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第十七話 いざ、作戦の本番!

すみません、遅くなりました!!(´・ω・`)

 表彰式が無事に終了し、放課後の時間。僕ら『1の2』は体育館の掃除をしていた。

 これさえなければ今すぐ部活動に移れるというのに! まあ、この掃除の時間が作戦のキモでもあるんだけどね。


 ちなみに順位は、一位が『1の7』、二位が僕ら『1の2』、三位が『1の1』だった。

 あんな体育会系クラスが勝つのは当然として……僕ら『1の2』は見事に二位にまで上り詰めたというわけだ。

 いやあ、がんばったかいがあるね。


「おい、裕也。ぼさっとしてないで、さっさと終わらせるぞ」

「作戦のために?」

「……わかってるならはやくやれ」


 瑛二はそんなことを言い残して、モップかけに戻った。

 いつも以上にツンケンしてたし、瑛二も作戦のことを考えて緊張してるんだろうなあ。自分で立てた作戦だし。

 そういう僕も結構緊張してるけどね。まだ二回目の依頼だし。


「よし、さっさとおわらせて作戦の準備に移りますか!」

「だから、そうしろって言ってるだろうが!」


 まったく、そう怒るなって。白髪増えちゃうぞ?



 ──二十分後。


「はー、終わったー」

「モップしまってくる。今のうちに橋本達に連絡入れとけよ」

「はいはい」


 そう言って、瑛二は僕の持っていたモップをひったくった。

 なんて人使いが荒いんだ……。瑛二はそれ以上に動いてるけど。

 ポケットからスマホを取り出して、っと。よし、送信。


「んじゃ行くぞ、裕也」


 ちょうどそのとき、瑛二が戻ってきた。はやいな。


「ここからが作戦の本番、開始だ」


 にんまりと笑みを浮かべて、瑛二が言う。

 ……瑛二、楽しそうだな。ほんとうはドッジボールより、こっちの方が楽しみだったんじゃなかろうか。







「後はあーしらがしまっとくから、戻っていいよー」

「わかったッス! お二人に任せるッス!」

「……凜、玖珂、お願い」

「では、私たちはお先に失礼しますね」


 橋本さん達と合流し、こっそりと地下の用具室を覗いていると、柏木さんと玖珂君を除いたみんなは教室へ戻っていた。

 きっと、柏木さんと仲がいい小松君達が最後だったんだろう。


「本当に、こんな作戦で成功するのー?」

「お前が考えた作戦よりは成功率高いと思うぞ?」

「な、なにをー!?」


 僕の後ろでは、瑛二が朝日向をおちょくっていた。その後ろには橋本さんもいる。

 僕の作戦を台無しにしたのは瑛二だったけどね……。

 というか、朝日向さんはおちょくられすぎじゃないか? きっと瑛二も、朝日向さんの反応が面白くてやってると思うんだけど……。


 僕はふと視線を感じ、意識を用具室へ向ける。すると、柏木さんと目が合った。

 柏木さんは橋本さん達とも目を合わせると、こくりと小さく頷く。


『玖珂、じゃあさっさとしまおうぜ』

『そうだね。速く終わらせて帰ろうか』


 柏木さん達はそんな会話をして、用具室の奥へ入っていく。

 その様子をしっかりと確認し、振り返る。

 瑛二、朝日向さん、そして橋本さんと目を合わせて、


「それじゃあ、行こう!」


 行動に移る。

 誰かに見られてもあんまり問題はないけど、念のため周りの確認をする。そのまま手早く動き、一気に用具室の扉を閉じた。柏木さん達にバレないように、しかし反応仕切れないように素早く。


