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親作品(テスト)  作者: 浮波飽駄
鬼畜高校九野咲、まず登校が鬼畜でした。
2/9

疑念の少女と確信の少年。

こんちはーちろるです。

疑の少女を信の少年が解きほぐす!


夏が終わり、秋が来る。



それは至極当然の事…しかしボクはそれに異議を唱えたい。夏が来たあとにまた夏が続いても別におかしいことではないのでは?幼稚な頭で大層なことを考える。ボクは小さな頃から自然に疑念を抱き続けた。


やがてその疑問は晴れて解消される。

その日一人の男の子が、家の近くの森に倒れていた。

身なりは綺麗で虫か何かを取ろうとしたのか、

網と何か分からない甘い香りのする黄色い液体。

ボクは初めて見る同世代の男の子に興味をそそられた、ボクは進んで看病した。


塩水を飲ませて、額を濡れた布で冷ましたり。

お屋敷の使用人さんが作ってくれた粥を食べさせたり、とにかくボクは必死だった。

何であの時そこまで必死になっていた理由は今でも覚えている、"外の世界に興味があったから"。


毎日家でよく分からない楽器や、変な遊び、女のそれがなんとかかんとか…うんざりだった。

だから未知という物に触れてみたかった。

でも、最初はなんと言っていろんなことを聞けばいいだろう?君のことを聞かせてよ!いろんなことを知りたいのさ。


そんな事を考えてたら、ある日男の子は起きた、驚いた事にその後は業の楽一族の長男である事が分かった…当時のボクは関係の無いことと割り切って知ろうともしなかったが。


起きた彼に何かを聞く大人達、居なくなった折り合いを見てボクは忍び込んだ。

母様と父様からはダメと言われたことだけど、当時のボクにそんな歯止めは効かなかった。


その子はボクを見て「君誰?」と疑いや何やらも無しに、一直線に聞いてきた。

それがボクには眩しかった、一直線に聞ける勇気、

当時の彼は元々そういう子だったのかもしれない。

なんの他意も無く自然な行動だったのかもしれない。

でもボクはますます彼に惹かれていった。


ボクは当時家族に言うことを聞かない厄介者として、愛されてはいたが少し疎ましく思われる所もあった。そんな視線がボクは怖くて、真っ直ぐ疑問をぶつける事が出来なくなっていた…それのせいだろうか?


彼は仁と言うらしい、私は寧、二人で自己紹介というものをした!初めてではないけれど、何処か新鮮な自己紹介。同世代だからだろうか?…心がほっこり?

分かんないや、でもあったかくなった気がする。


彼は博識で、学問を学んでいた。

ボクの言うこと全てを理解し、的確な答えを出してくれた…満ち足りた気分だった!

これまで6年掛けて溜め込んだ疑問がたったの1ヶ月で全て解決しちゃうんだもの。


ボクは彼に感謝した、疑問を解いてくれてありがとうと。そしたら彼はこう言った。

「君はもっと疑問を持って解決したくないかい?

長い悩みが解決する時ってすごくスッキリした気持ちにならない?だったら僕と学問を学ぼうよ!」

「で、でも…お父様が許してくれなくて…」

「本当にそれでいいのかい?本当にそれで満足?」


声にならない声が出た…ボクの飽くなき探究心はそれに逆らうことは無い、だからあの時ボクは一つの決断をした。一緒に学ぼうと、言われた日の事だ。



「父様」ボクの改まった声に少し驚く父様。

「どうした、寧。」怪訝な目をこちらに向けてくる。

「私は、学問を学びとうございます!」

出来るだけ、丁寧に、言葉遣いを普段から改めて。

頭を地につけて、必死に必死に…今思えばそれは逆効果だっただろう。


「…お前は普段生意気な口を聞いて、お願いする時だけ掌を返すようなことをするのか?」

父は心底呆れたような眼差しをこちらに向けてくる。

「父様の言う…でも、ボっ私は!」

感情が高ぶり、素の口調が出てきそうになる。

「はあー……良い」「えっ」父はなぜ二回も…と愚痴

を呟きながらもう一度はっきりと言う。

「良いと言ったのだ、良いと。」


ボクは、信じられなかった…当時のボクは。

今思えばあれはボクの探究心を馬鹿みたいに発散させる為だったと…思う、でもそんなの関係ない。

眩しいあの子と一緒に知らない事を知れるようになる、それだけが嬉しくて。

母は猛反対した…正直母では無く父に相談したのはこれが原因。学問に励むのは男のみ、女は嫁ぐ先に気に入って貰えるよう女を磨くのみ。


なにそれ?馬鹿みたい、母をこの頃から急速に嫌うようになっていた。女は嫁げ?ふざけるな。

母はそうしてきたかも知れないけど、ボクは真っ平御免だね。好きでもない男と権力だの意地だのを保つ為だけに結婚?揃っておめでたい人達だ。

でももうそんな日常とはおさらば、九野咲先生という方が学長をしてる学び舎に入る事となった。

それが決まった頃に、仁は楽の族に帰っていった。


別れる少し前、仁は鬼祓いになるのが夢だと言った。

鬼祓いは自然の理を解釈して、鬼を祓うのだと。

今まで見せたことの無い表情で語られるその将来は彼に輝いて見えるようにボクにも憧れる存在となった。



今日、鬼祓いを知ったあの日から9年程だ。

彼はボクの事を好きと正直に言ってくれた。

9年前のボクと初めて会った時と同じ真っ直ぐな目で。嬉しかった、両思いだったから。

ただ、明日は学び舎の始まりで、最後の夏休みで、

その終わりを迎えるこの夜で思ったことだが。


「ボクの何処が好きか、もう少し聞いておくべきだったなぁ」ボクは馬鹿だなぁと独り言散る。

困ったような儚い笑みに、夜の暗闇は何をも応えようとしない。ふっと蝋燭が消えた。

それは就寝の告げ、体がなんだかだるくなる。

体に任せてそのまま布団に落ちる。「気持ちいい…」


寝巻き浴衣がひんやりとして、寧のしっとりとした肌が擦れるとまるで水の中にいるようだ。

九つ山の川で仁と水浴びや泳いだりした時を思い出す。今日仁のことを考えてばっかだ。


枕に顔を埋め、また繰り返し今日を口ずさむ。

ふひひっと女に似つかわしくない笑いを零し、

「幸せ…」二文字に合わない重みが篭った言葉が出る(あぁ…ボクは幸せだよ、君に好きと言われたんだもの。でも、もうちょっと回りくどく言って貰った方が良かったかなぁ…仁に求めちゃそれは欲が過ぎるか)


さりげなく仁はこの時日記を書く筆を落としそうになった。(なんか…悪寒が…嫌なんでもないだろう。)


なんでも幸せに感じる…周りの家の明かりが消えて

星降る夜空が綺麗だと感じる。

浮かれているんだろうなぁと今の自分と矛盾する考えを頭にうかべる。

(まぁ間違いなく仁なら真っ直ぐ浮かれてるんだよと

告げただろうなぁ。)


明日は学び舎の中等部から高等部へ進む秋の始まり。

また新しい発見が、私を待っているだろう。


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