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第十八話 あっさりと

 翌日。

 すでに正午を回り、時刻は午後三時を過ぎている。

 なんだか無性にやる気が湧かず、起きてから何をするわけでもなく、ずっとだらだらしていた。

 その原因は、もちろん昨日のことだ。

 昨日、先生に見つかった僕らは、やむ終えず部室に戻ることにした。もしかしたら柏木さんが来てくれるかもしれない、と。

 しかし、部活終了時間になっても、柏木さんが部室に来ることもなく、なんとも言えない形で解散することとなった、という訳だ。


 昨日のうちに柏木さんにチャットを送っておいたけど、まだ既読もつかない。


「はあ……。でも、このままじゃだめだよな」


 せっかくの休日だし、うだうだしていても仕方ないからね。今日明日と、珍しく晴れの予報だし、今のうちに課題を終わらせて、明日は気晴らしに遊びまくろう。


「そうと決まれば、さっさと終わらせますか、っと」


 声に出すことで重たい尻を上げる、という裏技を使って行動に移す──。

 と、そのとき、携帯に通知が。

 見てみると、送り主は柏木さんだ。仲人部と柏木さんの四人が入ったチャットに送ったっぽい。


「やっと白状する気になったかこの野郎!」


 自分でも変なテンションだと自覚しつつ、チャットを開く。


『みんな、昨日は色々やってもらったのに、何も連絡しなくてごめん。ちょっと立て込んでて』


 立て込んでたなら仕方ないね、うん。

 きっと、恥ずかしくて……みたいな感じだろうけど!


『それで、その……今日晴れてたから、玖珂と一緒に出かけることになったんだけど、その……』


 おっと、本当に色々あったらしい。それにしても、柏木さんにしては煮え切らないなあ。

 苦笑いしつつスクロールしてみると、『付き合うことになった』と、シンプルに一言。


「……えええええっ!?」


 いや、え!? 付き合うことになった!? 柏木さんと玖珂君が!?


『つ、付き合うことになったって、何があったの!?』

『そ、そうだよ! ちょっとくわしく教えてよ!』


 橋本さんと朝日向さんから、驚いたようにチャットが送られてくる。

 僕も気になる、と送って柏木さんからの返信を待つ。

 やがて、『それがよ……』と、短く一言。柏木さんは、そのまま続ける。


『──玖珂を巻き込んで倒れ込んだ後、ちょうどいい雰囲気になったところで南原が入ってきてさ。なんだよ、とか思いながらも渋々用具室を出たんだよ』


 ああ、あの僕らが撤退したところか……。

 阻止できなかったことに申し訳なく思いながらも、読み進める。


『その後いけそうだと思って、意を決して遊びに誘ってみたんだ。そしたら二つ返事で行くって言われてよ。んで、今日めいいっぱい遊んだ後、帰り際に思い切って告白したんだ。そしたら……』

『オッケーがもらえた、と?』

『ああ。昨日のがうまく働いてくれたみたいでさ』


 そう、だったのか……。体育館のときにそうならなかったのはちょっと残念だけど、それでも付き合えたのなら依頼を受けたかいがあった。

 祝いの言葉を送り、そのまま仲人部のチャットへ移る。


『さっきの柏木さんのことだけど……付き合えたようで安心しちゃったよ』


 本心のままに、送る。あっけなかったけど、それでも良かった。

 と、送ってすぐに既読が付く。


『あたしも安心しちゃった! ほんと良かったね!』

『そうだね、私も安心したよ。でも同時に、今回はちゃんしたと反省会を開くべきだと思ったの』


 橋本さんにそう言われて、僕らの立てた三つの作戦が頭に浮かぶ。

 どれも、失敗だった。今回のみの瑛二が立てた作戦も、成功かと言われると微妙だった。


『だから、月曜日の部活はしっかりと反省会を開こうと思います!』


 うん、そうだよね。今回の失敗を次に生かさないと。


『さんせー!! 次はうまくやりたいし!』

『僕も、賛成だよ』

『それで、一つ寺沢君にお願いしたくてね?』

『僕に? 何かあったの?』


 あ、もしかして橋本さんの恋の悩みとか──


『永島君をスカウトしたいんだけど、その役をお願いしたくて』


 違いましたね、はい。

 でも、瑛二かあ……。結構前に、冗談で誘ったことがあったけど断られちゃったんだよなあ……。


『えー? あいつスカウトするのー?』

『うん。紅緒ちゃんだってそう言いながらも、永島君のおかげでここまで来れたって分かってるでしょ?』

『で、でも……』

『わかった、言ってみるよ』

『ほんと!?』

『ゆ、ゆうやっち本気!?』

『うん。入部してもらえるかはわかんないけどさ』

『それでも助かるよ! じゃあ、そっちは任せるね!』


 それじゃあ、忘れないうちに誘っておこう。仲人部のチャットを閉じて、瑛二に『仲人部に入らない?』と簡潔に送る。

 と、すぐに返信が来た。どれどれ、どんな反応かな……。


『いいぞ』

『……今日エイプリルフールじゃないよ?』

『お前から聞いてきたくせにひどい言いぐさじゃねえか。ああん?』


 ハッ、つい本音を送ってしまった……!


『ごめんごめん。いいぞ、なんて言うと思わなかったから……』

『まあ、前断ったしな』

『理由とか聞いていい?』

『まあ、そのなんだ。お前らの作戦手伝うの、結構面白かったんだよ』


 あの瑛二が面白かった、なんて言うとは……。思わずニヤニヤしちゃうよ。


『へえ~?』

『おい、お前今ニヤニヤしてんだろ。月曜日覚えとけよ』


 なぜバレたし……。


『まあ、そんなことは置いといて、このこと仲人部の方に言っとくね?』

『おう。じゃあ、月曜日から部室行きゃいいんだな?』

『うん。反省会やる予定だから、色々考えといてね』


 そんなこんなで、瑛二が仲人部に入ることが確定したのだった。

 さて、課題やるか。

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