『な、なんだ!?』

『もしかして、誰もいないと思って閉められちゃったんじゃ!?』


 柏木さんはこうなることを事前に知らせてあったけど、玖珂君にバレるとまずいから中を覗くことはできない。

 でも幸いなことに、声だけは聞こえる。そのままバレないように、静かに聞き入る。


『携帯で連絡……しようにも体育館シューズと一緒に置いて来ちゃったしな……』

『こ、このままここから出られないのか……?』

『いや、さすがにそれは無いはずだよ。最悪、学校が閉まる前に警備員さんとかが見つけてくれるはずだ』


 玖珂君は柏木さんを不安にさせないためか、冷静な声音で言う。

 なんだか悪いことをしているみたいで罪悪感が……。

 とはいえ、だからといってこの扉を開くわけにはいかない。そのまま中の声に耳を傾ける。


『とりあえず、外に誰かいるだろうから助けを求めよう』


 二人は大声で助けを求める。

 しかし、返事は帰ってこない。

 当然だ。僕らだってその行動に出ることを読んでいた。だから声が届きにくい、地下の(・・・)用具室に二人を閉じ込めることにしたのだ。まあ、考えたのは瑛二だけどね。

 これ以上大声を出しても助けが来ることがないことを悟ったのか、用具室の中は静かになった。


 問題はここからだ。

 閉じ込められて一区切りが着いたら、柏木さんにあることをしてもらう予定になっている。それは、『偶然に見せかけて、玖珂君を巻き込んで倒れ込むこと』だ。

 ただ、この行動すごく難しい。行動に移すためには勇気もいるし、『偶然に見せかけて』という部分もそう簡単にはできないだろうし。

 しかし、それでもやってもらうしかないのだ。自分の願いを叶えるためには。

 がんばれ……柏木さん!

 そうして、心の中で応援しながら待つこと一分ほど。


『きゃっ!?』

『うわっ!?』


 用具室の中から、大きな物音と同時に二人分の悲鳴が聞こえた。おそらく、いや間違いなく柏木さんが行動に移したんだろう。

 想定通りの展開に、思わず笑いが漏れる。


「裕也、笑うのは早いそ。まだ成功って訳じゃないからな。ここからの柏木の反応による」

「分かってるよ」


 瑛二が注意してくるが、僕の返事に満足したのか用具室へ意識を戻した。


『り、凜、ごめん! その、すぐにどけるから──』

『玖珂……』

『り、凜?』


 くっ、声だけじゃあ状況が分からない!

 仕方ない、少しだけ開けて中の様子を……。

 扉に手をかけると、橋本さんに止められる。


「ダメだよ、寺沢君! 少しでも開けたらバレちゃう!」

「大丈夫だよ、橋本さん。きっと中では二人とも倒れ込んでるはず。なら、少し開けるだけならバレることは無いと思う」

「でも……」


 少し強引だったけど、それでも一理あると思ったのか、橋本さんはそれ以上止めてくることはなかった。

 橋本さんも中の様子が気になってたのかもね。

 改めて、僕は扉に手をかける。そのままこっそりと隙間を作って、覗き込む。

 中の状況は……最高、想定通りだ。

 真ん中の少し開けたところで、柏木さんを押し倒すように玖珂君が倒れ込んでいる。

 そこまできちんと見えるわけじゃないけど、少なくとも玖珂君の耳は真っ赤だ。


『もう少し、このままがいい……』

『凜……』


 二人はそう呟くと、すこしずつ顔が近づいていく。

 これは……もしかして玖珂君は柏木さんを好きだった? いや、好意は持っていたけどそこまでじゃなかったはず。

 とすると、この状況のおかげで玖珂君は柏木さんに引かれ始めてる……?

 もしかしたら、ここ最近の僕たちの作戦も影響しているかもしれない。

 そのまま二人の顔は近づいていき、もう少しでくっつく──と、そのとき。


「お前ら、何をしているんだ? もう掃除は終わったのか?」


 げっ、南原先生……。

 周りを見ていたはずじゃ……と瑛二達に視線を向けると、覗きに夢中だったようだ。

 そりゃ気になるか。仕方ない。

 でも、これ以上覗くのは無理かな。先生にバレてしまった以上は……逃げるしかない!

 そんな考えに瑛二達をたどり着いたのか、僕らは同時に逃げ出した。


「お、おいお前ら!」


 用具室は鍵を閉めていた訳じゃなくて、単に僕らで押さえてただけ。だから、柏木さん達は大丈夫だろう。

 でも本当はここで柏木さんに告白してもらう予定だったんだけど……先生が来るという予想外のハプニングのせいで、途中でやめるしかなかった。

 本当なら、成功したであろう告白をいわってたんだけど……どうしたものか。

 僕は橋本さん達と一緒に先生から逃げながら、生意気にもそんなことを考えるのだった。

 いや、本当にどうしよう。

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