二周目 34
俺達はドワイス家に招かれ一泊する。
さすがにこうなっては俺達を広場で野営させる訳にはいかず、俺と親父殿だけはドワイスの館に宿泊する。俺をその時ハンスと同じ部屋に泊まらせた。ドワイスは俺とハンスを仲良くさせて俺達を取り込むように方針を変えたのかもしれない。
初めから友好的な態度を示していればよかったのに、俺のドワイスに対する印象は最悪だ、心の中では呼び捨てになっている。
それでも、ハンスと一晩話すことが出来たのはよかった。ハンスはやっぱり情に厚く真っすぐな少年で今回のことも友達を思う気持ちで突っ走ってしまったようだ。成長して周りが見えるようになれば周囲から慕われる人間になるだろう。今後、何でも力で解決しようとせずよく考えて行動すればなかよくできそうだ。
朝になり俺たちはハンスの村【ガクリン】をあとにする。
出発するときハンスが見送ってくれた。いやいや、ドワイス、俺達の心証を良くしておきたいのなら見送りぐらいしろよ。やるならちゃんとやれと心の中で突っ込んでおく。
ハンスは「昨日は、すまなかった。一晩話して分かった。お前は思ったほど嫌な奴じゃなった。そして、大した奴だ。それとそれと、、、バジとジルのこと頼む。」そう言うと俺に頭を下げる。
「頭を上げろよハンス、俺達もう友達だろ友達の友達は皆友達だよ。バジとジルは俺に任しておけよ悪いようにしないから。」
ハンスは「ありがとう。」一言いうと泣きそうな顔を俺に向ける。本当にバジとジルが大切なのだろう。もしかしたらジルのことが好きなのかもしれない、この時期の、好きな子に対する思いは自分では抑えられない行動にはしたりするからなぁ。なんにしてもバジとジルだけ押さえておけばハンスは暫らく大丈夫だろう。
そして、俺達は【ガクリン】をあとにする。
俺が笑顔で手を振るとハンスも笑顔で手を振りかえす、こうしてハンスとの腐れ縁がはじまった。
【ガクリン】を離れ馬車の中で親父のはドワイスとの話を教えてくれた。
今回のことをなかったことにするために、ドワイスはアースノット家にクライスト伯爵家においての我が家の立場向上に協力することを約束してくれたそうだ。具体的には当主の息子である【アンドリュー・ドワイス】からの情報を当家にも流してくれるそうだ。アンドリューは現在クライスト騎士団の副団長をしており、クライスト家の中では結構重要ポジションに近い位置にいる。ここからの情報はかなり役に立つだろう。バイアスの掛かった情報が流れては来るだろうが何も来ないよりはるかにましだ。
あと、ミヒャエル様と一緒に学院に入学する子供たちの一人にハンスも入っているそうだ。ハンスは同年代ではかなり強い方なので護衛と側近候補を兼ねて随行するみたいだ。
それからのクライストの領都【ベニー】までの道のりは順調だった。
各町で物価、特産品、噂話の収集が所謂市場調査と言う奴が出来かなり有意義な時間が過ごした。
どの街、村では何が足りなくて何が余っているのかを、価格と共に表にしていくと、俺はニヤニヤが止まらない。それを見た親父殿はやや引き気味だが関係ない。この道を往来するだけで儲かる。。。儲かって仕方だない。盗賊や魔物の被害もあるだろうが自家でやればかなりの利益が予想される。なんで、エルウッド商会は商路を開発しなかったのだろう。
ベニーに着いたらエルウッド商会に聞いてみよう。
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