってください。」


人の良い御者だ、寧は言われた通り馬の鼻を撫でてやっている。可愛いーと目を輝かせ、馬に餌をやる寧を横目に、先程からの違和感を気のせいだと振り切る仁。(なんら起きないさ、考え過ぎだな。)



ふぅ…と一同は腹の限界を告げる声をあげる。

「おっちゃんありがとー!馳走になったよ…」

実はあの後、気のいいおっちゃん(寧が呼んでいい?と聞いたら了承された。)が予定では3日かかる所を2日で済むということで、少し多めに夕飯を作ってくれたのだ。


ちなみに夕食は卵おじやだった、かなりの美味しさ…

たまにざらっとするのは岩塩らしい…が

「遠慮は要りませんよ、貴方達は九野咲に入学するのでしょう?旅の道中ぐらい楽をするべきです。」

「いいの?じゃあもうちょっ」

「お心遣い感謝します、ですが僕達は食べ盛りと言えど限度がございまして…今日はこのくらいでまた明日食べさせて頂きます。」


仁は眠くなっていた為、寧の言葉を遮って食事を辞めにした。

「…?どうしたの仁?」「お前は、眠くないか?」

寧は仁の問いかけに首を傾げる。

「いいや?眠くないよ、ただおじやのせいか身体があったまってきたけどね。」

(あた…たまった?なんか…意識がっ朦朧と、してきて…貧血みたいな。)


「そうか…寧、僕は寝るけど…これ。」

「御札?」目の形が書いてある幾何学模様の入った御札を仁は寧に渡す。

「袖か胸元、何処でもいいから盗られない場所に入れとけ…」仁は今にも眠そうだ。

「分かった、もう寝なよ…辛そうだよ。」

「あぁ、また、明日な…ね…い…」


仁は眠ってしまった、御者と寧を二人きりにその場に残して…これから始まる修羅場は壮絶なものとなった


続く。

今回は前後編とわけさせていただきます。

表現の間違い誤字脱字等ございましたらコメントを書いて頂ければ幸いです。

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