第十三話 二回戦、始まる
少し短いです。ご注意ください。
見事にリア充軍だ……こほん。1の7を破ったわけだけど、他のクラスはまだ終わってないみたいだ。
そりゃあ、一試合三十分を想定してるのに、十分で終わらしちゃったから仕方ないか。でも、相手があんなクラスだったら、張り切っちゃうのも仕方ないと思うんだ……。
まあ、終わったことは置いといて次の対戦相手は、っと。
僕は、他の試合の邪魔にならないように移動し、トーナメント表を確認する。
『1の1』か『1の8』の勝った方、か。あれ?『1の1』って橋本さん達のクラスじゃ……?
いや、まさかね。運悪く橋本さん達と戦う、なんてことはないでしょ──
『勝者、1の1!』
「って、えええええ!?」
まさかの橋本さん達と対戦!?
どうにも、やりにくいなあ……。
「ん? 何驚いてんだ? 裕也」
「瑛二……それがさ、次の対戦相手が橋本さん達のクラスになっちゃったみたいで……」
「なんだそんなことか。普通にやればいいんだよ、普通にやれば」
「でも……」
「橋本に言われてただろ? もし試合に当たっても、真剣に勝負しよう、って」
「そう、なんだけどさ」
そう言われても、そうですかとすぐに割り切れるわけではないわけで……。やっぱり、なんかやりにくいって言うか……いや、やる分には真剣に行くけど。
で、勝ったってことは強いってことだよね。さっきのクラスみたいには行かないだろうし、今の余った時間で作戦会議とかいた方がいいかも……。
よし、思い立ったら行動だ!
僕は軽く背伸びをして、周囲を見渡す。コートから少し離れたところにいた、柏木さんと瑛二を見つけると、そのまま呼び寄せた。
「寺沢、どうした-?」
「なんだ、裕也?」
呼ばれて、ゆっくりと歩み寄ってくる二人。
「今のうちに作戦を考えておこうと思ってさ! 特に柏木さん!」
「え? あーし?」
「そう! 一回戦はみんな張り切っちゃってたから、柏木さんはあんまり活躍できなかったでしょ?」
あー、と二人は同意の声を漏らす。
まあ、相手がリア充軍団だったからね……。
「だから、次こそは柏木さんに活躍してもらわなきゃね! 僕も瑛二もサポートするし!」
「ふざけんな。……って、いつもなら言ってるところだが、今回は俺が考えた作戦だしな。ちゃんとやるさ」
「二人とも……」
「だからさ、相手が橋本さん達のクラスだろうと、がんばろうよ!」
「ありがとう……あーし、頑張るぜ!」
『全ての一回戦が終わったから、各々二回戦の準備しとけー』
柏木さんが言い終わるのと同時、体育館に南原先生の声が響いた。
マイクを使ってるけど、先生の声大きいし、そのままでも大丈夫そうだ。
「じゃあ、二人とも。がんばろう!」
「「おー!!」
そうして、全ての二回戦の準備が終わり、僕は相手チーム──橋本さんと朝日向さんと対峙する。
「勝負だね、寺沢君。手加減はしないよ!」
「ゆうやっち、同じ部活に入ってるからって手加減はしないからね!」
「二人とも、それは僕の台詞だよ! こっちには瑛二に柏木さん、玖珂君がいるからね!」
ニヤリ、と互いに笑い合い、それ以上の言葉を交わすことなくコートへ戻る。
各チームの代表が前へ出て、じゃんけんをする。相手チームが勝ったようで、一投目は相手側だ。
そして、数秒間の沈黙が続き……
『それでは、二回戦、開始!!』
南原先生の声を皮切りに、二回戦が始まった……!
今ボールを持ってるのは、相手チームの代表だ。焦らす作戦なのか、フェイントをかけるものの、まだ投げない。
一クラスの人数は多少の誤差はあるものの、四十人ほど。このドッジボールでは、外野を五人と決められているから、内野の人数は必然的に三十五人くらいになる。
で、僕らの一回戦は参考にならなかったけど、他のチームの一回戦を見てたところ、だいたい十五人ほど削れれば有利になっていた。
つまり、相手を全滅させなくても勝てるってわけだ。
と、ついに相手チームがボールを投げる──!
僕らのクラスは結構やる気があったし、そこまで簡単に当たるなんてことは……。
「きゃっ」
「うわっ!?」
『1の2、二人アウト』
ありましたね、はい。
まあ、コートって以外と狭いし、人数が多いと逃げにくいから仕方ないよね。運動が苦手な人は余計にね。
しかも最悪なことに、ボールは当たった後、ころころと相手チームの外野の手へと渡ってしまった。
そんなチャンスを相手チームが逃すはずもなく……外野はボールを拾うと、そのまま大きく腕を振りかぶって投げつけてきた。
その矛先は……って僕か!
「くっ!」
「……避けられないっ!?」
『1の2、町田さんアウト』
僕はしゃがみ込んでギリギリ避けられたけど、それが仇となってしまった。僕の後ろにいた、柏木さんグループの取り巻きの一人、町田さんにヒット。
すぐ後ろにいたとは、分からなくて一人犠牲にしてしまった……。
でも、同じミスは繰り返さない。
相手の手に渡る前に、ちゃんとボールの確保はしておいた。まあ、拾ったのは僕じゃなくて柏木さんだけど。
よし、ここからは逆転だ!




